色情狂女の話 ニンフォマニアックVol.1

ニンフォマニアックVol.1

色情狂の女性の半生

制作年 2013年
制作国 デンマーク/ドイツ/フランス/ベルギー/イギリス
監督 ラース・フォン・トリアー
脚本 ラース・フォン・トリアー
上映時間 117分
出演
シャルロット・ゲンズブール
ステラン・スカルスガルド
ステイシー・マーティン

だいたいのあらすじ

年配のおじさんセリグマン(ステラン・スカルスガルド)は雪の降る日に買い物に出掛け、寂しい路地裏で血を流して倒れているジョー(シャルロット・ゲンズブール)を発見しました。
声を掛けるとジョーは息を吹き返したのですが、自分に構うなと返答しつつも、「何か欲しいものは?」と聞かれると「紅茶が飲みたい」と即答しました。
セリグマンはホームレスのように薄汚れてくっさいジョーを自宅に連れ帰って介抱してやることにしました。
ベッドに寝て紅茶を飲んだジョーは人心地着いたのですが、セリグマンに対して「自分は悪い人間だ」と言います。
セリグマンは趣味のフライフィッシングの話をしつつ「事情があるなら話してみては」とジョーに提案し、ジョーの長い長い話が始まります。

第一章 釣魚大全

ジョーは性の目覚めが早かったのか、少女の頃から友人と一緒に「カエル遊び」と称してはバスルームの床に水を張り、そこに寝そべって床オナをしていました。
彼女の父(クリスチャン・スレーター)は医師で優しい人物だったのですが、母であるキャサリン(コニー・ニールセン)は「いつも背を向けてソリティアをやっているような冷たい人間」だそうで、お陰でジョーはソリティアが嫌いだということです。
ジョーは体育の時間の縄登りをしている際に感じてしまい、女性器に興味を持つようになります。
父はそんなことは知らず、良い教育になるだろうとジョーを森に連れて行っては木の話をよくしてくれました。

一方、少女時代から処女を捨てることしか考えていなかったジョー(ステイシー・マーティン)は15歳になった時にJという人物にお願いして処女を奪ってもらいます。
Jはジョーに挿入して3回腰を振り、お尻の穴にまで挿入して5回腰を振りました。
ジョーの人生においてその3と5という数字は屈辱の象徴なのですが、読書家で教養のあるセリグマンは「3と5はフィボナッチ数だ」とちゃちゃを入れます。
それにはかまわずジョーはそれからセックスはしたくなかったけど2年後に友人のB(ソフィー・ケネディ・クラーク)の遊びに付き合ってセックスする羽目になります。

Bの持ち掛けた遊びは最高にビッチな服を着て列車に乗って男を釣り、目的地まで多くやった方が勝ちというものでした。
ここまで聞いたセリグマンは「列車の通路は川に似ていて魚は階級に応じて有利な場所に潜んでいる。君の行為は釣りに似ている」と教務深そうに横槍を入れました。
そしてBに先を越されたジョーは焦ったのですが、あっさりと男を引っ掛けてトイレでセックスし、その後も爆釣だったのですが、3人を境に男が吊れなくなったそうです。
そこまで聞いたセリグマンは「ますます釣りに似ている。釣れるときは沢山釣れるけど、その後全然釣れなくなったりするんだよね」とどうでもいい話をしました。
そして「フライの場合は傷ついた昆虫の振りをして魚をおびき出すんだよね」と付け加えました。

偶然にもジョーは「飼っているハムスターが病気で…」と同情を買う作戦で列車内の男を惹きよせていました。
しかし実際には彼女はハムスターを可愛がってはおらず「生きる価値の無いクリーチャー」と考えていたそうです。
なんかハムスターに恨みでもあるんでしょうか?
獲物がいなくなったので、Bとジョーは一等車に移動し、Bが切符も持たない癖に検札の乗務員に喧嘩を売ったので警察を呼ばれそうになったのですが、乗り合わせていた紳士が二人の切符を買ってくれました。
Bは「お礼をしたい」と紳士を誘惑したのですが、「そういうのは本当にいいから」と却下されてしまいます。
今の所10対5でリードしているBはジョーに「あの男落とせたら6ポイントあげるよ」と持ち掛けました。

ジョーは俄然やる気を出して紳士を誘惑し、実は今日が妻の排卵日で子供を作る予定なのだと聞き出しました。
ここまで聞いたセリグマンは「そうそう。フライで釣れない時はフィンランド製のルアーがいいんだよ」とまた釣りに例えます。
そしてジョーは強引に紳士のチャックを下ろし、口で射精させたのでBとの勝負に勝ちました。
セリグマンは「フェラは君にとってルアーみたいな必殺武器なんだな」と感想を述べ、「なぜ私を責めないのか」とジョーに不満を漏らされます。
「私は自分の欲望のために人の好意を踏みにじった」と自分を責めるジョーにセリグマンは「翼があれば飛べばいい」と言いました。

セリグマンはジョーのベッドに食事を運び、話は休憩して休ませようとしますが、ジョーはもう少し話したいと言い出し、二人はここで初めて自己紹介しました。
セリグマンはユダヤ人だそうで名前の由来は「幸せな者」ということで、幸せかどうか尋ねるジョーに確かにまあまあ自分は幸せだろうと返答します。
彼によれば爪を切る時に右手から切る人は陽気で人生を楽しんでいる人物だそうで、自分は左手から爪を切るのだということです。
右利きの人は普通に左手から切る気がしますが…
そしてジョーはセリグマンが持ってきてくれたルゲラーというクロワッサンのようなパンを見て、フォークを添えるのは女々しいと批判しつつ「これは愛の物語だ」と話を進めます。

第二章 ジェローム

ジョーは来る日も来る日も次から次へと男とやりまくる日々を送りつつ相手の男全員に「イけたのはあなたが初めて」と嘘を吐きまくっていました。
Bはその後、「小さな群れ」なるセックス教団のようなものを立ち上げ、ジョーもそのメンバーでした。
ここまで聞いたセリグマンは名前から連想したのか「BとFというのは悪魔の戦慄で中世では禁じられていた」と知識を披露しました。
その会では男とやりまくり、二度と同じ男とはしないということになっていました。
今にして思えばジョーは愛に対して反抗しており、愛に取り付かれた世の中と闘っていたのだそうです。

しかしBにはアレックスという恋人のような男ができ、「愛はセックスに重要な材料」とか言い出したのでジョーは会とは距離を置きます。
ジョーによれば愛によって100人の殺人が起きるのであればセックスによる殺人は1人だそうで、愛は危険だということです。
そしてジョーは父と同様に医学を志すのですが、結局集中できずに辞めてしまいました。
その後、職探しをしたジョーは印刷会社の秘書に応募したのですが、面接官のリズ(フェリシティ・ギルバート)は彼女を快く思いませんでした。
しかし経営者であるジェローム(シャイア・ラブーフ)はジョーを雇いました。

ジェロームはジョーが処女を捧げた相手であるJで、ジョーに迫るのですが、彼女は拒否しました。
ジョーは彼のオフィスを掃除し、紅茶とルゲラーを用意したのですが、ジェロームは机の上には置かずにノックしてから差し出すように命じ、その際にフォークを要求しました。
そしてジョーは他の男性職員を誘惑してセックスしまくるのでした。
また、ジェロームはジョーがオフィスを片付けたのが気に入らず、元のように机の周りに書類等を乱雑に並べます。
ジョーは乱雑の中に秩序があったのだと気づき、同時にジェロームに魅かれるようになります。

ジェロームに魅かれたジョーは他の男には身体を触らせなくなり、いつしかセックスするのも止めました。
そして自分の想いを手紙に書き、思い切ってジェロームに差し出そうとしたのですが、オフィスには彼の叔父が座っていました。
元々、叔父の代役であることは聞いていたのですが、叔父によればジェロームはもう戻らないそうです。
ジェロームはリズと結婚して旅に出てしまったということで、ジョーは叔父に要求されるまま手紙を託しました。

ジョーは列車内の複数の男の手や鼻というパーツを眺めては頭の中でそれをパズルのように組み立ててジェロームの面影を作り、自慰行為をしていました。
しかし時間と共にジェロームの面影は薄れ、ジョーはより激しく男を求めるようになりました。
その遍歴たるや凄まじく、ジョーによれば相手の男たちの割礼された包皮を集めれば地球と火星一往復できる長さだということです。

第三章 H夫人

ジョーの周りには男が大勢いたので、誰が誰だかわからなくなり、男達から電話に伝言を貰ってもどう返事していいのか整理不能になっていました。
パン子なので羨ましくないです。
そこで彼女はサイコロを振り、出た目によって返答することにしました。
1は熱烈、2はやや肯定、5は拒絶で6は返信なしといった具合です。
これ、相手からすれば突然拒絶されて訳分からずですよね
それでもやはり気疲れはするらしく、ジョーは父の影響なのか押し花を沢山貼ったノートを眺めては癒されていました。

さて、ジョーの男達の中にH氏(ヒューゴ・シュペーア)という人物がいたのですが、彼は厄介なタイプでジョーが他の男と会うのに嫉妬し、愛を要求してくるのでした。
ジョーは他の男が家に来る予定なのに居座るH氏を追い出そうと「あなたは家族に愛を向けて私の愛に答えてくれない」と適当な理由で別れを告げました。
そしてAとの待ち合わせ時間に玄関のベルが鳴ったのでジョーが出てみると、そこにはバッグを抱えたH氏が立っており、「妻と別れてきた」と部屋に押し入るのでした。
あまりの展開に流石のジョーも混乱したのですが、更にH夫人(ユマ・サーマン)も幼い息子を三人連れて現れ、「子供に彼と面会させてほしい」と依頼します。

H夫人はジョーの事を直接は責めなかったのですが、どうやら子供達に父親は自分達を裏切ったのだという事実を見せつけたいようです。
そしてH夫人は車のキーをHに渡して子供達には「バスで帰らないとね。生活水準を下げないと」とこぼします。
更にジョーの部屋のベッドルームを子供達に見せ「この場所をよく覚えておくのよ。セラピーの際には思い出すことになる」と吐き捨てました。
相当精神錯乱している様子のH夫人は「紅茶を飲む」と言い出し、勝手にキッチンで紅茶を淹れ始めました。
そして混乱したジョーもH夫人に言われるがままに角砂糖を紅茶に入れるサービスをしてしまうのでした。

やがてAが訪ねてきたのでH夫人は部屋に招き入れて全員を座らせ、夫に対して「あなたは随分寛大ね」と嫌味を言いました。
更にH夫人はジョーに「あなたは1日にどれだけの家族を破滅させられるの?」と質問しました。
ジョーは「それは誤解で実は私はHのことを愛していない」と告げたのですが、H夫人は「冗談にもなってない」的にブチ切れ、「修羅場になるからそろそろ退散する」と子供を連れて引き揚げました。
最後に彼女は絶叫して夫を思いきり殴り、泣きながら部屋を出て行きました。

ここまで聞いたセリグマンは流石に驚いた様子で「君の人生にこの出来事は影響しないのか?」的な質問をしたのですが、ジョーは「全くない。オムレツを作るには卵を割らないと」と罪悪感は無いと断言しました。
そしてセリグマンはジョーをセックス依存症なのではと分析したのですが、ジョーは「私は欲望に従っているだけで欠乏感はない」と返答しました。
しかし深い依存症の患者が「自分は依存症である」と認めることはあまりないからかセリグマンは「孤独感は感じていなかったのか?」と質問し、ジョーは認めたくないので悔しそうに「孤独感はいつもあった」と認めました。
セリグマンの苦悩したような表情が実にいいと思います。
そしてジョーは7歳の時に手術を受けストレッチャーに寝かされて医師たちが準備をしている姿を見た際に自分が宇宙で独りぼっちなのではないかという孤独感を感じたそうです。
セリグマンはジョーに同情的な感情を持ち始めたのですが、彼女はそれを認めず話を進めました。

最近、セリグマンは過去に呼んだポーの小説を拾い読みしているそうで、ポーの悲惨な死について語ります。
ポーは長年のアル中と禁酒に悩まされ死の直前までせん妄状態で苦悩に満ちた死を送ったという内容でした。
ジョーは「せん妄についてはよくわかる」と話し、セリグマンが「アッシャー家の崩壊」の冒頭を読み上げるのをBGMに彼女の話が始まりました。

感想

これは普通です。
路上で倒れていた色情狂の女性を助けて半生を語ってもらうという内容です。
結末から話が始まるので、最終的にジョーが路上で倒れてたのはなんでなのよ?という疑問を引っ張る感じなのでしょうか?
当然、全編に当たるこの作品ではまだそこまで語られることは無く、ジョーも若いです。
正直、そんなに面白いことは無いのですが、先が気になるので観てしまい、知らず知らずに話に引き込まれます。
父の件とかイベントの構成が上手いのかな🤔と感じました。

内容は完全にポルノの筈なのですが、セリグマンがいる所為でヒューマンドラマになってます。
この辺りも非常に不思議な気分になる映画でなんとなく自分が慣習に縛られてレッテル貼りをしていたような妙な感じです。
絡みのシーンはかなりハードで、実際にやってるみたいに見えます。
やっぱりこの監督はこだわりが強いみたいで列車のシーンで本当にフェラしてるように見えたのは驚きました。
父のベッドシーンでも本当にウンコしろとか言ってそうで怖いです。
兎に角やりまくりなので性器痛くならないのか不思議に思います。

紅茶が精神安定剤的な役割なのでしょうか?
ジョーも紅茶を飲んでから話を始めていたし、どうもこの世界の人達は紅茶を飲むと落ち着くみたいです。
また、この映画は音楽が印象的で前半ではジョーの日常シーンにショスタコのジャズ組曲第2番のワルツ第2番がよく流れてます。

ジョーのパパが珍しくいい役でウケます。
ジョーのポリシーの所為なのか男性はあまり印象に残らずモブのようで、ジェロームだけ扱い違います。
あれほど大変なことがあったH氏に関しても私には列車内の紳士クラスのモブにしか見えず、H夫人の方がインパクト強かったです。
あと、Bは悪い女なんだなあと感じました。

ラストまでのあらすじ

第四章 せん妄

ジョーの父は入院しており、面会に行ったジョーは見舞いに来ない母を責めたのですが、父は「ママを責めるな、病院に来るのが怖いだけだ。それに家でもうお別れは済ませた」と宥めます。
父は既に死を自覚しているようなのですが、医師として多くの死を見てきた彼は死に対する恐怖はありませんでした。
しかし孤独感には勝てないようで、眠り込んだ後に痛みで飛び起きると妻の名前を叫んでいました。
看護師(サスキア・リーヴス)が診てくれることになり、「気晴らしに散歩でもしては?」と提案されたジョーはかつて父と森を歩いたように病院の周囲を散歩します。
近くの公園には父との思い出の樹であるトネリコが生えていたので、ジョーは枝を折って持ち帰りました。
枝を見て父は「森で最も美しい樹」と大喜びし、子供の頃から聞かせていたトネリコに黒い芽が生える話をしてくれました。

その後、父は病状が進んだのかせん妄状態に陥り、ベッドから落ちては戻そうとする看護師を相手に暴れるようになります。
父はベッドにベルトで固定されたのですが、ジョーはその様子を泣きながら見守ることしかできませんでした。
不安を紛らわすためか、ジョーはリネン室にいた職員を誘惑し、激しくファックするのでした。
父は糞尿を垂れ流すようになり、その度にジョーは院内でセックスに身を委ねます。
やがて父は亡くなり、キャサリンはその時だけ病室に現れてジョーに声を掛けることも無く去りました。
その際にジョーは性器を濡らしてしまったことを激しく恥じていました。

セリグマンは「君は自分を否定的に見過ぎる。重大な局面で人間が性的反応をしてしまうことはよくある」と諭します。
音楽について尋ねられた彼はバッハの複数音声を重ねるポリフォニーの手法について語ります。
セリグマンはバッハの旋律の乗せ方を前の数を加算していくフィボナッチ数列に例え、黄金比や先ほどの悪魔の旋律にも例えます。
部屋の中のシーンで窓から見える雪もなんかいい感じです。
その話を聞いたジョーは何か感じたのか「満足を得るために複数の男と寝た訳ではなく、結局は複数の男を一人の男として扱っていた」と言いました。

第五章 リトル·オルガン·スクール

当時、毎晩7,8人の男とセックスしていたジョーはセリグマンの話にあった三音階に合わせて三人の男の話をします。
まずは低音部に該当するF(ニコラス・ブロ)で彼は10時にセックスの待ち合わせをすると9時前からずっと待っているような大人しい男でした。
Fはジョーがその時何が一番したいのか理解している男で、彼女の癒しでもあったそうです。
G(クリスチャン·ガーデビヨ)という男は兎に角じらす男で、振る舞いはまるでネコ科の大型哺乳類ようでした。
ジョーはGにじらさせることで非常に興奮したそうです。

それだけ一晩にとっかえひっかえ多くの男とやりまくってもジョーは孤独感を覚え、そんな時は散歩をしたそうです。
彼女にとって散歩とはルーチンに過ぎず、檻に入れられた動物が死ぬ順番を待っているようなそんな感覚なのだということです。
父の思い出が強いんでしょうか?
そんなある日、彼女は散歩中に写真の断片を発見して拾い上げていたのですが、それはどうやらジェロームの写真で、直後に彼は突然ジョーの前に現れました。
写真の件はジェロームが妻と喧嘩して怒った妻が彼の写真を破り捨てたという顛末だったと判明します。
ジョーはセックスを楽しむ要素の一つであるという愛を再確認し、激しくジェロームとファックしました。

しかしジョーはジェロームとセックスしても何も感じず、彼に「何も感じないの!」と涙ながらに訴えるのでした。

エンドロールで終了です。

不感症で前編終りって凄いなあと思いました。
画面の右側でVol.2のダイジェストっぽいのが流れてます。
エンディングも北欧メタルっぽい曲で素敵です。

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