怪奇十三夜 番町皿屋敷
お皿を数えてひどい目に遭う話
制作年 | 1971年 |
制作国 | 日本 |
監督 | 石井輝男 |
脚本 | 西沢治 |
上映時間 | 48分 |
出演 |
中尾彬 |
津川雅彦 |
藤田弓子 |
だいたいのあらすじ
魚屋の岩吉(津川雅彦)が荒れ果てた番長皿屋敷跡で昔のことを回想しています。
この屋敷のかつての主で旗本の青山播磨(中尾彬)は腰元のお菊(藤田弓子)を深く愛していました。
菊も播磨を愛していましたが、身分が違うので私のことは忘れて欲しいと播磨に言います。
播磨は阿部家との縁談を断っており、周囲は播磨が菊に入れ込む様子を面白く思っておりませんでした。
菊は笹野甚内(藤岡重慶)から呼び出され、播磨の前で家宝の皿を数えさせられます。
皿は10枚あったのですが、なぜか9枚しかありませんでした。
笹野は菊が皿を割ったと言うのですが、もちろん身に覚えはありませんでした。
しかし宗平とお杉(石井富子)は菊が皿を割って井戸に投げ込んでいるのを見たと証言します。
菊は本当に知らないと申し開きをするのですが、播磨は証人が二人もいることから菊を疑いました。
播磨は菊がこの家の慣習を壊したかったのだと考え、いよいよ菊と結婚しようと考えます。
笹野は「菊は殿の気持を試そうとして皿を割った」と反対し、彼女が兄の岩吉の家で「殿の気持を試そうと思っている」と話していたと告げ口しました。
播磨はコロッとそれを信じてしまい「男の心を玩びやがって!」と激おこして菊の所に戻ります。
菊は「皿のことは本当に知らないし、玩んでないから」と答えるのですが、播磨は取り乱して皿を投げてガンガン割ります。
そして刀を抜くと菊に斬りつけ、庭に追い詰められた菊は井戸へと落ちて行きました。
スローで血が迸る演出が上手いです。
その後、播磨の叔父である青山兵部(城所英夫)が一族を引き連れ、播磨が阿部家の縁談を断ったことで怒鳴り込んできます。
阿部家というのは旗本の目付け役で陰険な男だということで縁談を断ったりしたら嫌がらせを受けるのが必定だそうです。
青山の屋敷では笹野が宗平、杉と共に菊の遺体を井戸から引き上げようとしていましたが、井戸に降りた宗平は菊の遺体にカッと睨まれます。
杉は桶に張った水の中に「くまい」と恨めしそうに皿を数える菊の幻影を見てしまい、笹野も手に皿の破片が食い込んで井戸に引き込まれそうになる幻覚を見ます。
恐ろしくなった三人ですが、宗平が菊の遺体に紐を掛けたので、三人で引っ張り上げようとします。
ところが、紐が切れてしまい菊の遺体は再び井戸の底に落ち、笹野は今日の所は菊引き上げを断念します。
井戸のシーンが意外と怖いです。
播磨は帰宅し「菊が皿割ったから手打ちにした」的な役所に届ける文をしたためていたのですが、硯の炭が真っ赤に染まります。
すると女性の「うっうっうっ」とすすり泣く声が聞こえたので、刀を抜いて庭に飛び出します。
突然播磨の前にあの皿が現れたので、彼は刀で皿を斬りまくります。
彼が皿を斬ると菊が「いちまい…にまい…さんまい…よまい…」と皿を数える声が響きます。
一方、宗平と杉も菊が皿を数える度にこちらを睨みつけるという幻覚を見て怯えます。
そこに播磨が現れ、菊の遺体を引き上げるように命じました。
ということで笹野と宗平、杉は再び菊の引き上げにチャレンジします。
逆さ吊りで上がって来た菊は「皿のことは本当に知らないんです」と播磨に訴えるので播磨は紐を斬ってしまいます。
菊は井戸の底で皿を九枚まで数え、すすり泣くのでした。
笹野はすっかり取り乱した播磨を「あれは幻だからと宥めます。
感想
これはちょっと面白いです。
私この原作は好きで「いちまい、にまい…」と数える所が子供心にも恐怖でした。
これは少しアレンジしてあり、それが良い効果を出しているような気がしました。
でも何となく誰が黒幕なのかはすぐ分かりました。
演出もなかなか良くてちょっと怖いです。
私としては播磨が悪いような気がするのですが、菊は播磨のことを許しているようです。
菊の人がちょっと可愛いですね。
岩吉がハンサムでカッコよかったです。
直接描写は少ないですが、血の量が凄いです。
菊の出番が少なかったのが少し残念です。
これはこのシリーズ内では面白い方に入ると思いました。
ラストまで(ネタバレ)
次の日、播磨は何となく岩吉の家を訪ねていました。
まさか菊を斬ったとは言えませんでしたが、菊が播磨のために身を引こうとしていた事実を聞かされます。
播磨は怒りに身を震わせて屋敷に戻り、岩吉も只ならぬ気配を感じて後を追います。
屋敷に戻った播磨は早速、宗平と杉を問い詰めると笹野が現れ、全て自分が指示したことだと白状します。
笹野は播磨は阿部家の娘と結ばれてお家安泰になることを望んでおり、そのため菊が邪魔だったのです。
外で話を聞いていた岩吉は菊が手打ちにされたことを知り「皿と人の命、どっちが大切だ」と匕首を抜いて播磨に斬り掛かります。
しかし笹野が割って入り「悪いのは私だ」と岩吉から匕首を奪って自害してしまいました。
あまりのことに岩吉は呆然としてしまい、播磨はこれは兵部一味の仕業に違いないと勘付きます。
事情を知った岩吉は播磨を止めるのですが、播磨は刀を抜き、兵部の屋敷に殴り込もうとします。
しかし兵部は一門を阿部家縁談の件でぞろぞろと連れて播磨を訪ねてきていました。
好都合とばかりに播磨は兵部一味に斬り掛かり、一味が菊の亡霊に見えたので狂ったように刀を振り回します。
播磨は八人の手下を斬り捨て、憎っくき兵部も斬り捨てました。
岩吉は播磨に逃げるように勧めますが、播磨は放心したようでした。
その後、播磨は井戸の奥で菊が手招きしたような気がして自害して井戸に身を投げました。
屋敷跡を眺めていた岩吉は井戸から二羽の蝶が飛んできたのを見て「あれは播磨と菊なんだろうなあ」と考えるのでした。
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