事前に負けてます 野火

野火

なぜ大地を血で汚すのか

制作年 2014年
制作国 日本
監督 塚本晋也
脚本 塚本晋也
原作 大岡昇平
上映時間 87分
出演
塚本晋也
リリー・フランキー
中村達也

だいたいのあらすじ

南方戦線に配属された田村一等兵(塚本晋也)は肺を患ったので分隊長(山本浩司)から病院に行けと命じられます。
野戦病院は重症者ばかりで軍医(山内まも留)は「肺病くらいで来やがって」と何もせずに田村を一晩泊め、そのまま退院させます。
分隊長は「治ってねえだろ。病院行け」と田村を殴りつけ、病院では田村を追い返すとたらい回しにされます。
また戻って来た田村に分隊長は「行くところがないと言え。病院に入れてもらえなかったら手榴弾で自決すろ」と命じました。
空腹のあまりに道中で現地人から食料をゲットしようとした田村でしたが失敗に終わります。

病院の付近では兵士が僅かな芋を奪い合っていたのですが、直後に爆撃で病院は燃えました。
行くところを失った田村はジャングルを彷徨い、死にかけていたのですが、幸い芋をゲットすることができました。
しかし生で齧ったらお腹を壊してしまったので、田村はマッチを求めて彷徨い、現地人の家を発見したのですが、もぬけの殻で犬が襲ってきたので銃剣で刺殺しました。
田村は教会を発見して潜伏し、倒れ込んでいたのですが、現地の若者が現れたので「殺さないからマッチをくれ」と要求しました。
しかし女性が騒いだため、イカレていた田村は無意識に発砲して射殺ししてしまい、男は逃げました。

田村は塩だけゲットして村から逃走し、銃を谷底に捨てました。
その後、田村は伍長(中村達也)達三名と出会い、日本軍が兵に集結命令を出したことを知ります。
伍長は田村に興味が無さそうでしたが、塩を持っていると知って強制的に同行させます。
そして田村は伍長が調達した銃を与えられ、先を急ぐのですが、道中では餓死した兵や手榴弾で自決している兵を目撃しました。
時折、米軍の攻撃を受けて兵が倒れ、一行は兵の増減を繰り返していました。

その後、田村は病院にいた脚の悪い安田(リリー・フランキー)と安田に顎で使われている永松(森優作)の二名と再会しました。
道中の盆地では米軍が待ち伏せしており、日本兵の遺体が山のように転がっていました。
この地点を通過しないと合流地点にはたどり着けないため、夜を待って移動を開始したのですが、突然ライトを浴びせられて掃射を受けます。
日本兵は次々に倒れ、腕を失ったり、脳味噌がこぼれたりしている者もおり、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されます。
生き残った田村は米軍のジープが生存した日本兵にタバコを与え、担架で運び出しているのを目撃します。

そこで白旗を作り、捕虜になろうと決意してジープを待ち受けていました。
ジープが現れたので飛び出そうとした所、一足先に他の兵が白旗を掲げて駆け寄っていました。
所がその兵は小銃でハチの巣にされており、よく見るとジープの上には現地人が居り、米兵から銃を奪って兵に乱射していました。

感想

これは悲惨です。
これ、戦争映画なのでしょうけど、こんなんじゃ戦争できないですよね。
殆どがはぐれた兵士のヒューマンドラマ的なもので、交戦というか一方的に銃撃されるシーンはありましたが、逆にあまりリアリティはなかったです。
グロは脳みそ出たり、腕が無くなったり、内臓はみ出たりしてましたが、交戦の悲惨さはあまり無かったです。
生活面の悲壮感が凄い作品で、一方的にボロ負けしてる感じで、戦う前に負けてます。
それほど強く反戦を全面に押し出している訳ではないのでしょうが、これを観ると戦争したくなくなります。

はっきりとは言及されてないですが、フィリピン戦線を題材にしてるみたいで、補給線の重要性もよくわかります。
悲惨な戦場というとバターンとかガダルカナルが有名ですが、フィリピンも悲惨です。
この状況で戦闘しろというのは無理だと思います。

三通りの人が出てくる感じで、最後まで人間性を失わないのが田村で、人間性を失ってしまうのが永松、最初から人間性がないのが安田なのかな?と勝手に思いました。
安田はこの状況でも永松を利用して欲求を満たしているのが恐ろしく、他人のことは何とも思っていないようです。
恐らく「猿」の件も彼の発案なのではないかと思いました。
そして景色がとても美しく描かれており、結末付近の野火も美しく見えました。
現地の一部の人が日本軍に恨みを抱いている様子も描かれていて、そりゃそうなるよなあと言う気がしました。

田村は相変わらず凄く声が小さいので、ボリューム上げないと聞き取れなかったです。

ラストまでのあらすじ

田村はあても無く先に進んだのですが、すれ違う同胞は皆亡霊のようで、お互いに無気力でした。
やがて伍長と再会したのですが、完全にイカレて座り込んでおり、田村に自分の腹を示して「俺が死んだらここ食べてもいいよ」とほほ笑むのでした。
その後、発狂して彷徨っていた田村は力尽きて倒れたのですが、永松が発見して殺されそうになったのですが、彼は水と「猿の肉」だという干し肉を田村に与えます。
そして永松は洞窟にいる安田の所に案内したのですが、田村は永松が自分を襲うのではないかと考えて寝付かれませんでした。
翌日、永松は猿の肉を取りに行きましたが、その際に「手榴弾を失うと安田に殺されるから消を付けろ」と田村に耳打ちしました。

田村は安田に手榴弾を奪われてしまい、銃声がしたので駆け付けると末松が現地人の男性に発砲していました。
末松が「猿」と呼んでいたのは現地人のことであり、男性は何とか逃げ出していました。
そして末松は田村が手榴弾を奪われたと知ると「猿の肉も無いし、俺はあいつに殺される!」と慌てて安田の下に駆け付けます。
恐ろしい話です。
安田はいきなり手榴弾を末松と田村に投げ、逃げ出しました。

末松は「あの野郎やっぱ歩けたのか!殺してやる」と水場で待ち伏せをすることにしました。
田村が「あいつが悪いんじゃねえよ」と言うと末松は「じゃあどうする!お前が俺を殺して食うか?俺がお前を殺して食うか?どっちだ」と怒鳴ります。
その後、安田は「煙草もあげるから仲直りしようぜ。」と丸腰で田村達の前に現れました。
更に安田は末松のことを息子のように愛していたと白々しいことを言い出したのですが、末松はとうとう発砲してしまいました。
そして末松は倒れた安田をナタで滅多打ちにして殺害し、肉を食らっていました。

その地獄絵図を見た田村は銃を奪って逃げようとしたのですが、末松も「お前はきっと俺を殺して食うはずだ」と発狂した様子で迫ります。
そして銃声が響き、田村にはこの後の記憶が無かったのですが、彼は発狂して笑いながら走り回っていました。
現地人に銃床で殴り倒された田村は米軍の野戦病院に運ばれました。

無事に妻(中村優子)の待つ家に帰宅した田村でしたが、この島での体験は彼の心に重く影を落としており、今でも燃え盛る野火を見ることがありました。

エンドロールで終了です。

最後に田村が妻の出した食事に異様に手を合わせているシーンがありました。
結局、田村が最後にどうなったのかは鑑賞者にゆだねられているようです。
私は永松を殺してしまったものの食べてはいない気がします。
田村は一度死にかけており、永松に助けられなければ死んでいたのですが、その際も人肉は食べていませんでした。
最後の発狂は永松の狂気に当てられて彼を射殺したことが原因だったのではないかと介錯してます。
それでも人を食べてしまったという罪悪感が残っているので食事に手を合わせてるかな?と思いました。

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