お父さんクズすぎ… 葛城事件

葛城事件

俺が一体、何をした。

制作年 2016年
制作国 日本
監督 赤堀雅秋
脚本 赤堀雅秋
上映時間 120分
出演
三浦友和
南果歩
新井浩文

だいたいのあらすじ

葛城清(三浦友和)はバラが咲いたをボソボソと口ずさみつつ、自宅の外壁と塀に書かれた「しね」、「人殺し」等の文字をペンキで消しました。
そして清は庭にあったミカンをもいで匂いを嗅ぎました。
尚、葛城の次男・稔(若葉竜也)は凶悪犯罪を犯して死刑宣告されていました。

客人である星野順子(田中麗奈)に「電話に出ないのか?」と質問され、清は嫌がらせ電話が多くて出たくないというのが本音なのでしょうが、「相手の呼び出しには応じず、待つことが大事。それができないから日本は国際社会に後れを取る」等とのたまっていました。
そして清はマスコミ等への不満を愚痴るのですが、星野は「今、正に私もその状態です」と返しました。
実は星野は日本の死刑制度に反対する立場であり、稔と獄中婚で夫婦になっていました。

星野は死刑宣告された時にヘラヘラと笑っていたような稔に対しての「人間らしい気持ちを与え、家族として過ごしたい」的な気持ちを清に表明したのですが、「お前みたいなしょんべん臭い姉ちゃんに俺がどんな思いで家族を守って来たかわかるか!」と一蹴されてしまいました。
しかし、稔と結婚した所為で星野は実の家族から縁を切られており、彼女の想いは本当のようでした。

その後、稔と面会して差し入れのワッフルを差し出した星野でしたが、「今後は現金で」と依頼され、「家族なんだからざっくばらんに話そう。陰湿なのは日本人の悪い癖」と清っぽいことを稔はのたまうのでした。
稔は威圧的に「これでもかなり我慢してるから6万円差し入れろ」と言い出し、甘い物よりはしょっぱい物、缶コーヒーは甘いやつと細かい注文をつけ、「俺の家族になりたかったらちゃんと聞いとけ」と上から目線で怒鳴るのでした。
稔は言うだけ言って引き揚げようとしたのですが、星野は「ちょっとずつでもいいから本当の家族になりたいと思ってます」と打ち明けました。

過去パート

清は妻の伸子(南果歩)、長男の保(新井浩文)、次男の稔と4人で暮らしていました。
保はエリートでそろそろ家を出ることになっていたのですが、稔はアルバイトも長続きしなかったので清にいつも怒鳴られていました。
清は親から継いだ金物店を営んで生計を立てていたのですが、稔はそんな清だけには自分の事をとやかく言われたくないと考えていました。
稔は稔で「今はいい大学を出て終身雇用とか時代遅れ。俺は自分探し中」等と伸子にのたまっていました。
こういう人がまともになったのは殆ど見たことないのですが、どうしてこうなったんでしょう。

現在パート

清はカラオケスナックで呑んでいたので星野も同行し、デュエット曲を一人でグダグダと歌っていました。
見兼ねた星野が「一緒に歌いましょうか?」と声を掛けたのですが、清は「偽善者面するな!そんなのお前の自己満足だろ」的に頭ごなしに怒鳴るのでした。
星野は稔の話を聞かせて欲しいと懇願し、「お前はどこの新興宗教だ!」等と怒鳴っていた清も根負けしたのか席に着きます。
しかし他の客から「自分の立場をわきまえろ」、「呑気に呑んでんじゃねえ」と罵られたので清は物を投げつけて店を後にしました。

その帰り道、清は子供の頃に二人の息子に勉強を教え、保は勤勉だったが稔はサボり魔だったと星野に話します。
そして清は「俺はやるべきことはやってきたんだ」と星野に言いました。
まるで自分に言い聞かせてるようにも聞こえるのですが

過去パート

清はかなり横暴な性格であり、保の結婚記念日に奥さん側の両親も招き、馴染みの中華料理店に招待したのですが、その店でも猛烈なクレームを入れて「オーナー呼んで来い」と大騒ぎして場の空気を凍り付かせていました。
更になんの断りもなく妊婦である保の妻の前でタバコを吸い出し、「早く一軒家買え」とか保に説教し始めるのでした。
その間は保の長男を伸子に預けていたのですが、伸子は孫の面倒を見ていなかったので、孫は目の付近を切ってしまいました。

当然保の妻はブチ切れ、伸子は「追いかけっこしていたら倒れて…」と要領を得ませんでした。
やがて稔が現れて「おれがなぐった」とメモを書いて保に渡しました。
保は「お前は早く働け」と言うだけだったので、稔は「このガキお前にそっくりだったから殴った。見下してんじゃねえ」と怒鳴りました。
なぜか清は伸子を殴りつけ「お前が稔の教育ちゃんとしないからだろ」と怒鳴りつけて出て行きました。
清は色んなことから目を背けてますよね。

現在パート

星野は稔の面会に行き、清が面会に来ても断っていると明かします。
そして稔は「いつまで続けんの?こんなこと。面倒なんですけど」と星野を拒絶する姿勢を見せ、「オッパイ見せろ」と要求したのですが、そこで時間切れとなりました。
ミッドナイトなんちゃらでそんなシーンありましたね。

過去パート

清は夜中に目が覚めて通りを眺めていたのですが、ゴミ捨て場が放火されたのか燃えていました。
表に飛び出そうとしたのですが、同時に稔が家に飛び込んで来ました。
稔はコンビニに行ったと言うので清はそれ以上追求しませんでした。
不安を感じた清は伸子の身体を求めたのですが、激しく拒絶され「私、あなたのこと嫌い。元々好きじゃなかった」と告げられました。

伸子は家出してしまい、実は仕事が上手くいっていない保は金物屋を訪ね、いつも清が座っている席に座って外を見ました。
棚に囲まれているせいか大変に視界が狭くなっていて、通りの一部しか見えなかったのですが、保が冗談めかして「この店継ごうかな」と言うと清は全力で「ダメだ」と拒否するのでした。
保は以前の職場を解雇されてから再就職先を探していたのですが、病んできたのか面談もまともに出来ず、なかなか仕事が決まりませんでした。
その事実を妻には言い出せないらしく、普通に朝家を出て、公園で時間を潰していました。

その後、保は伸子が稔と一緒にアパートで暮らしていると知って清に知らせました。
そして保は稔と伸子に「もうすぐ親父が来る」と知らせたのですが、完全に壊れている伸子は保の話を聞いておらず「お腹すいてない?なんかとろうか」等とのたまうのでした。
伸子は保にラーメンを勧めつつ「今日が世界の終りで最後の晩餐なら何食べたい?」と聞き、自分はちらし寿司が食べたいと言いました。

そして稔はうな重が食べたいと答えました。
清といるより幸せそうな気がします。
私なら握り寿司かなあ?

やがて清が現れて「ボロいアパートだなあ」と新婚当時の話をし始め、おもむろに稔を蹴り倒してボコボコにしました。
そしてキッチンから包丁を持ち出し、稔を刺そうとしたので伸子は「家に帰るからもうやめて」と止めました。
稔は立ち尽くして何もしなかった保に「俺が死ねばいいと思ってただろ」とツッコみ「まだ生きなきゃいけないのかよ」と嘆きました。

その後、追い詰められた保はいつものように家を出て最後に止めていたタバコを一服した後に以前の勤務先の付近で飛び降り自殺をしてしまいました。
近所の人達は保が数か月前からリストラされていた件等を噂していたのですが、あくまでも清は事故として扱っており、「変な噂を流すと名誉棄損で訴える」とかのたまっていました。
伸子は完全に壊れたのか保の葬儀の際に「女性の背中にカナブンがとまっていた」とオチを言ってから「ボタンが動いてびっくりした!何だったんだと思う?カナブンだったの」と話して爆笑して周囲をドン引きさせていました。

葬儀の際にも清は勝手に高価な棺を発注して保妻の実家に迷惑を掛けていました。
そして清はコンビニのレシートの裏に「申し訳ない」と書いてある保の遺書を受け取ったのですが、「捨ててください」と突き返していました。
伸子はヘラヘラとトイレに行き、保の妻に仁王立ちで行く手を塞がれたので「なんで保の会社の事分かってあげなかったの?家族でしょ?あなたの責任よ」と責任転嫁します。
保妻は「こうなった原因も知ってたんでしょ!」と逆に伸子を糾弾したのですが、伸子はそれには返答しませんでした。

そして稔は保の遺影に向かって「俺は一発逆転狙うから」と宣言していました。

現在パート

星野は完全に廃人風になって療養している伸子を訪ね、「死刑は人間の尊厳を否定する制度。私は彼の人間性を否定せず全力で愛します。」と告げました。
いままで清に話を聞いていた星野は稔が誰にも愛されていなかったことに気付いたのか「私が全力で愛せば彼はきっと心を入れ替えます。なぜならば彼の周りにはそのような人間が居なかった」とキレ気味に怒鳴りました。
星野の言うことも尤もだと思うんです。
でも起こったことに対してキレるのは間違ってます。現に稔が事件を起こした際に星野は側にいたでしょうか?
星野は現在の自分の行動に誇りを持っていればいいのです。

伸子は星野の言うことはセミの鳴き声程度にしか響いておらず、「扇風機を停めて。ずっとあたってると死んじゃうから」と車椅子で屋外にいるという自分の状況さえ理解できていないようでした。

過去パート

稔は通販で刃渡り20㎝程度のサバイバルナイフを購入し、都会に向かって出発しました。
伸子はコンビニ弁当を食べながら「行ってらっしゃい」と稔を送り出しました。

感想

これは怖いです。
家族が死刑囚になってしまったという内容です。
サスペンスか何かかと思っていたら完全にヒューマンドラマでした。
冒頭に獄中婚したという怪しい女性・星野順子が現れ、この人がなんかするのかなあと思ってたら違いました。
むしろ星野はまともで親父がヤバかったという。
観ている側としては稔の事件の原因等について答え合わせをする感じです。

流れとしては現在の状況を星野が中心に進行してくれる感じで、その間に過去の出来事が見せられます。
この過去の内容も恐らく星野には共有されてるかもしくは彼女は調べたことのような気がします。

どうも犯罪を犯すのは家庭環境も大きいよということみたいです。
なかなかシビアな内容なので、子を持つ親にはお勧めしたい気がします。
清のような人がリアルで居ると思われ、私もこういう人見たことあります。
このおっさんの恐ろしい所は自分のヤバさを分かってない点だと思います。
「俺が一体何をした」という彼の台詞が全てを物語っているのだと感じました。

清は気付いていないかもしれませんが、かなり稔と清は性格が似ている気がします。
根拠の無い自己肯定というか自意識過剰というかそういう点が非常に似ています。
清が保を「ネクタイ締めたエリートにしたい」と言っており、稔が保に対して「自分を見下してる」と言っていたように、自己肯定だけではカバーできないコンプレックスも多少はあるみたいです。
この二人の差は「運」でしかないように私には思われ、ベクトルが外に向いたのが稔で内に向いてるのが清なのではないかと思いました。

そして清は「家族のために」と口にしていますが、実は全て自分のためだと思います。
彼は美しい妻に子供という家族をゲットしてその中でささやかな自分の王国を築きたかっただけでしょう。
稔に関して言えば清が二人いても激突しかないと思われますので、家を出た方が良かったんでしょうね。
一応アルバイト等はしていたようですが、もう少し外の世界に揉まれれば犯罪は犯さなかったと思います。
稔にとっては星野のような人間が早めに現れればよかったのかもしれませんが、普通に暮らしていればその確率は低そうで、幸せかどうかは微妙な気がしますが。

そんな中で保は父親に対しては何も言えなくなり、妻にも何も相談できない人間になってしまいました。
どうも保は自分を表現することができない人間になってしまったのですが、妻に相談しなかった理由がよくわかりませんでした。
確かに奥さんは育児に凄く忙しそうだったんですけど、普通の人だったので助けを求めれば何とかなった気が…
その前に清の所為で奥さんの実家とは気まずい感じになってるとは思いますが、いざという時は娘のためなので多少は援助してくれるのでは?
もしかすると保自身も失業したら稔のように扱われることを恐れていたのかもしれませんね。

親というものは自分の産んだ子供に対しては一生責任を持たないといけないんだなあ、軽い気持ちで産むもんではないんだなあと感じました。
私に子供が授かることがあれば、きっと家族には色んな逃げ道を与えてあげないとダメなんだろなあとも考えました。

この作品は役者さんの演技は皆さん凄いのですが、清は特に凄かったです。
この映画を観て三浦友和さんという人は凄い役者なんだなあと感じました。

ラストまでのあらすじ

稔はハンバーガーを齧りながら街中をうろつき、地下鉄駅の構内に移動しました。
そしてナイフを出して高校生のグループを刺したのを皮切りに周囲の人に向けてナイフを振り回します。
主婦風の女性、老人や若い女性が次々に犠牲になって刺され、人々は散り散りに退散しました。

現在パート

相変わらず清はカラオケスナックに入り浸っており、星野が向かい合って座っていました。
他の客が入り口で溜まっていたので清は「俺が土下座でもすれば満足か!俺も被害者なんだよ!俺が一体何をした!」と怒鳴ります。
清は更に「国があいつを殺すんだ。その制度を容認しているあんたらが稔を殺すんだ!」と怒鳴り、「あいつが死んだら造機移植でもなんでも利用してもらい、脳は研究用にでもすればいい!どうかその辺でご容赦いただけないだろうか!」と土下座しました。

客は白けて帰ってしまい、ママはとうとう清に出入り禁止を告げました。
清はマイホームを建てた頃のこと、庭に子供達の健康を祈ってミカンの苗を植えた件等を回想していました。
その頃から保には期待をかけていたようで、店は自分の代で終え、保にはパリッとしたスーツを着たエリートになって欲しいと願っていたようです。

その帰り道、清は星野に「あいつを死刑にしないでくれ。このままでは奴の望んだ方向になってしまう。もっと生きて苦しませるのが一番の罰だ」と依頼しました。
星野は過程こそ違うものの清が自分と同じ方向性に向かったことに戸惑います。

稔と面会した星野は稔から早期執行の申請に入ったことを聞かされます。
星野は「独房は暑いですか?」と切り出し、かつて自分は冷房も無い部屋で玉のような汗をかきながら恋人と愛し合った話をします。
そして星野は「暑いのも寒いのも無駄じゃないです。私は稔さんに生きていて欲しい」的に訴えました。
しかし稔は「自分は謝罪もしないし悪いことをしたと思っていない。これは事故」的に返答したので星野は言葉を失います。
更に稔は「10代で間違った自己顕示欲を身に着けて何も努力もせず、30代で狂った男」的に自虐し始めるのでした。
そして稔は「それじゃま、さようなら」と去りました。

その後、星野は拘置所の職員から「今朝、早く逝きました」と突然稔の刑が執行されたことを知らされました。
星野はその件を清に伝えに行ったのですが、清は家族への伝言がなかったと知らされました。
そして星野はお暇しようとしたのですが、なんと清は星野をレイプしようとし、「俺が三人殺したら家族になってくれるのか」ととんでもないことを言い出します。
星野は「あなたはそれでも人間ですか!」と一喝して引き揚げました。

清は居もしない家族の名前を叫んだ後に家具家電を滅茶苦茶に壊し、庭のミカンの木に掃除機のコードを掛けて首吊りしました。
しかし枝が弱かった所為で折れてしまい、自殺は叶いませんでした。
清は何事も無かったように家に戻り、先ほど食べ残したそうめんを啜るのでした。

エンドロールで終了です。

皮肉にも清が言っていた「生きて苦しむ」というのが自分に返って来ちゃいましたね。
でも清は反省はしないと思います。
それが最後に麺を啜ってるシーンに現れているような気がして、これからも自分は被害者であると考えるのでしょう。

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