謎の死体の秘密 ジェーン・ドウの解剖

ジェーン・ドウの解剖

検死解剖してたらひどい目に遭う話

制作年 2016年
制作国 アメリカ
監督 アンドレ・ウーヴレダル
脚本 イアン・ゴールドバーグ/リチャード・ナイン
上映時間 86分
出演
エミール・ハーシュ
ブライアン・コックス
オフィリア・ラヴィボンド

だいたいのあらすじ

バージニア州グランサムの町の民家で銃を使った殺人事件が起き、壁や床には肉片が飛び散り、あちこちの床に死体が倒れていました。
そして地下にはまるで生きているような裸体の身元不明女性(オルウェン・ケリー)が埋められており、まるで自力で脱出したかのように半身を出していました。

葬儀屋で検視官でもあるオースティン(エミール・ハーシュ)は父親のトミー(ブライアン・コックス)の指導を受けつつ日々精進していました。
この葬儀屋は遺体安置所も兼ねており、1919年から続く歴史ある家でトミーは三代目でした。
その日、トミーは後片付けをオースティンに任せ、オースティンは恋人のエマ(オフィリア・ラヴィボンド)と映画に行く約束をしていたので、早々に後片付けをして引き揚げようとしていました。
そこにエマが現れ、好奇心旺盛な彼女は勝手に見学を始めたので、オースティンは「あまり気持ちのいい場所じゃないからさ」的に連れ出そうとします。
エマは安置されている遺体が見たいと言い出したので、オースティンは「絶対ダメ!父さんも怒るし!」と制止したのですが、コーヒーカップを手に戻って来たトミーは意外にも「見ていいよ」と言い出します。

エマが選んだのは至近距離で発砲したために顔が潰れて布を被った遺体で、昔は運ばれた遺体が本当に死んでいるのか確認するために足にベルを付けたそうで、トミーは古くからの習慣としてその遺体にもベルを付けていました。
悪趣味なエマは遺体の顔の布をめくって見ようとしたのですが、オースティンが足のベルを鳴らして彼女をビビらせて思いとどまらせました。
この遺体は銃で自殺したようでしたが、体内から毒が検出されたので殺人であるということでした。
エマは犯人の動機は何だろう?と疑問を抱いたのですが、トミーは「我々の仕事は遺体の死因を判明させること。動機を探るのは警察の仕事」と返答しました。

実はオースティンは妻を失ったトミーを支えようと考えて家業を手伝っていたのですが、そのままずるずると2年間過ぎており、エマとしてはオースティンがこの家から出ることを望んでいました。
ということでオースティン達が映画に出ようとすると入れ違いにバーク保安官(マイケル・マケルハットン)が遺体を運んできました。
「こんな時間に緊急事態かな?」と感じたオースティンはエマとの映画を先送りにし、トミーを手伝うことにします。
バークが運び込んできたのは冒頭の事件の身元不明女性で、彼は「4人が殺害された事件の地下で発見された女性」と説明し、「明日記者会見だから今夜中に解剖して欲しい」と依頼しました。

身元不明女性には外傷がなく、灰色の目の濁り具合から死後数日経っていると推測されたのですが、死後硬直も死斑も無くまるで生きているようでした。
不思議なことに彼女は外傷がない割には手足の骨が粉々にされており、手と足の爪には泥炭が入り込んでいました。
更に女性の舌は千切られたように切り取られていたので、トミーは15年前に起きた人身売買事件の被害者に状態が似ており、手足は縛られた所為で折れたのではないかと憶測しました。
他にも左下の臼歯が無かったり、口内から糸が検出されたり、膣内に裂傷が見られたりと女性の遺体には不審な点が多々ありました。

いよいよ解剖が始まったのですが、トミーがY字型に女性の胸を切開すると多量の血が流れました。
その後、なぜか冷蔵庫に保管していた血液が漏れてしまうというアクシデントが発生しました。
また、この女性は異常にウエストが細かったのですが、どうやらコルセットを巻いていたようです。
肺には重度の火傷を負い、臓器には切り傷のような裂傷が見られ、まるで拷問を受けたかのようでしたが、外傷は一切ないので謎が深まります。
その時、建物内で大きな物音がしたので様子を見に行ったオースティンは廊下のカーブミラーに映る人影を目撃しましたが、確認しに行くと消えていました。
更に通気口のダクトを何かが走り回る気配がし、可愛がっていた猫が殺められていました。。

その後、女性の解剖を再開したのですが、まず胃の中からは麻酔に使われるという東北部にしか生えない花が発見されます。
同じく胃の中から不気味な紋章を描いた布にくるまれた女性のものと思われる臼歯が発見されました。
これは儀式的な殺人なのではないかということになりました。
折しもこの地方は暴風雨が発生しており、一部の地域では洪水警報が発令されていました。
そしてトミーは女性の皮膚の内側にあの布と同じ刺青が施されているのに気付いたのですが、直後に照明が破裂して室内は暗闇になりました。

発電機が作動して非常灯だけが灯ったので、トミー達はここから脱出しようとするものの、暴風雨の影響で出入口に木が倒れており、閉じ込められてしまいました。
バークに固定電話で助けを求めたものの「よく聞こえない」と切られてしまったのですが、直後に廊下を何者かが歩き回っている気配がし、事務所のドアが乱暴に揺すられたので必死に押さえました。
オースティンはこの怪異の原因はあの身元不明女性ではないかと考え始めます。
同時に突然トミーが見えない何かに引っ張られ、小部屋に引き摺り込まれて壁に叩きつけられる等の暴行を受けます。
幸い、オースティンが直ぐに飛び込んだのでトミーは軽傷でしたが、灰色の目をした何かに襲われたと訴えます。

恐ろしくなった親子は遺体安置所に戻り、身元不明女性を火葬しようとし始めたのですが、彼女から摘出した臓器は急速に腐敗しており、どうやら体内で生かされていたようでした。
更に突然ドアの鍵が閉まったので親子は遺体安置所に閉じ込められてしまい、ドアの隙間から様子を伺うとロッカーに入っていた他の死体が歩き回っているようでした。
もうこれは辛抱堪らんとオースティンは女性に薬品を掛け、トミーがマッチを投げました。

感想

これは面白いです。良作だと思います。
葬儀屋に身元不明女性の遺体が運び込まれて色々起きます!という内容です。
この親子がなかなかいい人でいい感じで、とばっちりで可哀想になります。
舞台は終始、葬儀屋の地下で起こる事象もチラっと見せる感じなのですが、それが却って効果的なようです。
結局のところ、真相は闇の中に包まれているのですが、その有耶無耶感もむしろいい感じです。
タイトルの「ジェーン・ドゥ」は身元不明女性の代名詞ですが、これはホラー映画ファンには説明不要だと思います。
この映画は意外な展開が多いので、ネタバレはなしで観た方がいいと思います。

トミー親子が身元不明女性の解剖を開始し、疑問を抱き始めるというミステリー仕立ての流れになっていて、時々ホラー的な怪異が差し込まれます。
まず、身元不明女性は手足が折れているのに外傷が全くない!という点に驚かされます。
更に解剖を進めると身体の内部もボロボロなのですが、やっぱりそれに見合った外傷がない!ということになります。
素人でもわかる問題点が凄くシンプルでわかりやすく、難しい部分もわかりやすく説明されているのがいいですね。
身元不明女性の異常問題には理由があって、後ほど「なるほど!」と驚かされ、かつ荒唐無稽なのですが、この辺の説明もなかなか面白いです。
あまり怖くはないのですが、ドッキリは少な目でチラッと見せる感じのホラー演出は素敵です。

常に白濁した目を見開いて口を半開きにして空きっ歯を見せつけているキュートな身元不明女性の映像だけでもお腹一杯になるのではないでしょうか?
この人いつも全裸で可哀想なのですが、全くエロい感じが無く、なんだか神秘的なのです。
最初に地下室に半分埋められている時点で、どうも神秘的なムードがあって、この作品の雰囲気に凄くマッチしてました。
一方、息子思いの父と父想いの息子というトミー親子もいい感じで、観ていて可哀想になります。
特に何かが起こるたびに静かに驚愕しているトミーには引き付けられました。

これは観て損はないと思われ、忘れたころにまた楽しめそうな予感がします。

ラストまでのあらすじ

女性の身体からは激しく火柱が上がり、それが天井へと燃え移って安置所全体へと波及します。
慌ててトミーは消火したのですが、女性の身体だけはまるで燃やされるのを拒むように自然消火していました。
そして電力不足で稼働していなかったエレベーターが動く音がしたので、親子は鍵が開いた安置所を飛び出して飛び込みます。
しかしエレベーターは突然沈黙してしまい、足に付けた鈴の音と共に頭を吹き飛ばされた遺体が迫って来たのでトミーは斧を叩き込んで撃退しました。

倒れた遺体はなぜかエマと入れ替わっており、オースティンは嘆き、トミーはあまりの事態に頭を抱えます。
トミーは絶望して泣き崩れるオースティンを抱えて動き出したエレベーターに乗り込んだのですが、間もなくエレベーターは停止して親子は閉じ込められてしまいました。
自分を責めるトミーを庇うオースティンでしたが、同時にあの女の正体を暴きたい!と解剖の続きをすると宣言しました。
親子はエレベーターのドアを手で開けて脱出したのですが、なぜか深い霧が発生していた廊下でトミーが何かに斬り付けれて倒れます。
オースティンはトミーを助け起こし、一緒に遺体安置所へと駆け込みました。

そして女性の脳を切開して脳細胞のサンプル組織を分析するとなんと彼女は生きていたと判明しました。
つまり彼女は解剖されている最中もずっと生きており、ひたすら苦痛を味わっていたということになります。
しかし心臓等の臓器は既に摘出されており、どうやって生きているのだろうと親子は頭を抱えます。
ふとあの布を折り曲げて見ていたオースティンはそこに聖書の一説である「レビ記20章27節」の文字を発見します。
また右上に書かれていたローマ数字は年代を表すようで、この布は1693年のものだったようです。

レビ記のその節には「霊媒や口寄せをする者は魔女であるから必ず殺せ」と書かれており、オースティンは一連の出来事から「セーラムの魔女裁判」を思い出します。
どうやら彼女は自身に儀式を行い、拷問を行った人間に復讐をするつもりだったようで、トミー達はそうとは知らずに寝た子を起こしてしまったようでした。
そう考えるとトミー達が彼女に対して行ったことは拷問以外の何物でもなかったので、トミーは無反応の死体である身元不明女性に「息子だけは助けてくれ」と懇願しました。

直後にトミーの手足は折れ、肺は焼かれて目は濁って苦しみ始め、対照的に身元不明女性の臓器は活き活きとし始め、切開痕も閉じて目と皮膚には生気が宿ります。
トミーは余りの苦しみに「殺してくれ」と懇願し、オースティンはメスで彼を刺して止めを刺してやりました。
同時に電気が復旧して室内は明るくなり、外では「皆無事かー」と呼び掛けるバークの声が響いています。
オースティンはその声に誘われて出口への螺旋階段を上がり、「倒木を斬ったぞー」と合図があったのでドアを押したのですが、どうやらバークの声は偽物だったようです。
そしてオースティンはいきなり背後に現れたトミーに驚き、手すりから転落死してしまいました。

翌日、葬儀屋に現れたバーク達は密室内に転がる三つの遺体を見て頭を抱えます。
ラジオでは4日連続の快晴!と伝えており、まるで暴風雨はなかったようでした。
黒板に書かれた身元不明女性のものらしき検視メモとまるで解剖痕が無い彼女の様子を疑問に感じたバークは身元不明女性の遺体を大学へと搬送することにしました。
移動中の車内で運転手は「心を明るく照らしましょう」的な彼女のテーマ曲的なものをラジオで聞かされ、身元不明女性の遺体はピクリと足の指を動かしたようで、鈴がチリンと鳴りました。

エンドロールで終了です。

全てが謎のような話でしたが、とても面白かったです。
なんで舌は戻らないのかしら?と疑問に感じたのですが、これは女性が自分に課した儀式の一環だからだということのようです。
恐らく歯も生えることはないのだと思われます。
きっといつの間にかあの布も体内にインされているのではないでしょうか。

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