ヤン・シュヴァンクマイエル 短編集
奇怪ワールドが炸裂
制作国 | チェコ |
監督 | ヤン・シュヴァンクマイエル |
脚本 | ヤン・シュヴァンクマイエル |
収録作品
フード
制作年 | 1992年 |
上映時間 | 17分 |
朝食
手狭なダイナーのような所でおじさんがテーブルに座っており、他のおじさんがホバークラフトみたいに滑って来て向かいに相席しました。
後おじさんはテーブルの上の食べ残しを手で払って捨て、なぜか前おじさんが首から下げているメニューを確認します。
後おじさんはメニューの金額を何度も指でなぞって確認するとポッケから小銭を出し、前おじさんの口から舌を出して小銭を乗せます。
そしてガンガンと前おじさんを揺らし、前おじさんは機械のような動きをして後おじさんは前おじさんに目つぶしします。
すると前おじさんの洋服の前が開いて身体の中のエレベーターからモーニングが運ばれてきたので前おじさんは料理を差し出します。
後おじさんはまたメニューを確認し、前おじさんにパンチすると耳からプラスティックのナイフとフォークが出てきます。
超速でモーニングを平らげた後おじさんは前おじさんの脛をキックし、前おじさんのポッケから出てきたナプキンで口を拭いました。
どうやら前おじさんが首から下げているのは説明書のようで、それを見て操作しているようです。
すると今度は後おじさんが前おじさんのようになり、前おじさんは大きく伸びをして壁に勤務した印を付け、ホバークラフトのように帰って行きました。
入れ替わりに客が入って来て後おじさんの胸の説明書を読み、今度は後おじさんが前おじさんの役をやるのでした。
ドアの外では行列ができており、交代でこのようなことが行われています。
非効率的ってことでしょうか?食事が馬鹿らしいとか?
昼食
レストランの席に男性が向かい合って相席しているのですが、ウェイターは忙しそうに通り過ぎます。
スーツの男は胸のナプキンで皿やナイフを磨いたりし、向かいの長髪男もそれを真似して唾でナイフとフォークを磨いたりします。
ウェイターがガン無視するので、お腹が空いた長髪男はテーブルの花を食べようと思ったのですが、スーツ男の手前、マナーを気にしたのか胸に差して誤魔化します。
ところが、スーツ男は花を花瓶から残らず取るとナイフとフォークで食べ始めます。
ならばと長髪はさっき取った花を大口開けて食べ、スーツがナプキンを食べれば汚いハンカチを食べます。
ウェイターの放置プレイが続くのでスーツは靴紐をスパゲッティみたいに巻いたりして自分の靴を食べます。
長髪も負けじと大口開けて自分の靴を食べ、二人は自分の服を食べてスッポンポンになってしまいました。
食べる時の顔が目玉飛び出てて面白いです。BGMに青き美しきドナウが流れてます。
二人がスッポンポンになってもウェイターはガン無視するので、皿やテーブルクロスも食べました。
とうとうテーブルや椅子も食べ、スーツはナイフとフォークで長髪にゴゴゴと迫りました。
何が何やらという感じです。
夕食
禿げたおじさんがタキシード姿でレストランのテーブルに座っており、テーブルには所せましと調味料が並んでいます。
おじさんは眼の前の皿に調味料やオリーブ等の薬味を流し込んでいます。
それが終わると左手の義手にフォークを釘付けし、食事に取り掛かりますが、彼が食べようとしているのは自分の手でした。
このレストランでは自分の足を食べてる人や胸を食べてる女性や陰茎を食べようとしているスッポンポンの人がいます。
スッポンポンの人は自分の皿を「見るな」と手で隠しました。
これは割と面白いです。
お話は意味不明ですが、映像が面白くてテンポ良いです。
石のゲーム
制作年 | 1965年 |
上映時間 | 9分 |
柱時計が12時の鐘を鳴らすと下にあるバケツに向かって蛇口のような所から黒と白の石を吐き出します。
石は分裂したり、合体したり、ピラミッドを作ったりして遊んでいるようで、その内にバケツから下に落とされました。
3時の鐘が鳴ると白と黒と茶色の石が出て来て、跳ねまわったり触れ合って音を出して遊び、その内に下に落とされます。
6時の鐘が鳴ると色んな色の石が出て来て、組み合わさって人間や動物のような形を作って遊び、その内に下に落とされます。
また3時の鐘が鳴り、ベージュの石が砂になり、人間のような砂絵を作ってキスしたりして、その内に下に落とされます。
そんなことを繰り返している内にバケツの底が抜けてしまいます。
次の時間に時計はまた石を吐き出すのですが、バケツの穴を抜けて下に落ちた石はもう遊ぶことはできませんでした。
何だか悲しい気持ちになりました。オルゴールの曲は可愛いんですけどね。
ワイズマンとのピクニック
制作年 | 1968年 |
上映時間 | 11分 |
天気の良い屋外の原っぱにポータブルな手巻きのレコードプレイヤーが陽気な歌を演奏しています。
側に引き出し付きのテーブルが置いてあり、椅子も三脚ありますが誰も座っていません。
また付近にはなぜかベッドやワードロープが置いてあり、プラムの乗った皿が置いてあります。
ベッドには服がペラペラの透明人間が着ているようにハンガー付きで置いてあり、足を組んだりして動きます。
チェスは勝手に駒が動き、テーブルの上の伏せて並べてあるトランプはペロンとめくれ、レコードは勝手に入れ替わって自動演奏します。
その内、ワードロープの前にスコップが穴を掘り始めます。
透明人間の服はプラムを袖から食べて反対の袖から種をポイしており、全部食べました。
引き出しからゴムボールのような物が出て来て膨らみ、椅子はサッカーを始めます。
椅子の蹴ったボールはスコップの穴に落ちたのでポイされて、ピューンと飛んでプレイヤーの針に刺さってしぼみます。
ベッドがゴゴゴと移動して服と一緒にどこかに超高速で消え、椅子も合体してどこかに消えます。
三脚付きのカメラがひょこひょこと出て来ていつの間にか戻った服や椅子を撮影して写真をワードロープに飾ります。
やがて全てが落ち葉に埋まり、スコップの掘っていたのは墓穴でした。
ワードロープからは猿ぐつわをされて縛られた人物が転がり出て墓穴に落ち、スコップに土を掛けられて埋められました。
これは何だか良く分かりませんでした。
肉片の恋
制作年 | 1989年 |
上映時間 | 2分 |
どこかのまな板に乗った肉の塊が包丁で切られ、二枚の厚切り肉になりました。
一枚の肉はペロンと起き上がり、おもむろにスプーンを手鏡のようにしてウットリと自分の姿を見ています。
ここいきなりで笑ってしまいました。肉ですよ。これ。
肉女がスプーンで自画自賛していると背後から少し大きな肉男が忍び寄ったのですが、肉女は悲鳴を上げ、その辺にあった布巾で身体を隠しました。
なんだこれって思いました。リアル肉なので色鮮やかでキモいですが、ちゃんと手みたいなのもあります。
男肉は音楽を流して女肉を誘い、二人はダンスした後、小麦粉が乗った皿の上でセックスしてゴロゴロ転がります。
そしたら肉串が伸びてきて刺され、二枚の肉は油で揚げられました。
これは面白いです。意味わかりませんでしたが。
シュールレアリスムってこういうことなのかーと思いました。(多分、違うと思います。)
フローラ
制作年 | 1989年 |
上映時間 | 1分 |
ベッドに葉っぱ人間のような女性が縛られており、身体を構成するキャベツっぽいのやトマトっぽいのが痛んで崩れます。
彼女はベッドの横の水を飲みたいのですが、動けません。
あっと言う間に始まってあっと言う間に終わります。あっと言う間劇場でした。
これは人形アニメでした。
アナザ―・カインド・オブ・ラブ
制作年 | 1988年 |
上映時間 | 4分 |
粘土人間が男性歌手になって歌を謳いだします。
横には女性の粘土人間が化粧したり色々してて、歌手の人も尺取り虫移動したり粘土になったりして大変です。
女性の粘土人形が壁と一体化したので歌手の人はキスをしてそのまま一体化して壁に消えました。
これは多分、PVかなんかではないでしょうか。
スターリン主義の死
制作年 | 1990年 |
上映時間 | 10分 |
1945年
スターリンの像が手術を受けており、頭が真っ二つにされて脳味噌の中からゴットワルトの胸像が出てきます。
ちょっとグロいです。多分、本物のレバーとか使ってるみたいです。
新大統領の胸像は医師に洗浄されると演説を始めました。
1948年
当時の民衆の様子やバレエ等の文化的な映像が差し込まれ、ゴットワルトの映像が差し込まれます。
その後、彼が行った粛清の際の絞首刑のロープの映像が差し込まれます。
どこかの工場では石膏の型に粘土を詰めて労働者風の人形を大量生産してベルトコンベアーに流しています。
ベルトコンベアーの終点で落とされた労働者人形は自力で歩き出すのですが、テーブルの隅で片っ端からロープを首に掛けられて絞首刑になります。
人形は粘土に戻り、また人形作りの材料にされるということが繰り返されています。
スターリンとゴットワルトのポスターを破って骸骨が出て来て、ブレジネフ等の人物の映像が差し込まれます。
1968年 プラハの春
ドゥプチェクの映像が差し込まれます。
先ほどの行員の人が大小の麺棒を坂の上から転がし、麺棒は道路の上の空き缶等を潰して進んで行きました。
1968年8月21日 プラハの春 弾圧
再びブレジネフの写真が差し込まれますが、破れて骸骨が出てきます。
次にフサークらしき人物の写真が出て来て口からパンを吐き出しました。
ペレストロイカ
ゴルバチョフとヤケシュの写真が並んでいる様子が差し込まれます。
その後、民衆が集まっている様子やスポーツや宗教画っぽいものの映像が差し込まれます。
あの工員おじさんはペンキでタイヤや一斗缶や色んなものにチェコの国旗を描きます。
おじさんはスターリンの石膏で出来た胸像にもチェコ国旗を描き、胸像は再び手術されて中から何か出てきました。
赤ちゃんの泣き声が流れて終了です。
これはチェコの歴史の話みたいです。
プラハからのものがたり
制作年 | 1994年 |
上映時間 | 26分 |
これはシュバンクマイエルさんの紹介ムービーみたいです。
彼の今までの作品等を背景に紹介する流れです。
1934年 プラハで誕生し、ラテルナ・マジカで活躍、政府の圧力に屈せず21本の短編を演出します。
彼の奇抜で強烈な映像は西側諸国でも高い評価を受けました。
そんなようなことを語っている評論家やシュバンクマイエルさんのインタビューが過去の映像と元に紹介されます。
観たこと無い作品も紹介されるのが良いですね。
部屋という食器に嫌がらせされてご飯が食べられない話は面白そうです。
どうやら先ほどのスターリンの胸像の脳味噌等は本物の豚の内臓で作成されたようです。
感想
これは普通です。
前半はクスリと笑えるユーモラスな作品が多かったです。
下ネタも多かったのですが、肉のカップルは笑ってしまいました。
相変わらずヘンな映像が多いのですが、映像自体は面白いです。
古いのも入ってるので表現の移り変わりみたいなのも感じられて良かったです。
他にもドンファンやジャバウォッキーも観ましたが、娯楽性はこのDVDが一番高いかも。
この人の人やモノが滑るように移動する映像が結構好きで、勝手に「シュバンクマイエル移動」とか呼んでます。
今回多かったです。移動。
この人の作品は絵が面白いので、もっと色々観てみたいなあと思いました。