悲しい心霊映画 空飛ぶ生首

空飛ぶ生首

見捨てられ、殺された女の生首があなたを襲う

制作年 1960年
制作国 アメリカ
監督 バート・I・ゴードン
脚本 バート・I・ゴードン/ジョージ・ワーシング・イエーツ
上映時間 75分
出演
リチャード・カールソン
スーザン・ゴードン
ジュリー・レディング

あらすじ

ピアニストのトム(リチャード・カールソン)は故郷の島へ帰ってきていました。
そこに別れたはずの元恋人の歌手ヴァイ(ジュリー・レディング)が彼を訪ねて来てしまいます。
2人は灯台で会うことにし、トムはメグという女性ができたので諦めるように言い聞かせます。
ヴァイは聞き入れず、古い手紙のことで彼を脅迫しようとします。

ヴァイは灯台の展望台の柵に寄りかかりますが、壊れており、転落しそうになります。
トムは助けを求める彼女を見捨て、憐れなヴァイは暗い海に転落しました。
今の所はどっちが悪いのかわかりませんね。
ヴァイも場末っぽい感じですが可愛いと思います。こういう女性が好みな人もいるはず。

次の日、トムは何を思ったかプカプカ浮かぶヴァイの遺体を泳いで引き揚げます。
砂浜でしげしげと見つめていると彼女の遺体はワカメに覆われて消えてしまいました。
トムは驚愕しますが、メグの妹サンディ(スーザン・ゴードン)に呼ばれて我に返ります。
ここ何が起こってるのかわかりませんでした。

サンディは浜辺で腕時計を発見し、名前が彫られているのを見てヴァイって誰だろうと訝しがります。
トムは俺が預かるからとごまかして時計を奪います。
彼はサンディを追い払うと灯台へ上り、手すりを元に戻した後、時計を海に投げ入れます。

その時誰かが灯台に上がってきたので、彼ははっとしますが、彼を捜しに来たメグ(ルージーン・サンダース)でした。
メグにこんな所で何してるの?と聞かれたトムは考え事をしていたとごまかします。
そして2人はイチャコラするのでした。

メグはなんだか香水の匂いがするし、陰鬱だから早く下りましょうと言いだし、2人は灯台を後にします。
サンディ可愛い子ですね。メグの洋服可愛いです。

帰り道の道中でトムとメグは1週間後に控えた結婚式の話で盛り上がります。
そんな2人の足跡を追うように透明人間のような無人の足跡がついていきます。
トムは振り返り、足跡に驚くのですが、メグには見えないようでした。
怯えたトムは今すぐ島を出て本土で結婚しようなどとトンデモないことを言い出します。
メグは怒って独りで家に帰ります。
地味ですが、不気味な演出ですね。ヴァイが執念深いのかトムが悪いのかどっちでしょうね。

メグを見送るトムの横に寄り添うように無人の足跡が現れました。
ヴァイ足デカいですね。大足さんだったのでしょうか?

トムはヴァイのことやメグと喧嘩になったことで、折角サンディが手品を披露してくれても上の空でした。
サンディがキレたので、トムはメグと喧嘩したと打ち明けるとメグは怒ってないし、ダメだったら私と結婚しようと励まされます。

トムがサンディを帰してピアノの練習を始めるとレコードが勝手に再生されます。
彼がプレイヤーを止めてレコードを見るとそれはヴァイの歌のレコードでした。
トムはプレイヤーの電源を抜き、レコードをテーブルの上に放り投げます。
この曲名は原題ですね。「愛の苦しみ」と訳されてます。

しかし彼が再びピアノを弾き始めるとレコードが再生されます。
気味が悪くなったトムはレコードを叩き割ります。
そこにエリスという盲目の女性が花を持って現れます。
彼女は非常に勘が鋭いようで、入った瞬間にトムの機嫌が悪いことに気付き、花を活けてすぐ帰ろうとします。
エリスは恐らくレコードを割る音で機嫌悪そうと思ったのかもしれません。
彼女はここの大家か管理人のようです。

トムは彼女を引き止め、幽霊を信じるかと尋ねると、エリスは信じないと答えつつも興味深い話をしてくれます。
サミュエルという一家が海岸沿いに住んでおり、そこの少年犬を連れて釣りに行ったそうです。
少年と犬は何かあったのか家に戻らなかったそうで、サミュエル一家は引っ越したといいます。
その後、その家を借りた人は数日で出て行ってしまうそうで、少年の霊が出て犬が玄関で騒ぐそうです。

その話をした後、エリスはトムが何かから逃げていると指摘し、心配しました。

トムは毎晩のようにうなされるようになりました。
枕元にヴァイが立ったり、灯台で彼女の霊に付き纏われる夢を見たりするのです。
派手なトランペットのBGMが流れるんですが、意外と地味に怖いです。

目覚めたトムの元にはなぜかヴァイの時計が舞い戻っていました。
なぜか灯台に灯りが灯っているのを見た彼は家を飛び出して調べに行きます。
展望台に駆け上がったトムは辺りを見回します。
彼は「君は存在していないが、振りまわされるのは止めた。メグと結婚する!」と宣言しました。

トムが灯台を立ち去った後、「あなたは誰にも渡さない」という呟きが響くのでした。

トムはサンディにメグと仲直りしたいとお願いすると了承されます。
しかし結婚式の準備は粛々と進めていると言います。
メグにあげる結婚指輪をサンディの前で披露するのですが、指輪が紛失します。
サンディいわく中国、インド、ボルネオでは9歳で結婚するそうです。

突然、トムの側に指輪を付けた手がひらひらと舞います。
トムは手を叩き落としますが、サンディには見えないようです。
どうやら足跡の時もそうでしたが、ヴァイの影はトムにしか見えないようです。

メグと仲直りしたトムは結婚式のドレスを見にメグの家を訪ねます。
この家は相当な金持ちのようです。

玄関から姿の見えない何者かがカーペットにペタペタと足跡を残していました。
メグの母は急に部屋の中が寒くなったとこぼし、サンディとエリスは香水の匂いがし出したと言います。
そしてメグのドレスがワカメまみれになるという微妙ない嫌がらせを受けるのでした。
メグ凄い悲鳴上げてますが、大げさだと思います。

エリスに何か問題があるのではないかと聞かれたトムはヴァイという女に嫌がらせを受けたが、本土に返したと嘘八百を吐きます。
そうとは知らないエリスはまだヴァイが島にいて嫌がらせをしているに違いないと考えます。
トムのことを見てきましたが、やっぱりこいつがヴァイのことを一方的に捨てたのではないか思います。

サンディからトムがいつも灯台に行っていると聞かされたエリスは盲導犬と一緒に灯台に向かいます。
灯台に着くと犬が怖がって座り込んでしまいます。
エリスは仕方なく灯台に独りで入り、嫌がらせは止めるようにヴァイに呼びかけながら、展望台に向かいます。
灯台にはエリスに答えるようにヴァイのあざ笑う声が響き、段々泣き声に変わります。
展望台に着いたエリスはヴァイの声を聞こうとして落ちそうになりました。
エリスにはヴァイが亡霊だと分かったようでした。

メグの家に結婚式のため父親が戻ってきました。
彼はトムの職業にあまり理解を示していないようです。

サンディがトムを捜して灯台に行くと、扉が閉じて締め出されます。
帽子を急に飛ばされ、拾おうとするのですが、帽子はひらひらと逃げて行きます。
彼女はそこでネックレスを拾います。

そこに船乗りの男(ジョー・ターケル)が現れ、サンディにトムの連絡先を聞きます。
不審に感じたサンディは答えず、男は立ち去ります。

船乗りは自力でトムの家を探して乗り込んで来ます。
彼はヴァイを往復10ドルで送り迎えすることになっていたのですが彼女が戻らず、お金が回収できないので訪ねて来たのです。
トムは仕方なく5ドル払って追い払います。

島では鶏が卵を産まなくなったとダイニングで噂になっています。
サミュエルの事件があった時もそうだったようです。
船乗りはダイニングでトムの結婚のことを知り、ヴァイとは浮気に違いないと見当を付けました。
彼は結婚式のリハーサル中のトムを訪ねて行き、トムを強請ります。
自業自得のような気がします。

トムは婚前パーティでピアノを披露しながら、サンディの腕にヴァイのネックレスを発見して愕然とします。
カメラマンがトムとメグの写真をインスタントカメラで撮影してくれたのですが、写真にはヴァイの生首が写っていました。
トムは動揺して写真を奪い取り、酔った勢いでヴァイのことを少しメグに漏らしてしまいます。
メグは写真を確認しますが、やはりヴァイの顔は写っていませんでした。

トムがピアノを練習しているとヴァイが彼に語りかけたので声の方向を見てみます、
するとそこには場末っぽい笑顔のヴァイの生首が浮かんでいるではありませんか!
ちょっとこれは可愛いですね。でも全然怖くないです。ヴァイのたれ目がいい感じです。
空飛んでないので邦題詐欺だと思います。

ヴァイは私はめっちゃ喋れるようになったから殺されたことバラすからね!と言い放ちます。
直後、ヴァイはトムがあたしを殺したよー!と連呼し始めます。
これはウザいと耐えられなくなったトムは彼女の生首を掴むと布に包んでポイしてしまいます。
包みは玄関の階段をゴロンゴロンと転がります。
そこに現れた船乗りが包みを拾い上げてしまいます。
トムは包みを取り返しますが、中には花瓶と花が入っていました。

船乗りはヴァイが島にもいないし島を出ていないのはおかしいだろうと本格的にトムを脅し始めます。

感想

これはなかなか面白いです。
なんというか昔、両親と見ていたアンビリーバボーという番組に心霊再現ドラマをやっており、それ系の怖さのような気がします。
どうでもいいですが、特に車椅子をキーキー押す看護婦の話が一番怖かったです。
多分ですが、トム役の人が怖がるのが上手なような気がしていて、そのせいもあるかも。

役者さんもなんだか皆さん演技うまいと思いました。

これヒロインはサンディでよね。
トムは色々と行動が雑すぎると思いました。

私は本当にヴァイの霊がいたのかどうか考えてしまいました。
・いない節
全てがトムの幻想で、本当はいなかった。
エリスも音を聞いていているが、あの人はオカルトに傾倒しているのではないか?
・いた節
誰も見ていない砂浜に足跡が付いていた。
エリスも声を聞いており、彼女は霊は信じないと答えており、オカルトに傾倒しているわけではない。
カーペットにも足跡が付いていた。

色々考えたのですが、私はちょっといた節を思いつきました。
・ちょっといた節
彼女は姿を現したり騒いだりする力は無い。
もしあるのであれば皆の前に姿を現してトムを糾弾するはず。
声や足跡やドレスの嫌がらせは可能。
後はやっぱりトムの罪悪感から来る幻想。彼はヴァイを捨てていた。
と思いましたが、どうなんでしょうね。

他にもヴァイは存在していて、嫌がらせをすることでトムを破滅させたい節も考えられます。
まあいずれにせよヴァイがトムを深く愛しているのはわかりました。

短いですし、意外と面白いので暇つぶしに見る分にはいいと思います。
ちょっと気まずいのはキスシーン位でグロも無いので一家団欒時やお食事時にも安心してご鑑賞いただけます。
ただ生首飛ばないのでご注意ください。

私はこの映画は好きです。

ラストまで

なんと船乗りはサンディから借りたネックレスまで持っていました。
もうこうなっては仕方ないとトムは人目を避けるため、船乗りを灯台に連れ出します。
船乗りは5千ドル要求してきました。
ごじゅうまんえーーーん!!

困ったトムの横にヴァイの亡霊が現れ、殺せばいいじゃないと囁きます。
トムはヴァイに嫌だと答えますが、船乗りはそれを聞いて嫌なのかよ!と答えます。
ヴァイの亡霊は私も殺したんだからいけるでしょ。後ろの鉄パイプ使いなさいとけしかけます。
トムはとうとう船乗りを殴り殺してしまいます。
変な棒切れで殴ってるだけなので多分、生きてると思います。
ヴァイのセリフはこれ完全にトムの心の声のような気がします。

トムは船乗りを引き摺っていきます。
しかしやること成すこと雑なトムは殺害現場をサンディに目撃されていました。

結婚式の当日、サンディは大好きなトムがあんなことをするなんてと落ち込んでいます。
姉と話しをした彼女はトムの元へ向かいます。
このセリフは前にサンディが言ったセリフとかぶってますね。

サンディは友人が殺人を犯したらどうする?とそれと無くトムに匂わせてしまいます。
そして結婚式が行われ、牧師が異議申し立てを募集しますが、サンディは黙っていました。
その時、教会の扉が凄い勢いで開かれ、バージンロードの花が次々に萎れていき、花嫁のブーケも萎れます。
これ上手い演出ですね。

トムは灯台に上り、ヴァイに敗北宣言をします。
結局結婚式は中止になったようで、メグとは別れてここを去ると言います。

そこにサンディが現れ、船乗り殺害の件を尋ねます。
話し合いの結果、サンディは誰にも言わないと言いますが、トムは彼女を殺害しようとします。

その頃、サンディの家では彼女がいないので捜しており、灯台へ行ってみようということになります。

トムはサンディを展望台に連れだし、突き落そうとすると、一陣の風と共にヴァイが現れます。
トムはヴァイに巻き込まれ、暗い海目がけて転落します。
サンディは家の人に救出されました。
ヴァイはなんだかララァみたいでした。カッコ良かったです。
多分、ヴァイはモンローさんを意識してると思います。

トムの遺体はヴァイの遺体と共に回収されました。
2人の遺体は砂浜に並べられ、ヴァイの遺体はまるでトムに抱き着くように動きます。
その指には結婚指輪が光っていました。

エンドマークで終了です。

ちょっとヴァイが切ないエンドですね。
最初にヴァイを見捨てた時点で終了だったんでしょうね。

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