処刑男爵
ヤバい男爵が蘇ったのでひどい目に遭う話
制作年 | 1972年 |
制作国 | イタリア |
監督 | マリオ・バーヴァ |
脚本 | ヴィンセント・フォートル |
上映時間 | 98分 |
出演 |
ジョセフ・コットン |
エルケ・ソマー |
マッシモ・ジロッティ |
だいたいのあらすじ
ウィーンの空港に到着したピーター(アントニオ・カンタフォラ)は出迎えに来ていた叔父のカール(マッシモ・ジロッティ)と落ち合いました。
彼がはるばるオーストリアにやって来たのは父方の先祖である男爵の秘密を知りたいからでした。
カールは空港からの道中で現在はホテルに改築中の男爵の城にピーターを案内してやりました。
そこでは文化財である城を守るために現場監督のドルトムント(ディーター・トレッスラー)に細かく口出しをするエヴァ(エルケ・ソマー)と出会いました。
尚、ピーターの祖先である男爵は「処刑男爵」と呼ばれ、自分を批判する人物をことごとく串刺しにして城壁に飾ったそうです。
その後、守衛のフリッツ(ルチアーノ・ピゴッツィ)が拷問具が沢山置いてある地下室でエヴァを脅かして遊び、軽く騒動になりました。
その夜、カールはピーターとエヴァを自宅の夕食に招待したのですが、末娘のグレッチェン(ニコレッタ・エルミ)は学校帰りに城で肖像画にそっくりな処刑男爵を目撃したと話していました。
男爵は魔女であるエリザベト・ホールを処刑したことでも有名だそうです。
彼女は火炙りにされる予定だったのですが、突然の雷雨で中止となり、未だに遺体は発見されていないということです。
エリザベトは死の前に伯爵に恨みを抱き、自身で拷問するために死後も復活する呪いを掛けたのだそうですが、大学教授であるカールはこれには否定的でした。
カールは先に休んだのをいいことにピーターは「男爵が復活するのか検証したい」と言い出し、エヴァを口説き落として同行させました。
城に到着したピーター達は早速「血の部屋」と呼ばれる男爵が死亡したと言われている部屋に侵入し、そこでピーターが持参した古文書を読み上げました。
そして呪いが成就した明かしとして城の鐘が二回鳴り響いてしまい、部屋のドアがガチャガチャ鳴り出したので二人は震えあがります。
ピーターがビビって男爵を戻す呪文を唱えるとドアの音は治まり、外には誰もいませんでした。
翌日、ピーターとエヴァは古い図面を元に血の部屋から続く隠し通路に侵入し、不気味な目を描いた男爵の肖像画を発見しました。
その夜、ピーターはエヴァを説得し、懲りずに男爵の復活を検証します。
またまた鐘が二回鳴り、外ではゾンビのような何かが起き上がっていました。
そして窓が開いた拍子に風が入り、呪文が書かれた古文書は舞い上がり、暖炉にインして燃えました。
こうして封印の呪文は失われ、復活した男爵は医師のヘッセ宅をノックして治療を受け、救急車を呼ぼうとするヘッセを殺害して逃亡しました。
更に男爵は千鳥足で歩いていた酔っ払いに襲い掛かりました。
翌日、困ったピーター達は「ヤバいことになった」とカールに泣きつきますが、やはり彼はあまり相手にしてくれませんでした。
男爵は作業員を送り出して帰り支度を始めたドルトムントに襲い掛かって首の骨を折り、自殺を偽造してロープで吊りました。
また、血の部屋から続く隠し通路には男爵がため込んだ財宝が入っている箱が隠してありました。
その後、城には守衛をクビになったフリッツが窃盗に侵入し、ドルトムントの遺体を見て大喜びしていたのですが、男爵に鉄棒で殴られてKOされます。
男爵はフリッツを地下室に放り込み、内側に棘が沢山ついた棺に彼を押し込んで蓋を閉め、殺害しました。
翌日、刑事(ウンベルト・ラオ)が捜査に乗り出し、ドルトムントが自殺で無いと見抜いた上で付近の目撃情報を元にフリッツを容疑者として手配しました。
その後、城はオークションにかけられたのですが、アルフレッド・ベッカー(ジョセフ・コットン)という人物が落札しました。
後日、ベッカーに招待されたエヴァは城を訪ね、男爵が復活した件、元に戻す呪文が無い件を知らせましたが、ベッカーはあまり気にしていない様子でした。
尚、エヴァは高所恐怖症のようで、高い所から下を見ると眩暈がするようです。
そしてエヴァは突如出現した男爵に迫られるのですが、そこにピーターが現れました。
ピーターはベッカーに「上の階で悲鳴が聞こえた!急げ」と言われて駆け付け、倒れていたエヴァを抱き起し、城から連れ出しました。
ということでピーターとエヴァはますます親密になりました。
その夜、エヴァは学生寮で男爵を目撃したので逃げ出し、カールの家に助けを求めて飛び込みました。
この一件でカールは男爵の件を信じるようになり、翌日、ピーターとエヴァをクリスティーナ・ホフマン(ラーダ・ラシモフ)という霊能力者の下に案内してくれました。
カールはなんだかんだで超常現象に通じていたのです。
感想
これはなかなか面白いです。
面白半分に呪文を唱えたらヤベーの復活しましたという内容です。
ちょっとダラダラしている感はありますが、意外な面白さです。
冒頭のピーターが空港に到着するシーンから勝手に田舎コエー系になるのかと思ってたら全然違いました。
迎えに来てくれたカールも村一味かと思ったらいい人だという。
ひたすら男爵悪い奴、ヤベー奴という方向で話が進み、ピーターも村人に虐められたりしませんでした。
男爵の復活シーン等の雰囲気がエルゾンビっぽくていい感じです。
お城の謎の長い廊下や拷問部屋の雰囲気もなかなか良いです。
難点は展開がやや退屈なのと一部の謎展開です。
グレッチェンの件は理解不能でした。
クリスティーナも謎なのですが、これは一応結末でどうなったかわかります。
あと、これは私が理解力足りてないような気がするのですが、結局城の元々の持ち主って誰だったのよってちょっと思いました。
いきなり競売始まってるので、よくわからず。
あとエリザベトが何をどうしたかったのかよくわからず。
復活させて万々歳ってことであれば具体的な行動を何かすると思うのですが、よく考えるとこの人何もしてないような…
クリスティーナは「死とか時間とか私達には関係ないから」的なカッコいいこと言ってましたが、何もできないのであれば関係ある気がしますが…
それにしても結末は超展開で驚きました。
ラストまでのあらすじ
クリスティーナは話を切り出す前から要件が読めており、ピーターとエヴァを示して「二人は愚かな行為をした。男爵に殺させるだろう」と批判しました。
カールが助けを求めてもクリスティーナは「もう手遅れ。私には無理」と拒否したのですが、エリザベトの霊を呼び出して男爵を封じる方法を聞いてくれることになりました。
クリスティーナはエリザベトが死亡したと言われている場所で焚火をし、彼女の遺品だというネックレスを手にエリザベトに呼び掛けました。
間もなく炎の中にエリザベト(ラーダ・ラシモフ)が現れて「男爵を滅ぼすことができるのは彼に滅ぼされた者だけ。」と言いつつも男爵が呪いを受けて苦しんでいるのでお礼に助けてやろうとか言い出し、ピーター達に「力を使え」と訳の分からないことを告げました。
クリスティーナはピーター達に加担したので男爵から命を狙われるようになり、その夜に家に侵入した男爵に襲われました。
その後、男爵は学校帰りのグレッチェンを襲おうとしたのですが、グレッチェンは知らず知らずに逃げ切り、転んでいた所を駆け付けたカール達に助けられました。
カール達はついでにベッカーにヤバさを伝えよう!と城に行って現在の状況を説明したのですが、やはりベッカーは相手にしませんでした。
ベッカーは城の改築を完了したのだそうで、ぜひ今夜皆さんを招待しますと誘うのでした。
帰宅したグレッチェンはカール達に「ベッカーはお化けだ。目が同じだ」と言い出し、カールもそういえばあの男は謎が多いなあと考え込みます。
カールはヤツが男爵だとすると今夜行くのは危険!と主張したのですが、ピーターとエヴァは逆に倒すチャンス!と意見が分かれます。
そこでなぜかグレッチェンが「男爵を倒す力とはエリザベトのネックレス」とエヴァがクリスティーナから譲られたネックレスを示すのでした。
何なんでしょうねこの子?もしかして超能力者?
ということでカール達はベッカーの招待に応じ、三人で城に乗り込みました。
恐ろしいことにベッカーは城の修復だけでなく、串刺しも酔っ払いを使って再現していました。
また、悪趣味なことに地下の拷問部屋は骨の模型を置いたり、苦しみ悶える男女の声のテープを流す等して再現していました。
まさか串刺しが実際の人間だとは思わなかったカール達でしたが、ドン引きして引き揚げることにしました。
そして居間でひそひそとやっつけるかどうするか話し合っていたカール達でしたが、ベッカーが「そうです、私が男爵です」的に登場しました。
エヴァはネックレスを手に「悪霊退散!」と迫ったのですが、あっさり投げ飛ばされ、ピーターも同様に壁に投げつけられます。
カールは男爵に発砲したのですが、全く効かずKOされました。
ということで三人仲良く拷問部屋送りになり、男爵は楽しそうに焼いた鉄杭を磔にしたピーターに刺そうと迫ります。
カールはがっつり縛られていたのですが、エヴァはなぜか自由だったので「どうしよう」と立ち上がったものの棺の中のフリッツの遺体を見て立ち眩みを起こし、ネックレスをポトンと遺体の上に落としました。
するとフリッツの遺体から煙が上がり、なぜか男爵が苦しみ始めました。
フリッツはゾンビのように起き上がり、本来の焼けただれた姿に戻って動けなくなった男爵に迫ります。
そして被害者の会のようなゾンビ軍団がどこからともなく現れて男爵を拷問し始めます。
「滅ぼされた者だけが滅ぼすことが出来る」というのはこういうことだったようです。
エヴァはその隙にカールとピーターを助け、男爵の絶叫が響く城から逃げ出しました。
男爵はここで未来永劫拷問され続けるのだそうで、クリスティーナも喜々として被害者の会に加わっていました。
軽快な音楽のエンドロールの末にFINEマークで終了です。
やっぱ悪いことはしちゃダメってことですね。