悪党が人を祟ります 雨の古沼

怪談シリーズ 雨の古沼

売られた人妻を助けてひどい目に遭う話

制作年 1972年
制作国 日本
監督 八木美津雄
脚本 竹内勇太郎
上映時間 47分
出演
中村扇雀
神田隆
岡田茉莉子

だいたいのあらすじ

沼から男性の手が「痛い、痛い」と言いながらスルスルと出てきます。

売れない小屋の親方である小左衛門(神田隆)が遊郭に入り浸って遊んでいると妻のつか(岡田茉莉子)が現れます。
彼女は小屋を畳めとスポンサーからクレームが来たと小左衛門に伝えます。
小左衛門はだったら止める!と開き直りますが、つかは一座の芸人の生活はどうするのかと彼を諫めます。
彼はうるさい!とつかを追い返し、弟子の小平次(中村扇雀)が彼女を迎えに来ました。

つかは身の回りの品を売り払ってお金を作り、芸人達に配り、一座は解散します。
役者の一人である卓郎(天野新士)はつかに言い寄り、レイプしようとしますが、小平次が助けに来ます。
卓郎は刀を出して暴れますが、何とか叩き出しました。
小左衛門はクズなのですが、小平次はいい人です。

そこに小左衛門が現れ、小平次を勘当し、つかをスポンサーの所へ連れて行きます。

小左衛門は座敷でくつろぎ、新しい一座を持てることになったとつかに話します。
なんと小左衛門はスポンサーにつかを売り飛ばすことでお金を出してもらうことに決めたと言うのです!
つかは当然、全力で拒否し、その場から逃げ出そうとしますが、座敷の周りを囲まれていました。
こうしてつかは売り飛ばされてしまい、拒んだので座敷牢に入れられてしまいました。

今の所は無事なつかでしたが、いつかはレイプされてしまい、囲い者にされてしまいます。
しかし可哀想なつかをまたしても小平次が助けに来ます!
小平次はつかを逃がしてやろうと必死で、追手が迫る中、つかを連れて道なき道を進んで行きます。

逃避行の2人の前に小左衛門が現れ、やっぱりお前ら出来てやがったのか、と言いがかりを付けます。
小左衛門はつかに戻る様に言いつけますが、つかはもう亭主ではない!と断固拒否します。
小左衛門は逆上して刀を抜き、小平次は弾みで彼を殺害してしまいます。

小平次は代官所へ出頭しようとしますが、つかは自分が行くからとダチョウ倶楽部のようなことを言い出します。
終いには死罪になるから私を殺してくれとか言い出し、実は小平次が好きだったと告ります。
2人で出頭すればいいような気がします。小平次はこの後もきちんと弟子として礼儀正しく接しています。

小平次がつかを殺害できずにいると小左衛門の声が聞こえてきました。
彼が生きていると確信した小平次はつかを連れて確認しに戻り、その様子を卓郎が木の影から見ていました。
やっぱり小左衛門は死亡しており、2には逃避行を続けることになります。

激しく雨が降り出したので、2人はお堂に入って雨宿りすることにします。
何となく男女の仲になりかける2人でしたが、小平次の前に「痛い、痛い」と言う小左衛門の亡霊が現れます。
ちょっと怖いですが、悪党が亡霊になっても同情できかねます。

小平次は姿の見えないものに首を絞められてバッタリ倒れてしまいました。

しばらく経ち、2人は一緒に暮らすようになっており、小平次の振る舞いも夫婦のそれに変わっています。
小平次は江戸で役者としてやっていけるようになり、2人は支え合って仲睦まじく暮らしているようです。
しかしそれからも小平次は罪悪感からか小左衛門の亡霊に悩まされるようになります。

その後、決まりかけていた舞台の頭取から断りの連絡が入ります。
どうやら仕事が決まりかけるとその先で小左衛門の亡霊が現れて嫌がらせをするので怖くて雇ってもらえないようです。
小平次はつかに別れようと言いますが、つかは死んでも離れない!と答えます。
2人はしっかと抱き合い、絆を深めるのでした。
迷惑な話ですね。何か人足とか違う仕事もNGなのでしょうか?というか出頭しようよ。

困ったつかはお寺に相談することにし、和尚さんを待つ間、悪いのは私だから小平次に嫌がらせしないで!と祈ります。
すると小左衛門の悪霊が現れ、つかの首が絞まり、気絶してしまいました。

つかが気が付くと和尚さんがおり、小左衛門は成仏させるから大丈夫!と言ってくれます。
和尚さんは小左衛門の位牌を渡し、朝夕に祈りを捧げて弔いなさいと助言してくれました。
寺からの帰り道、つかは卓郎に声を掛けられます。
卓郎はつかにあの時のことを謝罪し、2人は別れます。

感想

これは普通です。
お話は単純で演出は画面が赤くなるベタなものですが、なかなか良かったです。

悪党側が亡霊になるので、何だか複雑な気分と見せかけて2段構えになっており、この辺りは上手いと思いました。
ちょっとラストも切ない感じで良かったと思います。

ラストまで(ネタバレ)

卓郎は何か企んでいるようで、つか達の家に上がり込んでおり、小平次と話をしていました。
彼はしきりに詫びを入れに来たと繰り返します。
卓郎は仕事の話を持ってきたようで、小平次に立山で一緒に働こうと誘い、小平次は誘いに乗って出発しました。

道中の古沼で卓郎は本性を現し、小左衛門殺害の件でつかを譲れと小平次を強請ります。
首を縦に振らない小平次に業を煮やした卓郎は彼を殺害してしまいました。
卓郎が沼から上がろうとすると小平次が足首を掴んだので、手首を切り落としてしまいます。
小平次の手首はしつこく卓郎の足首を掴んでおり、卓郎はやっとの思いで手首を投げ捨てます。

卓郎はつかの家に引き返し、小平次が印旛沼に落ちて死んだと嘘を吐きます。
しかし、つかは小平次はさっき帰って来て寝ていると言うのです。
小平次の姿は消えており、布団はびっしょり濡れていました。

卓郎は早速、つかをレイプしようとします。
しかし、つかは小平次の亡霊に姿を変え、卓郎は小平次を切り捨てますが、それはつかでした。
小平次の亡霊は町医者の家を訪ねて門戸を叩きます。

卓郎は取り乱して逃げ出してしまい、沼地の近くでへたり込みます。
背後から小平次の亡霊が現れ、混乱した卓郎は沼へと足を踏み入れ、首根っこを掴まれて沼へと沈みます。

つかは町医者に助けられ、無事で、彼女は小平次が助けてくれたのだと気付きます。
つかは精霊流しをして小平次に感謝しますが、鐘楼は流れず、川岸に戻って来ます。
小平次は亡霊となってもずっとつかの事を見守っているのでした。

ちょっと切ないですが、小平次は罪を犯しているので致し方無かったと思います。
このラストは良くまとまっていると思いました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする