オーディション
キリキリキリ……恐いでしょう?
制作年 | 1999年 |
制作国 | 日本 |
監督 | 三池崇史 |
脚本 | 天願大介 |
原作 | 村上龍 |
上映時間 | 112分 |
出演 |
石橋凌 |
しいなえいひ |
沢木哲 |
だいたいのあらすじ
7年前に妻・良子(松田美由紀)を亡くした会社社長の青山(石橋凌)は息子の重彦(沢木哲)と二人暮らしをしています。
最近、重彦からは再婚を勧められ、従業員の柳田(広岡由里子)からは結婚が決まったと告げられました。
再婚を決意した青山は映画会社に勤務する友人の吉川(國村隼)に「習い事をしていた過去があり、ちゃんとしている女と結婚したい」と相談しました。
吉川は映画のオーディションを開くからその中から好きな女を選べばいいと提案するのですが、吉川によれば青山が理想とするような女性は表現力が乏しいのでどっちみち二次選考に残らないということでした。
そしてオーディションには書類が沢山送られて来たのですが、吉川は青山に「30人位選んどいて」と適当に依頼しました。
書類を選考した青山は「主人公の境遇がクラシックバレエを断念した時の自分の心境に似ている」という山崎麻美(しいなえいひ)のことが気になり始めます。
ということでオーディション当日になり、青山は吉川と同じくプロデューサーとして参加します。
朝から晩までひたすら面談となり、吉川はセクハラ発言を連発していました。
そしていよいよ山崎麻美の番が来たのですが、彼女はレコード会社には所属しているものの芸能界の経験はなく、現在は無職で友人のバーの手伝いを週三日と澱みなく質問に答えました。
写真を見た時から麻美のことが気になっていた青山は「あなたは真剣に生きてる感じがします」とオーディションらしからぬ感想を述べてしまったのですが、吉川はどうも彼女に怪しさというか引っ掛かる点を感じていました。
その夜、青山は「もう少しお話しを伺いたい」という名目で麻美に電話し、個人的に会う約束を取り付けました。
青山のガッツポーズにイラっときます。
また、吉川からレコード会社の麻美担当のディレクターは1年前に失踪しているという連絡を受けました。
後日、麻美とレストランで食事をした青山は「ディレクターの件は実は形式だけで1度もあったことがない」と打ち明けられました。
更に麻美からは「今後も個人的に相談に乗って欲しい」と言われすっかり有頂天になる青山でした。
青山は吉川に「もう麻美に決めたから」と告げたのですが、吉川は「映画の件はどうでもいいけど、あれだけの女が自分からこちらの網に飛び込んでくるのは裏がある。危険だから焦るな」とアドバイスしました。
麻美の提示した連絡先では誰とも連絡が取れず、勤務しているバーの名前さえ不明でした。
しかし青山は「自分の勘を信じる。トラブルがあったら自分で解決する」と断言したので吉川は「暫くお前からは連絡しない方がいいぞ」的なアドバイスをするのでした。
そういう訳なので青山は吉川の最後のアドバイスだけには従って電話したくても我慢しました。
一方、麻美はデカい麻袋が転がる狭いアパートの一室で黒電話を前にして俯いてしゃがんでいました。
この袋なんでしょうね?
翌日、珍しく青山は会社を休み、家政婦(根岸季衣)と雑談しつつボーっと過ごしました。
その後、とうとう青山は麻美に電話してしまったのですが、黒電話の着信音を聞いて麻美は不気味な笑みを浮かべました。
尚、彼女の部屋にある袋には何かが入っているようで、暴れるように蠢いていました。
この人が電話待ってるシーンだけで怖いんですけど…どういうことなの
後日、麻美と再会した青山は彼女の家族は千葉にいること、バーは銀座の「石の魚」という店で店には来てほしくないことを聞きました。
そして青山は「先日の映画はスポンサーが降りたので没になりそう」と嘘を吐いたのですが、麻美は「最初から出演には積極的ではない。青山さんに個人的に会えただけで嬉しい」と返答するのでした。
釣り針デカすぎだと思うんです…
尚、青山は周りの人には親切だし、誰にでも丁寧な感じの好人物です。
すっかり舞い上がった青山は帰宅後、重彦に「恋人ができた。週末旅行に行く」と打ち明けました。
その後、青山は海辺のコテージに麻美を連れて旅行に行きました。
夕食まで美術館でも行こうかという青山に対し、麻美は部屋を暗くして自ら服を脱ぎ、「来て」と誘うのでした。
実は麻美には太ももに火傷の痕があったのですが、青山は気にしませんでした。
そして麻美は青山に「わたしだけを愛して」と誓わせた後に身体を許しました。
その後、眠り込んでいる青山を残し、麻美は引き揚げてしまいました。
それから麻美とは連絡が取れなくなり、青山は吉川に何とか捜せないかと泣きつくのですが、「履歴書しかないから無理」と断られ、更にあの女はもう止めとけと言われてしまいました。
唯一の手掛かりであった麻美の経歴である「島田バレエ」を訪ねた青山でしたが、そこは廃墟で玄関が板張りされていたので落胆します。
引き揚げようとした時、建物内からビゼーのカルメンのメロディーがピアノで流れてきたので板張りを外して不法侵入してしまいました。
レッスン場では島田老人(石橋蓮司)がピアノを弾いていたので青山は声を掛けたのですが、島田は狂っとる感じで「あんたあの女を抱いたのか?」と笑っていたと思えば「帰ってくれ」と追い返すのでした。
尚、島田の回想によればどうやら麻美の太ももの火傷は島田が火箸を押し付けたのが原因のようです。
今度は青山は銀座の「石の魚」を訪ねたのですが閉店しており、夜逃げでもしたようにシャッターの隙間には無数の請求書が差し込まれていました。
通り掛かった別の店の従業員(斉木しげる)によればこの店のママは1年ちょっと前にトラブルで殺害され、死体がバラバラだったそうです。
殆どがママ一人でやっていたそうで、麻美の件は彼は知らないということですが、ママは音楽業界の人と親しく違法ドラッグも吸引しているという噂だったそうです。
また、警察でバラバラ死体を復元したところ、指三本、舌一枚、耳一枚が多かったということでした。
その頃、青山の自宅には何者かが侵入し、お酒に何かを混ぜているようでした。
感想
これは普通です。
中年男性が映画のオーディションと称して若い女性を集めたらひどい目に遭いましたという内容です。
青山が再婚相手を探すことは何も問題がなく、仮にセックス目当てで愛人を作ったとしても相手の合意があれば何の問題もないわけです。
そもそも青山は不快な人物ではなく多少の過ちはあるにせよ好人物だと思います。
オーディションで集めないと麻美とは出会えなかったので、本来なら出会わないはずの男女が出会ってしまったことで不幸が始まった気がします。
麻美も麻美で青山が刺激しなければ細々とサイコをやっていた気がします。
ボタンの掛け違いって本当に怖いなと思いました。
この映画はバイオレンス描写と麻美の演技が素晴らしいと思います。
その反面で展開はどうかな?と思いました。
特に後半の夢オチ的なものを連発する展開は非常に鑑賞し辛く感じます。
夢オチにしても個人の持っている情報量が多すぎてお話そのものに矛盾を生じてる気がします。
その辺がどうもスッキリしなかったです。
あと、私的には麻美側の視点で観てスッキリ!としたいんですけど、前述したように青山はそんなに悪人でもないので同情してしまいます。
こういう映画のパターンだと悪い男を成敗してざまあ!スッキリってパターンが多いのですが、もやもやします。
結局、単なる「サイコこわい」ということになってしまう気がしていて、なんか違う気が…
よく考えると見所はサイコシーンだったので、それだけでも楽しめた気はしますけど。
ラストまでのあらすじ
その晩、遅く帰宅した青山は重彦から「今日は泊まるから」という伝言を受けました。
そしてお酒を呑んだ青山は意識を失って倒れるのですが、その際に麻美から「両親が離婚して叔父の家に預けられ、虐待を受けた」と話していた件を思い出しました。
以前に聞いた話だと麻美は母の再婚相手の男性にも虐待を受けていたそうで、心の支えはバレエだけだったということでした。
青山は良子に麻美を紹介して「この人だけは止めて」と言われ、柳田からは「たった一度私を抱いたのは何かの過ちだったんですよね」と責められる夢を見ました。
この夢に麻美のアパートが出てくるのはちょっと不自然ですよね。
その後も相手女性は麻美や重彦が狙っている美鈴という少女に変わったりしたのですが、青山はようやく目覚めました。
青山は麻美のアパートに拉致されたようで、そこであのデカい袋を発見したのですが、袋の中身は男性で、彼は舌と指三本、片耳を切られていました。
そして麻美はまるで犬に餌を与えるように男にスープを与えていたのですが、今度は火箸を手に島田が乱入してきて麻美の太ももに火箸を押し付けました。
どうやらまだまだ夢の続きだったようで場面は変わってバレエスタジオとなり、麻美が「これはね。骨付きのお肉でも簡単に斬り落とせるのよ」と島田の首にワイヤーを巻き、切断しました。
今度は青山がオーディションの椅子に座り、「息子に言われたんで再婚に踏み切りました」的なことを語っている幻想を見ます。
というのが青山が倒れるまでの一連の回想だったようで、そこで彼はバッタリと倒れました。
この回想というか幻想は無理あり過ぎです。
ドアの向こうからは黒手袋に黒エプロン、黒ブーツの麻美が現れたのですが、飼い犬は既に麻美の手で絞殺されていました。
しびれて動けなくなっている青山に追い打ちをかけるように麻美は全身を麻痺させる薬を舌から注射するのでした。
そして麻美は床に白いシートを敷いて青山をそこに転がし、「オーディションで若い女を集めてセックスしたかっただけでしょ」
的なことを呟き、何やら無数の針を準備し始めます。
そして「キリキリキリキリキリー♪」と楽しそうに青山の腹部に針を刺し始めました。
麻美は「言葉は嘘ばかりだけど痛みだけは信用できる。痛いと自分がどういう形をしてるかわかるでしょ」的なこと言いながら次々と針を刺し、青山の腹部をハリネズミのようにしてしまいました。
更にその腹部に跨ると、「ここも凄く痛いでしょ」と目の上下に針を刺したのですが、彼女の持論によれば人間が自分の本質を理解するのは悲惨な目に遭っている時だけだそうです。
そして麻美は「これはね。骨付きのお肉でも簡単に斬り落とせるの」とワイヤーで青山の左足首を斬り落としたのですが、彼女の回想によると島田は幼少期の麻美が踊る姿を見てオナニーしていたようです。
「今度は右足ね♪」と右足首に取り掛かった所で玄関が開いて重彦が帰って来ました。
そして部屋に入って来るなり青山を見て愕然とした重彦の背後から麻美が襲い掛かっていました。
その瞬間に青山の意識は飛んで旅行先のホテルで目覚め、足首があることを確認してほっとします。
隣に寝ていた麻美は「あなたのプロポーズお受けします」と言い出したのですが、ここでまた青山の意識は戻ります。
この夢オチみたいな演出は正直頂けないと思います。凄く見辛いです。
間もなくスプレーを手にした麻美が重彦に襲い掛かり、二階に逃げた重彦は追いかけてきた麻美をキックで吹き飛ばして階段下に落下させました。
重彦は青山の指示で警察に通報し、動けなくなった麻美は青山に告げた言葉をテープレコーダーのように繰り返していました。
重彦の「生きていれば辛いことを乗り越えた時のことを思い出して、生きててよかったって思える時が来る」というセリフがそれに被さります。
エンドロールで終了です。
生きててよかったです。