シゲ子映画 キャタピラー

キャタピラー

旦那がヤバい姿で帰郷してひどい目に遭う話

制作年 2010年
制作国 日本
監督 若松孝二
脚本 黒沢久子/出口出
上映時間 87分
出演
寺島しのぶ
大西信満
吉澤健

だいたいのあらすじ

黒川久蔵(大西信満)は日中戦争に出征し、中国で婦女をレイプしまくっていました。
その後、久蔵の妻シゲ子(寺島しのぶ)は4年ぶりに帰郷した久蔵を出迎えるのですが、あまりに変わり果てた姿を見て「あんなの久蔵さんじゃない」と絶叫しながら家を飛び出してしまいます。
現在は1944年の春です。
義弟の忠(粕谷佳五)が動転している彼女を取り押さえ、「大丈夫だから」と宥めて連れ帰りました。
久蔵は手足が無く、顔はケロイド状に爛れており、話すことができず、耳も殆ど聞こえない状態でした。
彼は英雄として少尉まで昇進し、勲章も与えられましたが、彼の世話はシゲ子一人に押し付けられました。

親戚が引き揚げた後、シゲ子は久蔵を見て「こんな姿で生きてると言えるのか」と悩み、「私も後から行きますから」と考察しようとしますが、久蔵が口を必死に動かして尿意を訴えたので思い留まります。
久蔵は生ける軍神として村の人に崇められ、神社の賽銭箱の上に軍装で座らされて、皆からバンザイされたりします。
シゲ子は婦人会の人達からは「軍神の妻の鏡となれるように貞淑に尽くしてね。久蔵への奉仕がお国への奉仕だからね」的なことを言われます。
大本営発表では毎度毎度、日本軍の勝利が流れて来ており、シゲ子も少しは誇らしく思ったりしました。

久蔵は性欲は旺盛なようで、ある夜に口でシゲ子の服を引っ張って脱がそうとするので、シゲ子は上に乗って性処理をしました。
その後も久蔵は口で鉛筆を咥えて「ヤリタイ」と書いたりしてシゲ子の身体を求めて来ました。
シゲ子は当然、農作業、婦人会の訓練や当番、食事の支度や久蔵の世話といった雑務に日々追われているのですが、久蔵はそんなことはお構いなしに何かと身体を求めて来るので、シゲ子は「食べて寝てそれだけですか」と少々呆れます。
そんな久蔵の楽しみは勲章と自分のことが載っている新聞記事を眺めることだけでした。

やがて冬が来て、また春がやって来ました。
久蔵は食欲も旺盛で食料不足だというのに足りないと訴えたりします。
シゲ子はそんな久蔵を軍装させて勲章を着けてからリヤカーに乗せて連れ出し、農作業へと出かけます。
道行く人は「軍神様だ」と久蔵を拝み、シゲ子を「妻の鏡」と褒めたたえ、シゲ子は「妻の務めですから」と返します。
久蔵は晒し者にされている気分で面白くないのですが、シゲ子は「勝手に怒ってればいい」と意にも介さず、ご褒美にと身体を開きます。

久蔵はシゲ子の分の食事まで要求するようになったので、そんな時にシゲ子は彼を軍装で外に連れ出して鬱憤晴らしをすることにします。
当然、久蔵は激しく抵抗し、唾を吐きかけたりするのですが、シゲ子は「殴れるものなら殴ってみなさい」と開き直るのでした。
どうやら久蔵は何かとシゲ子に暴力を振るって押さえつけていたようです。
帰宅するとシゲ子は「今日は楽しかったですね」と嫌味を言いつつ、ご褒美と久蔵に跨るのですが、久蔵は自分がレイプしていた際のことを思い出してこの日、勃起不全になってしまいました。

その後、出征する人の見送りに久蔵を連れ出そうとしたシゲ子でしたが、彼はおしっこを漏らして出るのを拒否したのでビンタしてしまいました。
そしてシゲ子が帰宅すると久蔵が身体を求めてきたので「今日は疲れてるんです」と拒否り、イラッと来たのか貰った卵を彼の口に「食べなさいよ」と割り入れ、「軍神様ってなんなのよ!」と泣きながら絶叫するのでした。
大本営発表では相変わらず敵の攻撃を防いだ等と放送していましたが、実際には東京大空襲が始まり、沖縄戦に敗れていました。
シゲ子が日本が勝っていると知らせると久蔵は珍しく笑顔を見せましたが、彼の関心はやはり食欲と性欲なのでした。

感想

これは普通です。
旦那さんがひどい状態で帰ってきて、奥さんが大変!という話です。
一応、戦時中のことを描いているのですが、私は戦争映画としていますが、あまりにもリアリティーが無いのでドラマに近いと思います。
ヒューマンドラマというか、シゲ子ドラマだと思われ、戦争というのは小道具のような感じです。

言いたいことはかなり左寄りなのですが、反戦とかそういう面だと効果が薄いと感じました。
最後のテロップとかも今更ですし、メッセージ薄すぎると思いました。
ここで描かれているのは戦争の悲惨さでは無く、シゲ子の悲惨さだからです。
久蔵サイドで見ると「軍神」と「戦争」という唯一のアイデンティティーがあるので、まあ意味はあるのでしょうが、どう観てもシゲ子よりになるので、ちょっと無理があるかなあと感じました。
シゲ子は戦争被害者というより、久蔵と村の被害者という感じで、久蔵には地味に仕返ししてますし。
同じ系統で「戦争ってやっぱしたくないな」と思わせる映画だと「ジョニーは戦場に行った」だと思われ、久蔵サイドの話にしないと無理だと思いました。

それにしても不思議なのが、久蔵が思い出すのがレイプシーンばかりなのです。
普通は手足を失った際の戦闘のことや、他の戦闘のことも思い出すのではないでしょうか?
そうでないと久蔵に新聞記事や勲章を見せても弱いですよね?

演出と編集はイマイチに感じました。
全体的にTVドラマクオリティで久蔵のトラウマシーンのバンクがしつこ過ぎます。

久蔵がHな所為でHシーンばかりですが、かなり生々しい感じがしました。
よくセックスは生の象徴みたいな感じに言われますが、そういうものでは無く、ザ・性欲処理みたいな感じです。
繁殖行為でも無く、お楽しみでも仲良しでも無く、ひたすら処理をするという。
でもシゲ子にとっては唯一久蔵が生きているというか繋がりというかそういうものを確認できる行為だったのかもしれません。
だから逆レイプみたいなこともしてたのかなあと勝手に解釈しましたが、そこまで考えてるかどうかは微妙だと思いました。

役者さんはシゲ子凄いですが、久蔵も凄いと思いました。
特に結末付近の池に微妙に段差があるのを必死に這いずってるシーンは印象に残りました。

イマイチ内容の薄い、役者スゲー映画だと思いました。

ラストまでのあらすじ

ある日、シゲ子は久蔵のお尻を拭きながら、「お国のため」とは何なのかとふと情けなくなって軍歌を歌いながら泣き出しました。

ある晩、シゲ子は相当鬱憤が溜まって来たのか、「どうして無事な姿で帰って来なかったのよ」とブチ切れて久蔵の下着を脱がせて無理矢理跨ります。
しかし久蔵は無理矢理されたので、また過去のレイプの件を思い出して罪悪感に捉われ、勃起不全になってしまい、「この役立たず!」とシゲ子から罵られてビシバシ打たれます。
過去に久蔵はシゲ子が子供を産まないことで殴りつけていたようで、シゲ子は「何が軍人よ!」と絶叫しながら久蔵をペシペシ打つのでした。
しかし成すがままになって泣いている久蔵を見て我に返り、「ゴメンね」と彼を抱きしめ、「二人で生きて行こう。食べて寝て、食べて寝て。それでいいじゃない」と泣きながら話しました。
みつをさんみたいですね。

しかし久蔵のトラウマも限界に来ており、彼は戦地での残虐行為を思い出してシゲ子の顔を見ても怯え、芋虫のように逃げ回って箪笥にゴンゴンと頭をぶつけたりします。
それを見ていたシゲ子は「芋虫ごーろごろ♪軍神様ごーろごろ♪」と歌いながら発狂したように泣き笑いをするのでした。
その後、病弱だったために赤紙が来なかった忠も出征することになり、とうとう広島と長崎に原爆が投下されました。

そして日本は敗戦し、玉音放送が流されました。
農作業中だったシゲ子は嬉しそうに「バンザーイ」と喜び、家を這い出た久蔵は池に身を投げて自害していました。
久蔵に取っては「軍神」という肩書だけが全てだったのかもしれません。

東京裁判後の処刑の様子が流れ、「お国のために絞首刑」というテロップが流れ、太平洋戦争の使者数が表示されます。

エンドロールで終了です。

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