ブラウン管からビヨーンと伸びます ビデオドローム

ビデオドローム

ビデオテープに魅せられた男の謎

制作年 1982年
制作国 カナダ
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
脚本 デヴィッド・クローネンバーグ
上映時間 87分
出演
ジェームズ・ウッズ
ソーニャ・スミッツ
デボラ・ハリー

だいたいのあらすじ

TV画面にシビックTVの宣伝が流れ、秘書が本日の予定を読み上げます。
チャンネル88社長であるのマックス(ジェームズ・ウッズ)は目覚め、出勤準備を始めます。

マックスはヒロシマ・ビデオのクラキの元を訪ね、日本のポルノビデオの買い付けを行います。
ビデオはソフトタッチだったので、放映はしませんでした。
どう見てもクラキは中国人です。サムライ・ドリームっていう変なAV
日本はヒロシマがメジャーですね。複雑です。

マックスはハーラン(ピーター・ドゥボルスキー)の元を訪れ、マレーシア辺りで配信されているスナッフ風のビデオを盗試聴を依頼します。
ハーランは機器を設定し、53秒だけ閲覧できるようにしました。
ビデオには女性が黒覆面の男性2人に拷問を受けている様子が少し流れて切れました。
女性の背後の壁は粘土でできており、電流が流れているようです。
マックスはビデオに興味を示し、ハーランに発信元を特定するように依頼します。

マックスはインタビューを受けることになり、TVに出演します。
マックスの局では常に刺激的で暴力的な内容も扱っています。
キャスターにマックスの局で扱っている内容は暴力性を高めるのではないかと言われ、彼は却って暴力を抑止すると反論します。。
ゲストの一人のニッキー(デボラ・ハリー)は人の欲望には際限がなく、もっと強い刺激を求めるようになるとマックスの考え方には否定的です。
ゲストのオブリビアンは暴力映像が暴力性を高めるのではないかという質問に、いずれ人はTV越しにしかコミュニケーションを取らなくなると回答しました。
オブリビアンは映像の専門家ですが、TV画面を通してしか外界に接触せず、本名もわからないようです。
オブリビアンはキャスターとの会話がかみ合っていなくてよくわかりませんでした。

ハーランの元を訪れたマックスは先日のビデオを視聴します。
内容は黒人の男が黒覆面の男性2人に拷問され、手足を切断されて殺害されるというものでした。
電波はピッツバーグから配信されていると特定され、マックスはますます興味を持ちます。

マックスは心の病院ラジオに出演しているニッキーを訪ねます。
彼はニッキーを家に呼び、ニッキーはビデオを探しているうちに例の拷問ビデオを見付けます。
拷問ビデオは「ビデオドローム」というタイトルでした。
興味を持った彼女はビデオを見たがったので、2人でビデオドロームを見ることにしました。
ビデオドロームは非常に画質が悪く、裸の女性が黒覆面の男に鞭打たれています。
ニッキーはマゾの気があるようで、ビデオに出演したいと言いますが、マックスは殺されるから止めた方がいいと言います。
彼女は性行為の際、自分の身体を傷つけて興奮するようです。その日、2人は関係を持ちます。
サービスありますが、マックスがニッキーの耳たぶを針で刺してます。ヒー!

マックスはビデオバイヤーのマーシャと会い、彼女の持ち込んだポルノを見ますが、刺激不足でした。
彼はマーシャにビデオドロームのことを話し、これからはそういう作品が欲しいと言います。
マーシャは地下市場を利用してビデオドロームを探すことを請け合います。

その夜、マックスはニッキーと会うと彼女は明日から2週間ピッツバーグへ出張すると言います。
ニッキーはビデオドロームに出演したいと言いますが、マックスは猛烈に反対します。
彼女は忠告にはあまり耳を貸さず、タバコの火を自分の胸に押し付け、マックスを驚愕させるのでした。
ニッキー変態すぎてついていけません。

マックスはマーシャと昼食を共にし、ビデオドロームのことを尋ねると、彼女はビデオドロームは危険だから手を引いた方が良いと忠告します。
彼女はビデオドロームの中の拷問や殺人は演技ではなく本物だと言うのです。
マックスは誰が制作指導しているのか聞き出そうとしますが、彼女は口を閉ざします。
彼が危険には近づかないし、先日のビデオを買うと言うとマーシャは渋々、名前を教えてくれます。
それは「ブライアン・オブリビアン」でした。

マックスはオブリビアンの信者が集まるブラウン管伝道所を訪ねます。そこは人がごった返していました。
人々は板で簡単に仕切られた個室でTVを鑑賞しています。
マックスはそこでオブリビアンの娘であるビアンカ(ソーニャ・スミッツ)に出会います。彼は彼女に会いに来ていたのでした。
マックスは強引にオブリビアンに会いたいと願い出ると、奥へと通されます。
彼はオブリビアンとの面会を申し出ますが、オブリビアンは20年来誰とも会わないそうです。
用件を伝えると、後日ビデオでコンタクトがあるそうで、一方通行のやり取りとなるようです。
マックスはビデオドロームについて尋ねると、電動所を去ります。
ビアンカはホームレスがブラウン管と接触することで社会復帰できると考えています。
この映画、まともな人間は誰も出てきませんね。

マックスが自宅で護身用の銃を手入れしていると秘書が訪ねてきます。
彼女は明日の目覚まし用テープとオブリビアンからの至急便のビデオを持ってきました。
不用意にビデオデッキに近づいた彼女をマックスは怒号を上げて引き離し、頬を平手で張ります。
驚く秘書に「殴ってすまなかった。」と詫びますが、彼女は殴られていないと言います。
マックスは秘書の頬を張る時、ニッキーの頬を張る幻影を見ていました。
彼の様子がおかしいのに気づいた秘書は薬を飲ませようとしますが、銃を見られるのが嫌だったマックスは彼女を帰らせます。
マックスは段々、幻覚と現実の区別が付かなくなっているようです。

マックスがオブリビアンからのビデオを手に取ると、一瞬歪んだように見え、取り落としてしまいました。

マックスはオブリビアンからのビデオを見てみることにしました。
彼はビデオの中でこう述べています。
・TVの画面は心の目の網膜であり、頭脳の一部であるのでTVで見ている物は自身の体験したこととなる。
・マックスは既にビデオの幻覚世界に足を踏み入れている。
・幻覚世界に入り込むと脳腫瘍が出来、取り除いてみると腫瘍はビデオドロームだった。
・自分はビデオドロームの最初の犠牲者である。
そこまで言うと彼は背後の黒覆面の人物に拷問されます。
黒覆面の人物はニッキーで、彼女はマックスをビデオドロームの世界に誘います。
ビデオドロームとはスナッフビデオではなく、信号のようなものなのでしょうね。
このシーンのニッキーはマックスの幻覚であると解釈しています。

直後、ブラウン管やスピーカーがエロチックに脈打ち、女性の喘ぎ声が聞こえてきます。
画面にはニッキーの唇がアップになり、マックスを誘います。
マックスは弾力を持ったブラウン管に頭を突っ込み、画面に埋もれていきます。
これ有名なシーンですね。

マックスは再び伝道所を訪れ、ビアンカの話を聞きます。
彼女はオブリビアンのビデオもビデオドロームだと言います。
ビデオドロームはやはり信号のようなもので、見た者に脳腫瘍を起こさせ、それが原因で幻覚を見せるのだと言います。
幻覚の内容はビデオの内容によって変わるということです。
ビアンカがオブリビアンは奥にいると言うので、マックスは奥に向かいます。
つまり安全なビデオにビデオドロームを乗せて配信すれば、安全な幻覚を見るということになります。
マックスはビアンカになんでそんなものを見せた!と逆切れしてますが、自業自得ですよね。

オブリビアンはビデオドロームが原因で11ヶ月前に亡くなっていました。
TVに出演した際の彼の映像はビデオだったのです。ビアンカがそれを公表せず、彼を生かし続けているのでした。
オブリビアンはビデオドロームを相棒に悪用され、殺されたのだといいます。
ビアンカはオブリビアンが遺してくれたビデオをマックスに渡します。
このビデオを見ればマックスの行く末がわかると言うのです。

マックスは局へ戻り、ハーランを訪ねてVTR室へ向かいます。
彼に幻覚は見るかと尋ねますが、見ないと即答されました。
ハーランはそんなに見てないから大丈夫なんでしょうか?

マックスはオブリビアンのビデオを見ています。
オブリビアンはビデオの中で、ビデオドロームで発生したのは腫瘍と呼べず新しい脳で、幻覚をコントロールできると語りました。
マックスはビデオを見ているうちにお腹がかゆくなり、気が付くと腹部に大きな亀裂ができていました。
彼は試しに腹部の亀裂に持っていた拳銃を入れてみると、吸い込まれて戻ってきませんでした。
腹部の亀裂は閉じ、拳銃は腹に飲み込まれたままになり、自分の狂気を疑ったマックスが周囲を探しますが、拳銃はありません。
こんなもんをそのまま映像化しようと考える発想が凄いと思います。

そこに電話が架かってきたので、マックスが出てみるとバリーという男が彼と会いたがっており、下に車を待たせてあると言います。
マックスは着替えてアパートの玄関先に停まっていた豪華なリムジンの後部座席に乗り込みます。

車内では前のTVにバリーの自己紹介が流れるというので、マックスは見てみます。
スペクタキュラー・オプチカルという会社の広告の後、バリーはマックスを我々の世界に君を招待したいと語ります。
彼はビデオドロームの幻覚を見る効果を利用して、人をコントロールしようとたくらんでいるようです。
その実験中にマックスが偶然、電波を拾ったということで、その件で話がしたいと言います。

車が着いた先はスペクタキュラー・オプチカルでした。
バリーが現れ自己紹介が終わると、バーチャルボーイをデカくしたような中国製ものを箱から出しました。
バリーはマックスの幻覚を記録したいので、これの被験者になってくれないかと依頼します。
今までの被験者は常軌を逸してしまい、精神病院送りになっているようなので、マックスを助けることにもなると言います。
マックスは試してみることにしました。
もうこういうものの造りがうさん臭いんですよね。いい感じです。

バリーは機械の設定を終えると記録は自動で行われるのでマックスが幻覚を見ればよいと言って部屋を出ていきます。
マックスは手を目線の前にかざしてみますが、今の所正常に見えているようです。
ヘルメットの部分が赤く点滅していて笑ってしまいました。

しばらくするとマックスの目の前にニッキーが現れます。
彼女はマックスに鞭を渡します。
ニッキーはいつの間にかブラウン管の中に入ってしまい、マックスは彼女をTV越しに鞭打ちます。
マックスがTVを鞭打つと画面のニッキーは喜びの声をあげます。
彼は段々暴力的な衝動にかられ、打つ力を強めていきます。
画面はいつの間にかニッキーではなくマーシャに変わっています。

彼はなぜか自宅で目覚めます。
ベッドの横に膨らみがあり、めくってみるとマーシャの死体が出てきました。
彼は電話でハーランを呼び出し、すぐ自宅に来るように依頼します。
ハーランが到着すると、マックスは彼が持参したカメラでベッドを写すように言います。
ハーランは写真を撮ろうとベッドを見ますが何もありませんでした。
迷惑な社長ですね。

マックスは動転して、ベッドを調べますが、やはり何もありません。
あきれるハーランを尻目にマックスは昨夜のビデオドロームの録画はあるか尋ね、ハーランがあると答えます。
マックスは1時間後にラボで会おうと言い出し、さすがにハーランも怒り、2人は口論になります。
マックスは冷静さを取り戻し、落ち着いてハーランを説得し、2人は1時間後にラボで会うことにします。

マックスがラボに行き、ハーランに録画の件を尋ねると、昨夜は放送は無かったと言われます。
そしてこれからも放送は無いと言い、もうマックスにテープは見せないと言い出します。
どういうことか尋ねるマックスでしたが、ハーランがドアをノックするとバリーが現れます。
彼等はグルでビデオドロームは放送されていなかったのです。
マックスを巻き込むため、ハーランはバリーが用意したテープを見せていたのでした。

彼等は世界情勢が厳しい中、北米は弱くなり堕落している!TV局はその象徴だ!と言い、マックスの局でビデオドロームを流すよう言います。
マックスが断ろうとすると、バリーは手にビデオテープを持ち、それは呼吸しているように歪みます。
バリーのテープと呼応するようにマックスの腹部の亀裂が開かれ、バリーはテープをマックスの腹部に差し込みます。
バリーとハーランは去り、マックスの頭の中には「仲間を殺してマックスの局を我々によこせ。」と言う声がこだまします。

マックスは何とかビデオテープを取り出そうとしますが、出てきたものは拳銃でした。
拳銃は生きているかのように突起を伸ばして彼の身体に突き刺し、マックスの手と同化します。

感想

これは面白いです。怖いんですが、訳がわかりません。
見るの3回目だったような気がするのですが、内容忘れていたのでほとんど初見気分でした。

見る人によってはなんじゃこりゃつまらんとなってしまう映画だと思います。
だっていつもながら話の持って行き方が強引なんだもん。
ラストまでぐいぐい引っ張られていきます。
後半はアクション映画っぽくなりますね。

これ役者さんは演技大変だったと思います。TVを鞭で叩いたりとか普通考えられないですよね。
特殊効果も凄いと思います。

私はこの映画は好きです。何度でも見たくなるような映画ではないですが、忘れた頃にまた見ると思います。

ラストまで(ネタバレ)

マックスはラボから出て、社内に上がります。
誰もがマックスに挨拶しますが、彼は聞こえていないかのように歩き続けます。
マックスは秘書にモーゼスの居場所を尋ねると、そこへ向かいます。
彼はモーゼスとレイフを拳銃で射殺します。モーゼスとレイフは会社の管理職でした。
銃声を聞いた秘書はマックス達が何者かに襲われたと思い、マックスを匿いますが、彼は銃を腹に隠したまま逃走してしまいました。

彼が拳銃を取り出すと、普通の拳銃に戻っていました。彼はポケットに拳銃を隠してビアンカの元へ向かいます。
マックスの頭の中には「ビアンカを殺せ。」と言う声が響いていました。
彼は裏口からガラスを破って伝道所に侵入しました。

ビアンカが現れたのでマックスは彼女に話しかけます。
ビアンカはこうなることはわかっていたようで、マックスをビデオドロームの殺し屋だと言います。
マックスは再び手と同化した銃を構え、ビアンカを狙います。
彼がビアンカを追い詰めたと思い、カーテンをまくるとそこにはニッキーが殺害される様子がTVに映し出されていました。
ビアンカはニッキーも殺されたと言います。
その後、マックスと同じように拳銃を構えた手がTVから人の皮を被ったように伸びてきました。
拳銃を構えた手はマックスに発砲し、マックスは倒れ、TV画面からは血が流れます。

マックスが再び立ち上がった時には洗脳が解けていました。
ビアンカはマックスはビデオ人間として生まれ変わったと告げ、ビデオドロームを破壊するように言います。
マックスは「ビデオドロームに死を!」と復唱します。

マックスは敵の本拠地であるスペクタキュラー・オプチカルへ向かいました。
TVではマックスの社で起きた殺人事件について報道しており、マックスは容疑者として手配されています。
ハーランの姿を見たマックスは店員の目を盗み、店の奥に侵入します。
ハーランはマックスの洗脳が解けたことを知らず、仲間のように接します。バリーは見本市の準備で不在でした。
ハーランはマックスの腹部に新しいテープを差し込みますが、腹部の亀裂に手を噛まれ、爆弾を差し込まれます。
爆弾は爆発し、ハーランは死亡します。マックスは爆発で壁に空いた穴から店を出ます。
マックスは次にバリーを倒すため、見本市会場へと向かいました。
凄い次元の戦いです。なんだかバトル漫画みたいになってきました。

見本市会場に潜り込んだマックスは周囲の様子を窺います。
ステージの様子がコミカルで笑いを誘います。

マックスはバリーがステージで司会を始めたタイミングを狙って、ステージに上がりバリーを撃ちます。
バリーは続けざまに撃たれ倒れ、身体から何かが出てきて異形の生物のようになって息絶えます。
マックスはマイクを手に「ビデオドロームに死を!」と叫ぶと平然と会場を去ります。

マックスは線路を歩き、立ち入り禁止の港に侵入します。
接収船に乗り込んだ彼は疲れ切り、船室にしゃがみ込みます。
マックスの前にTV画面が現れ、ニッキーが映し出されます。
彼女はビデオドロームはまだ破壊されていない、マックスの肉体を最終変化させなければ。と言います。
マックスはニッキーにどうすればいいか尋ねると、現在の肉体を破壊しろと言われます。
TVにはマックスの姿が映り、「新人類に栄光あれ」と言うと銃を頭に突き付け自害します。
同時にブラウン管が爆発し、内臓が飛び散ります。

マックスは意を決したように銃をこめかみに当てると「永遠なれ」とつぶやいて発砲します。

エンドロールで終了です。

切ない最後ですが、他に選びようがないですよね。
マックスは巻き込まれたわけですが、自分から刺激を求めていたので、彼にも責任はあるかと思いました。

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