上司の行方を追っていたら怒涛の展開に 蛇のひと

蛇のひと

同僚捜してひどい目に遭う話

制作年 2010年
制作国 日本
監督 森淳一
脚本 三好晶子
上映時間 102分
出演
永作博美
西島秀俊
板尾創路

だいたいのあらすじ

三辺陽子(永作博美)が一人オフィスに残って口笛を吹きながら残業していると課長の今西(西島秀俊)が戻ってきて、「夜口笛吹くと蛇出るぞ」と説教しました。

翌日、三辺が出勤すると伊東部長が自殺したと大騒ぎになっていたのですが、なぜか今西も来ていませんでした。
上司から今西を迎えに行くよう指示された彼女が今西家のドアをノックしていた所、隣人だという男性(劇団ひとり)から留守だと知らされます。
今西は漫画家志望だという隣人の相談に乗っているそうで、誰も褒めてくれない漫画を唯一褒めてくれるのだそうです。
三辺は今西が以前に「漫画は苦手で活字も読まない」と話していたのを思い出しておやっと思ったのですが、どうやら今西は漫画というより、大会社を辞めて漫画家を目指す隣人の姿勢を褒めたようです。

その後、今西の行方は分からないまま伊東部長(國村隼)の通夜を迎えたのですが、伊東の妻(石野真子)は伊東がいつも今西のことをとても優秀だと話していたと三辺に打ち明けました。
確かに職場では今西が優秀なので伊東は置物のようになっているシーンもあったのですが、今西は「俺の成功も部長が信頼関係を築いているから」とフォローまでしていました。

その後、三辺は勤務中にいきなり副社長室に呼び出されるのですが、ものものしい雰囲気の中で告げられたのは今西が会社の資金を1億横領しており。伊東はその証拠を握っていたという衝撃の内容でした。
三辺は今西の営業事務だったこともあり、社内では誰よりも彼のことを知っている筈という理由で今西の捜索を命じられました。
ひとまず次席に戻った三辺は「今西課長は入院されています。」と発表し、他の事務員に指示を出しました。

そして今西のデスクを漁っていた三辺は車のキーを発見したのですが、後輩の田中(田中圭)が地下に停めている今西の車のキーだと教えてくれました。
彼の案内で駐車場に行くと凄いスポーツカーが停まっていたのですが、後輩によればこの車は6千万するそうで、今西はキャッシュで購入したのだそうです。
車の中を物色した三辺はダッシュボードから河合のりこなる保険屋っぽい女性の名刺を見つけました。

早速、河合(ふせえり)と待ち合わせた三辺は話を聞いたのですが、河合は今西を口説こうと必死になったのですが、彼はいつも上の空で失敗に終わったのだそうです。
河合は今西の昔の同僚だという人物の連絡先を教えてくれた後に引き揚げたのですが、三辺は窓ガラスに一瞬、今西の姿を目撃した気がしました。
その後、今西の昔の同僚(勝村政信)の自宅マンションを訪ねた三辺は、今西の後押しと情報によりこの部屋をゲットできたのだと話しました。
しかしマンションを買った方が夫婦幸せに暮らせるという今西の意図は外れ、同僚と妻(佐津川愛美)はローンを払うために働き詰めになってまい、すれ違いが多くなったようでした。

尚、今西は殆ど人と交流が無かったようで、他の連絡先をゲットすることはできませんでした。
複雑な気持ちでマンションから引き上げ、豊洲の町を歩いていた三辺は再び今西らしき人物の後ろ姿を目撃しました。
しかしそれは田中で「何してんのよ!」と問い詰めると彼は「今西が横領したなら三辺もヤバいかもしれない」と総務部長から監視するように命じられたと白状しました。
ということで三辺は田中も調査に同行させることにしました。

調べれば調べるほど今西という人間は良い人なのかそれともいい人を表面的に装って本音を隠している人物なのか三辺には分らなくなってきました。

その後、三辺達は今西の先輩で塾講師である原田を訪ねました。
その際に事務員の女性から今西が以前この塾で事務をしていた件、原田が教え子と不倫していた事件を今西がうまく揉み消した件を聞きました。
原田(北村有起哉)の妻(奥貫薫)は講義中に刃物を持って教室に押し入り、不倫相手の生徒を殺そうとして今西に泊められていたということです。
どちらとも別れられないとグズグズいう原田を見兼ねて今西は「三人で一緒に暮らしたらどうか」と凄い提案をします。
ちょっと無い発想ですよね。
そして原田家ではこの奇妙な同居が5年間続いているのだそうです。

三辺は今度は原田の自宅を訪ね、話を聞くことにしました。
原田も今西の知り合いは全く知らなかったのですが、今西は小学生の頃に家族を亡くして展開孤独であること、家族は無くとも家は残っていることを教えてくれました。
尚、原田は妻とも愛人ともセックスレス状態になってしまい、なんだか流された感じに生きているということでした。

三辺は今西が関わった人間は微妙に不幸になっている気がしてきて、田中もそれにやや同意しました。
その一方で田中は「今西さんは皆が好きだから悪気はなく良い方向に導こうとして失敗してるのでは?でも不幸になることもも計算済みだったらちょっと怖い」と言うのでした。
一部では今西が伊東を殺害したのではないかと言われていたのですが、「流石にそれは無い」と言うのが現在までの三辺と田中の結論でした。

尚、三辺には婚約者がいるのですが、この所は今西追跡で多忙なので彼とも会えていないのでした。

後日、三辺は再び副社長室に呼ばれたのですが、伊東の妻が1億円を詰めたバッグを手に「主人が横領したお金を返します」と持参していました。
伊東は会社の資金を横領してその罪を今西に擦り付けようとしていました。
今西は調査会社を立ち入らせてそれを察知して内密に伊東家を訪ね、伊東に「どうしてこんなことしたんですか。ちょっとショックですわ」と詰め寄りました。
伊東は「お前は俺がお前に罪を着せるの承知で第三者を会社に入れたのだ」と逆に彼を非難し、「抜け目なく良くできて、優しい顔して人のプライドをズタズタにする所が大嫌いだ」とブチ撒けます。

伊東は「いつかお前の前に這いつくばる日が来るとずっと思っていた」と言い、今西は「死んだ兄にも同じことを言われた」と涙を浮かべます。
そして今西は「じゃあ、僕が横領犯として逃げます」と罪を被ろうとします。
今西は自分がなんとなく生きているだけで兄が苦しんでいたことをずっと悔やんでおり、その贖罪に伊東の罪を被るのだと言います。
「なぜ俺なんだ?」と問う伊東に今西は「友人や身内もおらず、人間関係を築けるのは会社だけ」と返答しました。

伊東の妻は話を聞いていたので「そんなのダメです」と今西を制止したのですが、彼はそれを振り切って去りました。
その深夜、伊東は耐え切れずに自殺してしまいました。
今西がキレていればこうはならなかったでしょうね。自分が陥れた人間に親切にされて恥ずかしくなったんでしょう。
会社としては都合よく今西には復帰してもらい、またバリバリ働いて欲しいということで、三辺は引き続き今西を追うように命じられました。
三辺は本当に今西は良い人なのだろうか?と疑問を抱きつつ、単独で大阪へと旅発ちました。
今西の実家は義太夫をしていたということなので、三辺が早速義太夫会館で実家の住所を問い合わせました。
そして三辺は今西の実家に到着したものの、家は売りに出されており、人の気配はありませんでした。

家の前では今西の知り合いらしき男(板尾創路)が事務局から聞いたと待っており、「おいで」と三辺を自分の家に案内し、招き入れました。
男はなんと今西の実の母だという認知症の老婆と暮らしており、三辺に今西の過去を語り始めました。

今西の父は義太夫の師匠でこの付近では名士の一人であり、この男も内弟子の一人だったそうです。
今西は妾の子だったのですが、正妻の息子である兄のカズオより義太夫の才能があり、跡取り候補とされていました。
それからカズオ達兄弟子が今西を虐めるようになり、正妻である義母も何かと彼のことを虐め、雑用でこき使っていたのですが、父は見て見ぬ振りをしていました。
今西はそんな虐めにもじっと耐え、唯一の楽しみと言えば幼いころ父に貰った万華鏡を眺めるだけでした。

しかしカズオはそのことを知り、今西の万華鏡を捨ててしまいました。
それから今西の義太夫の才能はがくんと落ち、父は彼を相手しなくなり、虐めも止みました。
逆にカズオは「芸が無くなったら追い出されるのでは…」と怯えている今西に「いずれこの家は俺が継ぐからそんなことはさせない。俺が後ろ盾になってやる」と彼を庇うのでした。
また、今西が三辺に言っていた「夜口笛を吹くと蛇が出る」というのはカズオから教わった言い伝えでした。

そしていよいよカズオの初公演が行われることになりました。

感想

これはなかなか面白いです。
上司である今西を追いかけていたら意外なことが分かってきて…という内容です。
凄くいい人そうな今西の行動に段々と陰りが見え始め、後半で重要人物である内弟子が登場して彼の人間性が明らかになるという流れです。
会話シーンも面白いし、なかなかの面白さです。
結末もなかなかの面白さで飽きずに最後まで観られます。
ただ、私の理解力が低いのか今西があの場所に潜伏していた最終目的が読み取れませんでした。
もしかしたら三辺は何かを未然に防いでいたんでしょうか?

サイコ系の話なのですが、全体的にゆるい感じなのであまりヤバいシーンは無いです。
ショッキングシーンは伊東の首吊りシーン位でしょうか。

これ三辺の人はなかなかマッチしてる気します。
今西が素敵なのは言うまでも無いのですが、後輩の田中くんが素敵です。

ラストまでのあらすじ

今西はカズオの付き人として付き添い、緊張しているカズオから開演時間になったら知らせてくれと言われていたのですが、時間になってもカズオに知らせず、しれっと自分が舞台に上がってしまいました。
今西はその演目を完璧に演じ、父もそれ故か演技に熱が入り、舞台袖で見ていた内弟子の男も今まで観た中で最高の語りだったと感じたそうです。
急いで駆け付けたカズオも舞台袖でそれを放心して観ているしかありませんでした。

盛大な拍手の後に幕が下り、内弟子男は急いで今西の下に駆け付け「カズオさんに謝った方がいい」と騒いだのですが、今西は「謝ってどうなるものでもない」と堂々としており、「このホールの近くに実の母が住んでいるから一緒に会いに行くか?」と混ぜ返すのでした。
そして内弟子男を連れて母(遠山景織子)の家に飛び込んだ今西は「俺、破門になるから一緒に謝りに行ってくれ」的なことをいきなり頼みました。
今西は「俺は産まれたくて妾の子に産まれた訳じゃないし、他の芸者ももっとちゃんとしてる。破門の時くらい同行してくれ」的に言い放ち、母を同行して父の家に行くことになります。

内弟子はそんな今西の母が気の毒で今西に対して腹が立ったのですが、その反面でこれから今西がしでかすことの一部始終を見てみたいという欲求にも駆られていたそうです。
そして家の中ではカズオが他の内弟子や両親を殺害して今西を待っていました。
カズオは今西によって自分が無かったことにされてしまったことに耐え切れず、「お前の望み通りにしたるわ」と自ら頸動脈を切って自殺しました。
内弟子は「お前の所為でこうなったんだぞ。なんとも思わないのか」と詰め寄ったのですが、今西は平然と「予想通り」と流すのでした。

そして今西は外の雪を眺めて「雪はええなあ。全てを綺麗にしてくれる」と呟き、倒れている母を内弟子に託して姿を消したそうです。
当時のことを回想しながら内弟子は「最初は復讐のつもりだったのだろうが、段々と人を口車に乗せて操って殺すのが楽しくなったんだろう」と推論を述べました。
三辺はそれを聞いて今までに色々な人に聞いた今西の言動を振り返り、その言葉の裏に隠された今西の真意を知って恐ろしくなるのでした。

その後、帰宅した三辺が今西が自分に好意を寄せていたのではないかと思い立ち、彼のスポーツカーを拝借してどこかに出かけました。
彼女は自分の婚約者に危害が及ぶのでは?と考えたようで、向かったのは婚約者が住んでいる港町の工場でした。
婚約者(ムロツヨシ)は無事で、突然現れた三辺に驚きながらも特に変わったことは無いと話していましたが、なんと工場には今西が勤務していました。
なんとなく三辺は今西と外に出て話をすることになりました。

三辺の結婚観について話していた今西は「表面では笑顔を浮かべながら腹の中では何を考えているのか分からない。病気だ」と三辺を批判しつつ「俺も病気だから止められられない」と呟きました。
三辺は今西に「口笛を吹くと蛇が出る」と言われた件は「心の中の蛇が出るってことだったんですね」と思い返しつつ、「私の中にも誰の心の中にも蛇がいる。でも好きな人の幸せは願うはず」的なことを言いました。
「スポーツカーで一緒に帰ろう」と言う三辺に今西は「俺は人殺してんねんで。これからも殺すかもしれんぞ」と返答し、三辺はそれに対して「私が見張ります。一生見張ります」と返しました。
三辺も今西に好意を持っていたんですね。

今西は「アホな事を言うな。君も頭冷やしてはよ寝なさい」と三辺に告げ、工場の制服を脱ぎ捨ててスポーツカーで去りました。
彼が向かったのは港で、しっかりとシートベルトを締めた彼は埠頭に向かってアクセルを踏みました。
しかし直前でダッシュボードに貼ってある「大阪のお土産です」というメモに気付いて急ブレーキを踏みました。
そこに入っていたのはカズオが庭に投げ捨てたのと同型の万華鏡で、今西は早速覗きながら「これで見るとなんでも綺麗に見える」と内弟子と話していた件を思い出しました。

後日、田中と食事を採っていた三辺は今西の隣人だった漫画家が新人賞を取ったことを知りました。
「今西さんが唯一幸せにした人ですね」という田中に三辺は「今西さんは関係ない。本人の努力でしょ」と返すのでした。
そして夜の路上を口笛を吹きながら歩く三辺をバックにエンドロールが流れ、高速の高架下で立ち止まった三辺は今西と同型の万華鏡を取り出して眺め、その美しい世界に感嘆するのでした。

終了です。

なかなか解釈が難しい話ですが、最後に今西が去って行ったのも彼が珍しく見せた優しさだったような気がします。
「好きな人は傷つけない」という三辺の台詞に対応してるのかな?と思いました。
そう考えると三辺は今西に操られなかった数少ない人物ということになりそうです。
これとは逆に三辺が今西の口車に乗ってしまったと捉えることもできるのかな?と思いましたが、劇中の三辺の行動から判断して無さそうなのと、この解釈でも今西は最後に優しさを見せたという点で落ち着く気がしました。

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