東海道四谷怪談
仇討してたらひどい目に遭う話
制作年 | 1959年 |
制作国 | 日本 |
監督 | 中川信夫 |
脚本 | 大貫正義/石川義寛 |
原作 | 鶴屋南北 |
上映時間 | 77分 |
出演 |
天知茂 |
若杉嘉津子 |
北沢典子 |
だいたいのあらすじ
民谷伊右衛門(天知茂)は一度は認められた四谷岩(若杉嘉津子)との婚礼を岩の父である左門(浅野進治郎)に反対されたのが納得いかず、夜の寂しい路上で左門を呼び止めました。
伊右衛門は左門に婚礼に反対する理由を問い質したのですが、左門は「お前のように身持ちの悪い男には娘はやれん」の一点張りで、挙句の果てに泥棒猫だの馬鹿だのと罵ります。
カッとなった伊右衛門は左門と同行していた彦兵衛(芝田新)を斬り捨ててしまったのですが、左門の提灯持ちをしていた直助(江見俊太郎)は「犯罪者にやられたことにしましょう」と入れ知恵しました。
左門を殺害した犯人は蔵破りにしくじった小沢宇三郎という極悪人であるということになり、岩は仇討をすることになりました。
岩には袖(北沢典子)という妹がおり、袖の許嫁は彦兵衛の息子である与茂七(中村龍三郎)でしたが、仇討が叶うまで婚礼はお預けとなり、与茂七も姉妹の仇討の旅に同行することになりました。
使用人であった直助は同行し、伊右衛門も助太刀として同行することになったのですが、実は直助は袖に横恋慕していました。
こうして仇討のために故郷・岡山を旅立った一行でしたが、岩は元々病弱で仇討祈願の曽我兄弟の墓参の道中で体調を崩してしまったので茶屋で休むことになり、袖が付き添うことになりました。
以前から与茂七を邪魔だと思っていた直助は曽我兄弟のゆかりの地だという滝で背後から与茂七を刺して滝壺に突き落とします。
直助は素浪人に与茂七が斬られたと岩達に知らせに行き、伊右衛門を岩に付き添わせて「仇を取らねば」と自分は袖を連れ出しました。
そしてそれ以来、袖は消息不明となってしまいました。
その2年後、伊右衛門は仇がいるという江戸に岩を連れて行き、強引に夫婦になってしまい子供まで出来ていました。
無職バンザイな伊右衛門がまともに暮らせる筈ももなく傘貼りの内職等で日々の糧を得ている暮らしの中、岩は騙されているとは知らずに仇討の日を心待ちにしつつ、袖の身を案じていました。
一方、直助も袖をだまくらかして江戸に連れてきており、強引に夫婦になったものの袖からは仇を討つまではHしないと厳命されていました。
ある日、伊右衛門は悪漢に絡まれていた伊東喜兵衛(林寛)の娘・梅(池内淳子)を庇って悪漢を追い払ってやり、家に招待されました。
また伊右衛門と直助は連絡を取り合っており、賭場に出入りしており、按摩の宅悦(大友純)から岩を片に借金をする始末でした。
当然伊右衛門は仇討などするつもりはなく、岩の着物等を質入れしては飲み歩いていました。
ある日、伊右衛門は蚊帳まで質に入れようとし。更に母の形見である櫛まで奪おうとしたので岩は仕方なく帯を代わりに差し出し、シクシクと泣き崩れるのでした。
鬼畜だと思います。
その一方で伊右衛門は梅と逢瀬を重ねるようになっており、かと言って岩は切れずと中途半端な状態になっていました。
喜兵衛は梅と伊右衛門の婚礼を望んでおり、仕官の話を持ちだして伊右衛門を揺さぶり、岩も家に出入りしている宅悦から伊右衛門が梅と密会している件を聞いていたのですが、火遊び程度だろうと軽く考えていました。
喜兵衛は梅の乳母で直助の母である槇(花岡菊子)に依頼して伊右衛門と梅を結ばせようと画策し、直助は岩を宅悦にレイプさせ、その場を押さえて伊右衛門に斬らせるという案を思いつきました。
しかし流石の伊右衛門も岩は斬れんと拒否したので、直助は南蛮渡来の毒薬を岩に呑ませるという案を思いつきました。
その毒を飲むと二目と見られない顔になって挙句の果てには悶絶して死ぬそうなのですが、仕官に目がくらんだ伊右衛門は乗っかってしまいました。
ある日、伊右衛門は宅悦に岩をレイプするように依頼してから帰宅し、最近体調がよくない岩に「来年は一緒に花火に行こう」と言いつつ毒を飲ませました。
よく来年の約束とか平気でできますよね。私だったらこれが一番恨みポイントになります。
岩はたまに旦那に優しくされたので感動してしまい、「身体がよくなるから」と言われたので毒を飲んでしまいました。
いいのか悪いのかわかりませんが、「私が我慢していれば、この人もまともになるだろう」とずっと思ってたんだとおもいます。そしてそれが叶った気がしたんでしょうね。
その頃、直助は本物の宇三郎(高村洋三)に接触し、油断させて背後から刺して殺害し、それを袖に確認させて「今夜から言うこと聞けよ」と言い聞かせていました。
そして宅悦が訪ねてきたので伊右衛門は「仕官の話してくるから、宅悦にマッサージでもしてもらってね」的なことを言ってから家を出ました。
騙されていると走らない岩は伊右衛門の心遣いに感動してしまうのですが、宅悦はマッサージのどさくさに紛れて岩のオッパイを揉むのでした。
岩はブチ切れたのですが、ビビった宅悦は一切合切ばらしてしまいました。
夫に裏切られたと知った岩は衝撃を受けたのですが、同時に顔を押さえて苦しみだし、宅悦の差し出した水を飲みました。
岩の顔を見た宅悦は腰を抜かして驚いたので、岩は鏡を出して自分の顔を確認しました。
岩の左目の上には醜い腫れものができており、衝撃を受けた岩は気を落ちつけようと櫛を髪に当てるのですが、髪の毛がごっそりと抜け落ち頭皮は血まみれになりました。
逆上した岩はカミソリを手に宅悦に襲い掛かるのですが、幼い我が子の泣く声に我に返り、胸に赤子を抱いて伊右衛門への恨み言を口にした後に悶死しました。
その後、帰宅した伊右衛門は「よくやった」と宅悦を褒め称えつつ、「間男」の罪と称して宅悦を斬り殺してしまいました。
そして直助と協力して戸板の裏表に岩と宅悦の死体を打ち付け、付近の沼へと投げ込みました。
感想
これは普通です。
四谷怪談のハイライトみたいな内容です。
伊右衛門悪いヤツという部分と岩が悲惨な目に遭う所を上手いこと凝縮してあってなかなか面白いです。
私はこのお話ってどれだけ岩に同情できるかが肝だと思ってますので、上手いと思いました。
岩の「なんの罪咎もない私に…」の下りは定番台詞で、これを言われるとぐうの音も出ない気がします。
どんどん祟っちゃってくださいとしか言いようがありません。
ホラー演出は古いですが、なかなかの怖さ。
岩様には申し訳ないのですが、戸板クルクルのシーンは怖いです。
宅悦の「お金をください」的な台詞はウケましたが、やっぱり顔怖いです。
岩は大体、薄幸そうな美人が選ばれて袖は清純路線っぽいのが定番みたいでこの映画も外してないようです。
その反面でちょっと悪役が中途半端で薄い感じでした。
極悪!って感じの人が少なくて全員小物集が漂ってる気がしました。
今まで観た四谷怪談の中では上位に食い込むのではないかと感じました。
ラストまでのあらすじ
しれっと梅と祝言を上げた伊右衛門でしたが、早速その晩に戸板に張り付いた岩の亡霊が天井に現れて恨み言を言いました。
一方、帰宅した直助は約束通り袖を抱こうとしたのですが、戸板に張り付いた岩の亡霊を見てしまい、その気が失せていました。
岩の亡霊に惑わされた伊右衛門は梅と槇を切り捨て、更に宅悦に見間違えて喜兵衛も切り殺してしまいました。
仕方なく伊右衛門は自宅で除霊をしてもらいました。
その後、堀で魚を獲っていた直助は岩の櫛と着物を拾い、伊右衛門が釣りに現れたので、挨拶して引き揚げました。
沼の周辺はにわかに暗くなって雷が響き、戸板に張り付いた岩が現れて「民谷の血筋を絶やすまで私は祟る」的なことを言います。
そして伊右衛門は宅悦と岩の亡霊に交互に悩まされるのでした。
このシーンはなかなかの怖さです。岩には頑張って欲しいです。
帰宅した直助は足洗いの桶に蛇が一杯という幻覚を見てしまい、ビビっていたのですが、彼が持ち帰った櫛と着物を見た袖は「これは姉上のものだ」と直ぐに気付きました。
直後に玄関口に生前の美しい姿の岩が生気のない表情で現れ、そのまま袖を外へと連れ出します。
直助は戸板バージョンの岩に掴まれ、あまりの恐ろしさに「お前らの父と佐藤を斬ったのは伊右衛門だ。奴は今、蛇山の寺にいる」と告げて逃げ出しました。
袖は岩に導かれて夢遊病のように宿屋は辿り着き、そこで生きていた与茂七と再会しました。
不思議なことに与茂七は夢枕で袖が見たことを全て体験しており、二人は仇が伊右衛門であると再認識しました。
その後、直助は伊右衛門を強請って斬り捨てられてしまったのですが、寺に籠ってひたすら除霊を行っても伊右衛門の前から岩の亡霊は消えず、斬られた直助に被さるように岩が現れるのでした。
そして伊右衛門は異世界に連れ去られ、そこで蚊帳の中で赤子を抱いた岩の亡霊に責められて発狂していたのですが、そこに与茂七と袖が「父と姉の仇!」と飛び込んで来ました。
伊右衛門は剣の腕が立ったのですが、全力で妨害してくる岩と宅悦を相手にしているので分が悪く、とうとう与茂七に斬られて袖に刺されました。
伊右衛門は絶命する寸前に今までの行いを反省し、「岩、許してくれ」と呟いて倒れます。
彼が沼のほとりで絶命すると赤子を抱いた岩はキレイな姿で天に昇って行きました。
終マークで終了です。
成仏できたようです。