切ない吸血鬼映画 クロノス

クロノス

機械仕掛けの虫に血を吸われてひどい目に遭う話

制作年 1992年
制作国 メキシコ
監督 ギレルモ・デル・トロ
脚本 ギレルモ・デル・トロ
上映時間 92分
出演
フェデリコ・ルッピ
ロン・パールマン
タマラ・サナス

あらすじ

1536年
錬金術師のウベルト・フルカネリは宗教裁判を逃れるため、メキシコのベラクルスへ渡りました。
彼は持ち主に永遠の命を授けるというクロノスという未知の機械を作りました。

1936年
フルカネリは400年の間生きていましたが、古くなった建物の崩壊に巻き込まれ、心臓を板で貫かれて死亡しました。
政府はフルカネリのことを隠蔽したので、クロノスの行方を探しますが発見されませんでした。

骨董屋の主人である初老の男ヘスス(フェデリコ・ルッピ)は孫娘のアウロラ(タマラ・サナス)と一緒に暮らしています。
アウロラは表情も豊かで明るい娘なのですが、言葉を発することはありませんでした。
ヘススはいつもアウロラを連れて車で仕事に行き、店番の傍ら彼女の遊び相手をしていました。
そんなある日、挙動の怪しい男がヘススの骨董屋を訪れ、包装された天使象を物色しています。
ヘススが不審に思い声を掛けると、男は逃げるように去り、その後どこかに電話で何かを知らせています。
アウロラ可愛いです。
メキシコの街には漢字が溢れていて、ヘススの店にも「骨董店」と書かれてますが、中国系の人が多いのでしょうか?

ヘススとアウロラがパズルを楽しんでいると先ほどの天使象の割れた目からゴキブリが出て、ビックリしますが、像は空洞になっているようなので、中を調べてみることにします。
像の中からは金色の丸い入れ物のような物が出てきました。

ごろつきのアンヘル(ロン・パールマン)は骨董店の前の挙動の怪しい男から連絡を受けます。
彼は工場の奥に滅菌状態で引き籠っている叔父のグァルディア(クラウディオ・ブルック)の元に報告に向かいます。
グァルディアは富豪ですが不治の病を患っており、ずっと天使象の行方を追っていました。
叔父からの依頼で生活費を得ているアンヘルは今回も天使象を買い取りにヘススの骨董店に向かい、天使象を買い取りました。
ヘルボーイの人は鼻を整形しようとしているようです。アウロラには優しいです。

ヘススは金色の丸い入れ物をアウロラと一緒に調べていましたが、横にゼンマイのネジのような物を見付けて巻いてみます。
すると丸い入れ物からは鋭利な先端の肢が6本現れて昆虫のような形態になり、手の上に乗せていたヘススの掌を挟みます。
昆虫は刺したようで、ヘススの掌は怪我をして血まみれになりました。
驚いたヘススが掌から昆虫を引き剥がすと、昆虫は自動的に肢を畳んで元の丸い形に戻ります。
怖くなったアウロラは祖父に抱きつきますが、ヘススは大したことはないと孫をあやし、これに触ってはいけないと言いつけ、危険なので箱に保管することにしました。
これ刺されないなら欲しいです。ちょっと可愛いです。

ヘススはタンゴを教えている妻のメルセデス(マルガリータ・イザベル)の教室を訪ね、彼女に手を処置してもらいますが、金属製の昆虫の棘のような針が掌から出てきました。

ヘススはその夜、喉が渇いて眠れずに冷蔵庫の水をがぶ飲みします。
彼は冷蔵庫にしまってある血の滴る肉片に抑えきれない食欲を覚えます。
何かの中毒者になったように様子がおかしくなったヘススは箱からあの機械仕掛けの昆虫を取り出します。
肉はそのまま皿に乗せてあるのですが、ラップした方がいいと思いました。

ヘススは昆虫のネジを巻き、掌の上に置いて作動させます。
昆虫は肢を出し、口吻のような物を伸ばしてヘススの腕に突刺して、少し経ってから元の丸い状態に戻ります。
どうやらこの昆虫に刺されることは中毒性があるようで、昆虫の内部には血まみれのナメクジのような肉片のようなものが棲んでいるようです。
その様子を祖父がなかなかベッドに戻らないことを心配して部屋から出てきたアウロラが2階から見ていましたが、ヘススは彼女に心配ないと声を掛けました。
昆虫の内部らしき物が映りますが、歯車の映像がいい感じです。さすが黒トトロさんですね。

次の日の朝、ヘススはなぜか若返ったようで肌の張りが甦ったようです。
鏡を見た彼は気分一新して髭もそることにし、朝食を同席したメルセデスにも好評でした。

ヘススは骨董店に出勤しますが、なぜか店がめちゃくちゃに荒らされており、机の上にはなぜかアンヘルの名刺が置いてありました。
あの昆虫に関係があると睨んだ彼は偽物の箱を用意してアンヘルの元に向かいます。

ヘススはアンヘルの住所の工場を訪ね、彼が天使象を買いに来た男だと知ります。
アンヘルは抗議するヘススを工場奥のグァルディアの居室へと案内します。
グァルディアは16世紀にラテン語で書かれたというノートを所有しており、フルカネリのノートでした。
そこには永遠の命を与えるクロノスのことが書かれており、クロノスの使い方を間違えると破滅するのだそうです。
グァルディアは不治の病を乗り越えるためにクロノスを長年探していたのでした。
彼はそのノートからヘススの骨董店の女神像にクロノスが隠してあると確認を持っていました。
ヘススは仕方なく、偽の箱を渡して去って行きます。
その箱には壊された南京錠が入っており、グァルディアは憤慨しました。

クロノス中毒になったヘススは家に帰って箱を開けますが、無くなっていました。
祖父を心配したアウロラが隠したのですが、ヘススが彼女を説得してクロノスを取り返します。
アウロラは熊の縫い包みの中にクロノスを隠しており、今後はそこがクロノスの定位置になりました。
ここのシーンはヘススとアウロラのお互いの思いが描かれていてなかなか良いですね。

ヘススはいよいよクロノス中毒が進行したようで、パーティに参加した際に来客の男がトイレの床に流した鼻血を舐めとっています。
彼はクロノスの力で不死になりましたが、吸血鬼になってしまっていたのです!
そこにアンヘルが現れ、ヘススの頭部を蹴って拉致しました。
このシーンは頑張ったと思います。

アンヘルはグァルデイアの命令でヘススからクロノスの隠し場所を吐かせようと暴行し、弾みでヘススを殺害して車ごと崖から落として自殺に偽装します。
崖下に落ちたヘススが息絶える直前に考えたのはアウロラのことでした。

グァルディアはアンヘルの所業を聞いて怒り狂い、あいつは活きてるからクロノスを取り返せと命令します。
ヘススは火葬される予定でしたが、直前で葬儀屋に気付かれずに棺から逃げ出しました。
葬儀屋を抜け出したヘススはすっかりゾンビのようでしたが、寒さに震えながらゴミ箱の新聞の不法欄で自分が死んだことを知ります。
ヘススは土砂降りの雨が降り出す中、自宅に電話を架け、メルセデスの名を呼びますが、メルセデスに悪戯だと思われて切られます。
同じ電話をアウロラも聞いており、家に着いたゾンビのようなヘススを暖かく迎えます。
メキシコでも冬は寒いんですね。一年中暖かいと勝手に思ってました。そういえば南米でも雪は降りますよね。

ちょっとこの辺のシーンで泣きそうになりました。

アウロラはすっかり吸血鬼になり、日光を浴びると火傷をするようになったヘススのために屋根裏の大きなおもちゃ箱を寝場所として提供します。
良く眠ったヘススはメルセデスの遺書を書きます。
自分はこれからどうして不死になったのか原因を調べるが、万が一、生きて帰れたらまた受け入れてほしいと書きました。
ヘススは手紙をアウロラに託し、グァルデイアの元に向かいます。

感想

これは面白いです。良作だと思います。
吸血鬼物なのですが、ちょっと他には無い話で面白いです。
テンポはいいのですが、グイグイと進む感じでは無く、じわじわとお話が進む感じです。
ホラーというよりファンタジーに近いかもしれないですね。
基本の話は怖いのかもしれませんが、怖いシーンは無いのでホラーを期待した人は肩透かしを食らうかもしれません。

クロノスの内部で何かが蠢いている様子や歯車の映像が凝っていていいと思いました。

自身で望まず吸血鬼になってしまったヘススですが、アウロラがいるせいかあまり悲劇的には感じませんでした。
むしろ運命に立ち向かう強さのようなものを感じ、元気をもらったような気がします。

一般人の祖父と可愛い孫娘の心の絆を描いた作品でもあり、なんだか私も小さい頃のことを思い出してしまいました。
あまり不快な登場人物が出てこない映画でもあります。
一応、悪役はグァルディアとアンヘラということなのですが、どうも憎めませんでした。
ヘススとアウロラは善良な感じなので、かなり感情移入しやすくハラハラさせられるのもいいと思います。

音楽も全般的に良く、タンゴ調のものや抒情的シーン用の物が用意されていいと思いました。

ツッコミどころは当然あるのですが、かなり丁寧に作ってあると思います。
これはいい映画だと思います。
ちょっとラストは賛否両論分かれそうで、色々解釈ができそうです。

私はこの映画は好きです。何度も楽しめる良作だと思います。

ラストまで(ネタバレ)

ヘススは夜警の目を盗んでグァルディアの工場に潜入します。
彼の身を案じたアウロラはクロノスを持って、こっそりとヘススの後をついてきており、仕方なく同行させます。
ヘススはクロノスの秘密を探ろうと、グァルディアの居室に潜入し、ノートを探し当てますが、肝心な頁は破られていました。

ヘススの侵入に気付いたグァルディアはアンヘルを呼び出すボタンを押し、ヘススに頁は食ったと告げます。
グァルディアはヘススに皮を禿げと指示すると大理石のような白い肌が露出し、グァルディアは生まれ変わったのだと言います。
グァルディアは更に生き延びたかったら人の血液を接種しろとヘススに告げます。

ヘススはクロノスを交換条件に顔を元に戻す方法を聞き出そうとしますが、先にクロノスを渡せと返されます。
この後、グアルディアとヘススは揉み合いになり、死亡します。

アウロラが活躍します。

ヘススはアウロラにクロノスを預けるとグァルディアの流した血を吸い、アウロラは複雑な思いでその現場を見つめます。
そこにアンヘルが上がってくる物音がしたので、2人は急いで隠れます。

ヘススは屋上に上り、アウロラを梯子から逃がすとアンヘルと対決します。

一方的にやられますが、屋上からアンヘルもろとも飛び降り、アンヘルも死亡します。

アウロラはヘススを復活させようとクロノスを起動してヘススの胸に取りつけます。

ヘススは全身が大理石のような肌になり、家にアウロラと戻り、ベッドに横たわります。

この辺は名シーンが連発でアウロラが初めて言葉を発します。もう泣きそうです。

最後にアウロラとメルセデスがヘススに寄り添います。
はっきりしない感じのラストですが、ベッドルームを日が照らしており彼の行く末を暗示していると思います。
結局、クロノスがなんだったのかは、はっきりしませんが、これでいいような気もします。

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