燃える村 炎628

炎628

アインザッツグルッペンにひどい目に遭う話

制作年 1985年
制作国 ソビエト連邦
監督 エレム・クリモフ
脚本 アレクサンダー・アダモーヴィチ/エレム・クリモフ
上映時間 137分
出演
アリョーシャ・クラフチェンコ
オルガ・ミロノバ
リューボミラス・ラウセビチャス

だいたいのあらすじ

この映画はどうやら白ロシア戦線で起こった「ハティニ村の虐殺」を元にしているようです。
ドイツ軍の将校をパルチザンが殺害したことにより、報復として村が襲撃されて村人が虐殺されたという事件です。

1943年 ドイツ軍占領下の白ロシア
少年フロリャ(アリョーシャ・クラフチェンコ)は異様に口真似の上手なちびっ子の友人と共にパルチザンに参加しようと大人たちが埋めて行った銃を掘り出しました。
この銃は色から判別しづらいのですが、恐らくSVTのどれかでしょうか?
その様子をドイツの偵察機にバッチリ見られていたのですが、服の中に隠して持ち帰りました。
偵察機は多分、フォッケウルフだと思われます。
ママはフロリャがパルチザンに入ると聞いて全力で止めつつ天使のような双子の娘を起こし、斧を彼に渡して「行くなら全員殺しなさいよ!」とブチ切れます。
しかしパルチザンの兵士が家に迎えに来てしまったので、反対する訳にもいかなくなり、泣きながら息子を送り出すハメになりました。

ママの想いとは反対にフロリャは「やっと戦える」と満面の笑みを浮かべていました。
荒っぽく馬車に乗せられて運ばれていく息子をママは何度も名を呼んで見送っていました。
山中の森林地帯にあるパルチザンの基地に案内されたフロリャはひとまず基地の皆さんに挨拶しつつ周囲を歩き回り、早速集合写真に入れて貰いました。
内容的にはソ連側のプロパガンダ寄りなのですが、ソ連兵も間が抜けている感じに描かれています。

基地には綺麗なお姉さんグラーシャ(オルガ・ミロノバ)が居るのですが、彼女は男前なコサック隊長(リューボミラス・ラウセビチャス)といい仲なようでした。
ある日パルチザンは進軍することになったのですが、フロリャは古参兵に靴を奪われた上で留守番を命じられました。
「チクショー」と泣いているとグラーシャが違う意味で泣いているのに遭遇し、なんとなく話をしました。
彼女は「お前、子供だから留守番だよ」とバカにしたり、「目の前に女が居るんだから何かしろ」とキスして挑発したりします。
何しやがる!とドン引きしたフロリャでしたが、それはそうと付近にドイツ兵が降下したようでした。

直後に基地付近に無差別爆撃が始まり、フロリャは何とか逃れたものの耳がキーンとして聞こえなくなり、グラーシャに手を引かれて降下部隊の銃撃から逃れます。
基地を攻撃して来たのはドイツ国防軍っぽい感じでした。
基地に戻れなくなった二人は木の枝でテントを作って休み、フロリャの村に行って村人を避難させることにしました。
またまた銃を服の中に隠して村へ戻ったのですが、村は人気が無くママも妹も消えていました。
どうやら村では既に虐殺が行われたようで、村の一角には死体の山が築かれていました。

フロリャは村の避難場所があることを思い出し、グラーシャを連れてダッシュで向かいます。
避難場所は進むのも困難な沼地の先の島で二人共ズブズブになって溺れかかりながら辿り着いたものの、周囲に人影はありませんでした。
グラーシャは「お前の家族は死んだから諦めろ」とフロリャに告げるのですが、彼はあまりの事にショックを受け、「いやここにいる!」とグラーシャの首を絞めて危うく殺害しそうになりました。
そこに武装した村人が現れて二人を助けました。

村人の一部は確かに何も無いこの島に避難してきていたのですが、フロリャの家族はやはり殺されていました。
村長はガソリンをかけて燃やされており、全身が黒焦げの状態でした。
彼はあまりの苦しさに「銃で殺してくれ」と懇願したのですが、笑い飛ばされたそうで、元はと言えばこの虐殺の原因を作ったのは銃を掘り出した所をドイツの偵察機に見られていたフロリャでした。
フロリャは耳を塞ぎ、沼地に頭を突っ込んで自殺しようとしたのですが、グラーシャに止められました。
妹二人を抱っこしてフロリャをいつまでも見送っていたママの姿は私の目にも焼き付いていてショックです。
恐らく村を襲撃したのはアインザッツグルッペンだと思います。

それからというもののフロリャは死人のような顔色の無気力人間になってしまいました。
村人は「あんたの所為じゃない」と彼を慰め、ヒトラーの案山子を作って唾を吐いて怨みを晴らしていました。
避難所に居たパルチザンが村人の食料を調達しに行くことになったので、フロリャもフラフラと同行することになりました。
フロリャ達は仲間の二人を地雷で失いましたが、ドイツ軍に占拠されていた付近の村から略奪同然に牛を一頭奪いました。
こうなると迷惑なのは大差ないですね。

フロリャは牛を持ち帰ろうと奮闘したのですが、ドイツ軍の銃撃を受けて最後の仲間が死亡し、牛も銃撃を受けて倒れました。
疲れ切った彼はそのまま牛の死骸を枕に少し寝てしまい、目覚めるとびくともしない牛を何とかしようと少し足掻いて諦め、霧の中を移動します。
少し進むと馬車を見つけたので、せめて牛を解体してこれで運ぼう!と調達しようとしているとその主である農民が「人のもの盗むな」と絡んだ来たので、「家も無い人の食料にする!」と銃を突き付けて持ち去ろうとします。
ところが付近にドイツ軍が展開したので、フロリャは彼の村に匿ってもらうことになりました。

フロリャは農夫の孫ということにして貰い、家に飛び込んだのですが、村にはSSマークのヘルメットを被ったアインザッツグルッペンの部隊が接近しました。
彼等は反抗したロシア人をリンチし、サイドカーに乗せて「私はドイツ人を侮辱しました」的な看板を付けて晒し者にしているような連中でした。
彼等は村の広場に停車し、農夫の家にも上がり込んで勝手に家の中を物色しつつ食事等を提供させます。
間もなく、「身分証明書等の書類一式を揃えて村の広場に集まるように」と放送があり、これはヤバいと逃げ出そうとしたフロリャはSSに突き飛ばされて笑われました。

フロリャはガヤガヤと広場に集まる皆に「殺されるから行っちゃダメだ」と知らせるのですが、寝返り系の村人に列に入れられてしまいました。

感想

これは辛いです。良作だと思います。
白ロシア戦線で行われた虐殺の様子を描いたものです。
どちらかという芸術的な作品なので、派手な戦闘描写等は無いですが、逆にそれがリアルです。
言いたいことはナチスによる残虐行為を糾弾するという内容では無く、反戦だと思われます。
少年の目を通すことで、戦争の虚しさを訴えているのだと思います。
そういう意味では大成功で、この映画を観ると戦争というものは一部の人間の徳にしかならないとよくわかります。
左視点でただ騒いでいる訳ではなく、主人公の少年の視点で説得力を与えている良い映画で、ソ連側視点が無ければ学校教材にしても良い位だと思いました。

前半の長い流れや少年の表情の変化は凄い変化だと思いました。
冒頭のフロリャはパルチザンに入って、「俺も大人の仲間入り」のような満面の笑みを浮かべていたのですが、パルチザンの基地が爆撃された辺りから表情に変化が見られます。
実際に何が行われたかという結果は象徴的にしか見せず、現在の状況や行われていることを見せる演出も想像力を掻き立てるもので、人によって感じ方に差が出ると思われます。
映像の規制等もあるのでしょうが、この辺りはとても上手いと思いました。

ソ連製ということで、プロパガンダ的な作品になりそうな気がするのですが、この監督はギリギリの所で抵抗している印象でした。
パルチザン側も村で略奪とかしてるので虐殺は無しにしても似たり寄ったりな気がしました。
確かにナチスのやっている事も残虐ではあるのですが、この映画を観ていると誰もがナチス側になりそうな気がしました。
完全に洗脳されていた一人のナチス将校の言っている事はおかしいのですが、とても印象的でした。
他にも司令官や寝返り兵の見苦しさを取ってもこうならないという自信は私にはありません。
時代の大きな波や災害には人間一人は勝てず、呑まれていくだけだと思われ、一部の勇敢な人が立ち上がっても粛清されてしまうのだと思います。
ただ、「最低でもこうはなりたくない」という志のようなものは持てると思いますので、そういった他者の行動を見ることは意味がある気がしました。
最終的な結果として何が違うのよ?と言われれば私には上手く説明できませんが。

ラストまでのあらすじ

村人は広めの納屋にぎゅうぎゅう詰めに押し込められフロリャもその中に居ました。
窓から外の様子を窺った老人は即座に射殺されました。
SS隊員は窓から中の人に向かって「子供を納屋に置いてこの窓から出て来い」と村人に命じました。
村人は何が行われるのか把握したらしく「ひとでなし!」と抗議し、誰も出て行く者はいませんでした。
フロリャは一人怯え切った顔をして窓から外に出ました。

建物の外はSS隊員が取り囲んでおり、早速捕らえられたフロリャは生きた心地がしなかったのですが、「こいつが代表として来たようです」とサイドカーに乗って肩にロリスを乗せた指揮官の所に引っ立てられました。
コマンドは彼を一瞥して、「そいつはどうでもいい」的な指示を出したのでフロリャはその場に放り出されました。
納屋の窓からは村人が子供を逃がしていたのですが、SS隊員が子供を楽しそうに拾い上げ、また窓から納屋に放り込んでいました。
子供を脱出させた母親は髪の毛を掴まれたまま引き摺られ、将校の指示で「右だ」と分別されていました。
村の周囲は村人の数を数倍上回るドイツ軍とSS隊員が集まっており、お祭り騒ぎをしており、フロリャは怯え切っておしっこちびりそうな様子でへたり込んでいました。

その内に彼等は納屋の中に手榴弾を楽しそうに投げ入れ始め、火炎瓶を投げて納屋を燃やし始めます。
納屋の中からは悲鳴が上がり、ドイツ兵はその様子を見て一斉に拍手した後に納屋に向けて一斉掃射を行います。
そして納屋には火炎放射が行われて瞬く間に業火に包まれるのですが、フロリャ含め捕獲された村人の一部はその様子を一部始終見せられます。
やがて村の建物の全てが火炎放射により焼き払われ、SSの陽動隊員の女性はドイツの歌を車載のスピーカーで流しながらその様子を楽しそうに眺めつつ、ザリガニを食べていました。

村は炎と黒煙に包まれ、ドイツ軍は移動を始めたのですが、フロリャは将校の下に引っ立てられて拳銃を頭に突き付けられます。
余りの恐怖にフロリャは老人のような顔になってしまうのですが、彼等は燃え盛る建物の前で記念撮影をしていただけでした。
こうしてフロリャはSS隊員の単なる気まぐれにより生き延び、その場に倒れました。
地面に突っ伏したフロリャを尻目に部隊は牛や食料を奪って悠々と引き揚げて行きました。

あの母親はトラックに乗せられて集団レイプされたようで、ベッドに寝たきりの認知症の老婆が道路の真ん中に運ばれたりしていました。
その後、村を襲撃した部隊はパルチザンの襲撃を受けたらしく、フロリャが隠していた銃を取りに戻ると死屍累々という戦闘の痕があり、コサック隊長と再会しました。
あの母親は笛を咥えさせられて散々にレイプされたようで、廃人のようになっていました。
フロリャはパルチザンに復帰し、焼き払われた村の視察に同行します。

捕虜になっていたドイツ兵の尋問が行われ、一部の兵は「SS隊員に脅されて仕方なくやった」等と供述していました。
アインザック指揮官は「私は老いた老人で誰も害していない。道徳的な人間だ。引退して孫の相手をしたい」等と証言したのですが、横にいたコマンドが「お前はドイツ人だろ!恥を知れ!」と割り込みました。
そのコマンドは納屋で「子供を置いて外に出ろ」と命じた男だったので、フロリャは「こいつが指示した」と皆に知らせます。
男はそれを認め「子供から未来が始まる。お前ら劣等民族の共産主義者たちには未来はない。根絶するのが我々の使命!」的なことを言いました。

コサック隊長は「脅されてやった」という寝返り系の兵にSS隊員の処分を命じてガソリンを渡しました。
寝返り兵は喜んでガソリンをSS隊員にかけたのですが、パルチザンの一部が見苦しさを見るに見かねたのか、SS隊員を寝返り兵も含めて掃射して殺害しました。
その様子を見ていたフロリャは完全に老人のような顔になってしまい、パルチザンは引き揚げて行きます。

フロリャは泣きそうな顔をしながら水溜りに落ちていたヒトラーの額入り写真に向けて発砲しました。
タンホイザーやらワルキューレの騎行をBGMにドイツ軍進撃の様子の記録映像が巻き戻されて再生されます。
フロリャが連射すると時代はどんどん遡り、ナチスの台頭辺りから最終的にはヒトラーは母に抱かれている赤ちゃんになりました。
彼はモツの涙の日をBGMに涙を流し銃を撃つのを止めました。

白ロシアの628もの村がこの様に住民もろとも焼き払われたそうです。

フロリャはパルチザンの最後尾に追いつき、パルチザン達が森林の中を進んでいるシーンで映画は終わります。

628という数はソ連側が主張している数なので、真実かどうかは不明です。
ただ、このような事が実際に行われていたんだろうとは思いました。
パルチザンがSS隊員を射殺した描写は「俺達はナチスとは違う」という主張が含まれていたと思います。
しかし最後にフロリャがヒトラーを撃てなかったのはそういうことでは無かったと思います。
彼は「来て、見た」今までの経験で戦争の本質を知ってしまい、思う所があったのではないかと感じました。

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