ハーフゾンビの話 ディストピア パンドラの少女

ディストピア パンドラの少女

ハイブリッド研究してたらひどい目に遭う話

制作年 2016年
制作国 イギリス/アメリカ
監督 コーム・マッカーシー
脚本 マイク・ケアリー
原作 マイク・ケアリー
上映時間 111分
出演
ジェマ・アータートン
パディ・コンシダイン
グレン・クローズ

だいたいのあらすじ

車椅子に乗せられて手足と頭部をガッチリとベルトで固定された子供達が軍人達に運ばれ、殺風景な金属でできた部屋に集められました。
間もなく教壇のような部分にはクールなセルカーク(アナマリア・マリンカ)が現れて元素記号の問題を出し始めます。
彼等は知能が高いようなのですが、中でもメラニー(セニア・ナニュア)という少女は群を抜いて優秀なようです。
そしてセルカークと交代でヘレン(ジェマ・アータートン)が現れ、彼等にせがまれてギリシャ神話の話をします。
丁度話はパンドラの箱の所だったので、ヘレンは希望について話したのですが、メラニー達はここの暮らしに満足しており、不満等はないらしいです。

四六時中兵士の監視を受け、刑務所よりも狭い個室に監禁され、与えられる食事と言えばドアの隙間から差し出される虫の入った皿だけなのですが、彼等は満足しているようです。
コールドウェル博士(グレン・クローズ)はメラニーの高い知能に興味を持ち、問題を出しては解かせていました。
彼女はメラニーに20以下で好きな数を選ぶよう指示するとメラニーは「13」と即答しました。

朝になると兵士が来て「起きろ!クズども!移動だ!ぐずぐずするな」と少年少女を教室へと運びます。
その朝、13の番号に当たる仲間がいなくなっており、ヘレンは「お休みなの」と言葉を濁します。
ヘレンは彼等の拘束を解き、「自分でお話しを作ってみましょう」と鉛筆でお話しを書かせます。
メラニーが書いた話は「ギリシャで美しい女が怪物に襲われ、絶対絶命の時に少女が現れて彼女を助ける」という内容でした。
少女は無敵なのですが実は弱点があるそうで、女は「少女にあなたは特別な子だからずっと一緒」と末永く一緒に暮らしたということでした。

ヘレンは思わず涙を浮かべ、メラニーの頭を撫でるのですが、兵士達のリーダーであるパークス軍曹(パディ・コンシダイン)が「触るな!何してんだ!」と怒鳴り込んできました。
パークスが腕に唾を付けて塗っていたジェルを落とし、少年の前に差し出すと、少年は手を伸ばして歯をカチカチ鳴らし始めます。
そして少年の列にいた他の少年少女も彼に呼応して歯をカチカチと鳴らすのでした。
授業が終わり、少年少女は部屋に戻されたのですが、メラニーは「あんたなんか悪魔が一杯の部屋に押し込まれればいい」と悪態を吐いたので、拘束を解いてもらえませんでした。

その後、ヘレンがメラニーに気付いて拘束を解こうとしたのですが、ジェルを塗っていなかったのでメラニーは歯をカチカチ鳴らし、「早く出て行って」と指示しました。
その後、コールドウェルが番号を選びをさせに来たのですが、メラニーは自分が選んだ番号の子が消えると気付いていたので「4」と自分の番号を告げました。
翌朝、メラニーは教室ではなく地上にある施設へとパークスに連行されました。

基地の周辺のフェンスにはゾンビっぽいのが集まっており、フェンスの一部が破られたと大騒ぎになっていました。
メラニーはセルカークとコールドウェルが待ち構えていた研究室で解剖されることになったのですが、そこにヘレンが「もう我慢できない」と飛び込んで来ました。
コールドウェルは「メラニーはワクチン開発に必要」とヘレンを宥める振りをしてスプレーを吹きかけ、兵士を呼んで連行させました。
しかし施設内にゾンビが侵入してセルカークは噛まれてゾンビ化し、コールドウェルも負傷して逃げ出しました。

メラニーは不思議なことにゾンビには襲われず、自力で拘束を解いて脱出します。
外に飛び出したメラニーは兵士に捕らえられているヘレンを発見し、兵士の首筋に噛みついて彼女を助けました。
周囲は既にゾンビに囲まれて絶対絶命だったのですが、そこにパークスの運転する装甲トラックが現れたのでヘレンはメラニーを抱えて飛び乗りました。
トラックにはしっかりコールドウェルが乗り込んでおり、ギャラガー(フィサヨ・アキナデ)とディロン(アンソニー・ウェルシュ)の二名の兵士もいました。
コールドウェルは基地を捨てて逃げることにし、貴重な実験材料としてメラニーを拘束して機銃座に座らせました。

水が不足していたので道中の湖で補充することにしたのですが、その際にディロンがゾンビに襲われて感染したのでパークスが射殺しました。
ここでようやく背景の説明があったのですが、彼等はハングリーズと呼ばれており、感染症によって狂暴化した人類だそうです。
そして燃料タンクをやられてしまったので、一行は徒歩で移動することになりました。
一行は大量のハングリーズが路上で立ったまま寝ているロンドン市街を通ることにし、ジェルを塗りたくってそろそろと間をすり抜けます。
しかしコールドウェルが声を出したことで一部が反応したので、射殺しつつ廃病院風の建物に逃げ込みました。

騒ぎの元はコールドウェルがベビーカーを押しているハングリーズに興味を持ったことだったので、パークスはコールドウェルに「くれぐれも余計なことをするな」と釘を刺しました。
手分けして周囲の安全確認をすることになったのですが、コールドウェルはメラニーと残ると言い出したので、全く彼女を信用していないヘレンは「何かあったら大声で叫ぶのよ」とメラニーに言いつけました。

その後、メラニーは「私はなんなの?」と視聴者の気持ちを代弁するという偉業を成し遂げ、コールドウェルは淡々と説明を始めます。
そもそも始まりは感染者から産まれた新生児が発見されたことで、ハングリーズは通常思考能力を失って本能で人を襲うようになるのですが、新生児には理性や思考能力がありました。
しかし新生児が人肉を求めるのは同じで、発見された母親の殆どは内臓を内側から食われていたそうです。
「私は彼等と違う」と主張するメラニーに対し、「あなたも同じ。菌糸が脳に絡みついてる。」とコールドウェルはキッパリと断言しました。

翌朝、病院の周囲はハングリーズに包囲されていました。
メラニーは「自分なら襲われないから囮になって彼等を追い払う」と提案し、コールドウェルは「逃げるからダメ」と却下したものの他のメンバーはその作戦に乗っかります。
メラニーは出入口にびっしりと瞑想でもしているかのように佇んでいるハングリーズの群れをかき分け、どうするか思案していたのですが、猫が通り掛かったので飢えと本能を抑えきれなくなり、捕食してしまいました。
残酷な気もしますけど、自然界ってこういうことですよね。

メラニーは犬をゲットしたので、それでハングリーズを釣ることにしたのですが、ワンワンと吠える犬を放つと出口に固まっていたハングリーズ達は面白いように犬を追いかけて行き、あっという間に全員消えました。
ということでパークス達に声を掛け、一緒に移動を開始したのですが、猫を食べて血まみれだったので念のため後ろ手に拘束されました。
その後、メラニーは拘束を解かれて無線を渡され、安全ルートの偵察に活躍します。
移動中にメラニーは猫の絵を見て「ペットだったのか」と認識しました。

一行が移動を開始すると、植物化して胞子のような物を実らせているハングリーズに遭遇しました。
コールドウェルによればこの感染症はキノコから発生しているので段階が進むと身体を乗っ取られてしまうのだそうです。
更に高層TV塔にびっしりと蔦のようにハングリーズ植物が絡みついているのを目撃したコールドウェルは「この塔に張り付いている胞子嚢がバラまかれたら世界は滅ぶ」と嘆いていました。
この辺りは既に動いているハングリーズはおらず、目撃されたものは全て植物化していました。

胞子が開かれてしまうと体液感染であったこの症状が空気感染するようになるのですが、幸いなことに胞子は非常に硬く、簡単には開かないようになっていました。
その後。一行は無人の装甲車を発見したのですが、それはコールドウェルのチームが研究を行っていた移動式の研究室でした。
この設備は太陽光発電で動くので電力も生きており、エンジンも動くようでしたが、相変わらず本部は無線応答しませんでした。
メラニーは飢えから食欲を抑えきれなくなって「皆の匂いに耐えられない」と言い出したので、外に出され、ひとまず鳥を食べて人心地着きました。

その後、メラニーはハングリーズの子供が共同生活を送っている廃墟を発見したのですが、彼等にはジェルが効かないようで、人間の臭いを嗅ぎ取ったようで、大挙して外に飛び出していました。
教育を受けていないので喋れないみたいですが、意思疎通はしてます。

感想

これはなかなか面白いです。
ハングリーズというゾンビのような感染症が蔓延する世界で生き延びるという内容です。
なのですが、視点は人類ではなく感染症の少女のものになってるのが新しいです。
この少女がかなりチートで武将パラメーターだと知略120、政治100くらいあり、決断力と武勇もそれなりに高いという。
雰囲気は死霊のえじきに似てる感じがしましたが、大分違いますね。

段々と謎が解けていく様子も面白いので予備知識なしで観た方がいいと思います。
アクリルカバーを被ったメラニーの絵から普通の感染パニックを予想していたのですが、ゾンビものだったという。

この子の食生活は野生動物のものなので、なんか色々と考えさせられます。
一見、残酷なようですが、ワイルドな部分を誰かが補っているから我々はお肉とか食べてるわけです。
まさかゾンビ映画を観て、普段の食生活の事まで考えさせられるとは思いませんでした。

長く続いた恐竜時代も終りを迎えているので人類も世代交代が近づいているのでしょうか。
とは言ってもこの子達はキノコに乗っ取られて植物化されていく人類の僅かな未来への希望でもある気がします。
そのあたりがパンドラの箱の話なのかなあと思いました。
劇中では語られてなかった気がしますが、そうなるとパンドラの箱を開けたのは誰なのよ?と気になりました。

終末映像もなかなか良く出来ていて面白かったです。
ロンドンのモール周辺の映像はゾンビ映画そのものですし、植物化したハングリーズの絵も独特で素敵です。
後半でギャラガーが襲われた食料品店の上からの絵もなんかいい感じでした。

この映画のゾンビは走る系なので迫力あります。
基地を脱出する寸前の襲撃シーンはスピード感あって素敵でした。
一番怖かったのは個人的にはギャラガー襲撃シーンでしょうか。
ザ・チャイルドとか連想させる気がします。

ラストまでのあらすじ

尚、コールドウェルは手の傷から敗血症になっており、死ぬ前にワクチンを作りたいと「メラニーをくれ。痛くしないから」とヘレンに掛け合って拒絶されていました。
メラニーは急いで移動研究室に戻り、「子供達がギャラガーの臭いを検知した」と皆に知らせました。
まずいことにギャラガーは外で食料を探しており、狭いシャッターの隙間を腰の装備品を外して潜り込んでいたので無線にも応答しませんでした。
その直後に本部から無線連絡があり、「ここはもうダメだ非難する」という内容だったので、絶望的な空気が流れます。

メラニーは「早くギャラガーを助けないと!」とパークスとヘレンのお尻を叩き、外に飛び出しました。
しかし既にギャラガーは店内に現れた子供の集団に襲われ、貪られてしました。
このシーンは一番怖いです。
現場に到着したパークス達はギャラガーの無残な遺体を発見し、これは罠だと勘付いたのですが、時既に遅く店の周辺では子供たちが集まって威嚇していました。

メラニーは子供たちを威嚇してリーダーっぽい子供に飛び掛かりました。
バットで殴られたりしたのですが、パークスからくすねた手錠でリーダーの動きを封じ、リーダーを撲殺して「自分が群れのボスだ!」的にウガウガ叫んで子供軍団をビビらせました。
子供軍団は「あいつヤバい奴。あの二人はあいつの獲物」と認識したようで、襲撃を諦めました。

ということでヘレン達は移動研究所に戻ったのですが、ガスマスクを被ったコールドウェルは催眠ガスで三人を眠らせました。
しかしメラニーは以前から自分がどの程度息を止められるかを計測しており、1000秒程度なら耐えられたので息を止めて寝たふりをしているだけでした。
コールドウェルはあなたの犠牲で人類は救われると説得し、ワクチンの原料になって欲しいと依頼したのですが、メラニーは拒絶して外に出て行きました。
そして彼女はあのTV塔に火を放ち、胞子を蔓延させました。

一方、メラニーを追って外に彷徨い出たコールドウェルは子供たちに囲まれて襲われました。
メラニーはパークスとヘレンは守りたいと思っており、研究所内なら安全だと考えていたのですが、息を吹き返したパークスは外に出てしまっていました。
事情を聞いたパークスは「俺はハングリーズにはならない」と拒絶し、銃をメラニーに託して殺すように依頼しました。
メラニーは要求を受け入れて彼を射殺したのですが、変化する前にパークスは妊娠中の妻が感染した件を話してくれました。
そしてメラニーは彼がまるで子供たちを憎んでいるかのような行動を取っていた理由を知りました。

ヘレンは装甲車の中で生かされ、メラニーが連れてきた子供たちをスピーカー越しに教育することになりました。

人類滅亡して世代交代ということですね。

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