死国
この世で一番死に近い場所。
制作年 | 1999年 |
制作国 | 日本 |
監督 | 長崎俊一 |
脚本 | 万田邦実/仙頭武則 |
原作 | 坂東眞砂子 |
上映時間 | 100分 |
出演 |
夏川結衣 |
筒井道隆 |
栗山千明 |
だいたいのあらすじ
高知県北西部 矢狗村
日浦照子(根岸季衣)は娘の莎代里を媒介としてイタコの口寄せのような交霊術を行っていました。
莎代里はその仕事が嫌でたまらず、幼馴染の明神比奈子と秋沢文也と遊んでいる際に父・康鷹(大杉漣)に呼び出されると行きたくないと抵抗していました。
その後、比奈子は東京へ引っ越し、莎代里と文也とは別れますが、彼女は別れ際に莎代里と鈴を交換しました。
久し振りにこの地に帰って来た比奈子(夏川結衣)は日浦家を訪ねますが応答無く、二階にはこちらを見ている何者かの人影がありました。
その後、村を歩いていた比奈子は小学校の同級生だった浅川ゆかり(大寶智子)と再会し、莎代里は16の時に川に落ちて死んだと聞かされました。
また村では祭りが開かれており比奈子は文也とも再会し、河原で日浦家の件を話すのですが、照子は毎年お遍路に出ているそうで、康鷹は山で事故に遭ってずっと入院しているそうです。
そんな二人の様子を少女が見ていたのですが、比奈子がその方向を見た時には消えていました。
一方、照子はなにやら呪文を唱えながら、八十八か所巡りをしていました。
ある日、谷の付近にある地蔵の首が全てもがれるという怪事件が発生し、役所勤務の文也が対応するのですが、先輩が言うにはあの場所は曰く付きで日浦家しか出入りしないので、関わるなということでした。
比奈子は文也から莎代里(栗山千明)の16歳の時の写真を見せてもらい、二人が付き合っていたと聞きました。
その夜、比奈子は莎代里が布団で寝ている自分に向かって手を伸ばして来るという悪夢を見るのですが、莎代里が出現した付近には比奈子があげた鈴が転がっていました。
翌日、比奈子は谷で柵を直す作業をしていた文也を訪ねて昨夜の夢の話をし、「莎代里は何か言いたいことあるのかな?」と尋ねると文也も実は俺も莎代里を見たと言います。
文也によれば莎代里は川で死んだのでは無く、口寄せの儀式の際に悪霊に殺されたという噂があるそうで、二人は謎を追って、谷に入ることにしました。
林を抜けた先には真ん中に細長い石碑が建った池と洞窟がありましたが、比奈子は怖くなったので引き揚げました。
村では子供が死んだはずの祖父の亡霊を見ていました。
翌日、比奈子は康鷹の病室を訪ね、目は開いているが意識が無く8年間寝たきりだと看護師から聞かされますが、彼は天井のシミをずっと見つめており、それは数字の「16」に見えました。
ゆかりは比奈子に「あんたはよそ者だから村のことに関わらない方がいい」と忠告し、比奈子が引っ越した後に莎代里が「子分の分際で私より先に村を出るとは生意気だ」と比奈子が出していた手紙を燃やしていたことも教えました。
わざわざ言わなくてもと思いました。
村人のサカイという老人が亡霊を見て倒れるという事件が発生し、比奈子は近所の子から家に投石され、「お前がいるとお化けが出る」的な事を言われました。
文也は民俗学者の小田(諏訪太朗)を呼んで、谷の奥を見てもらうことにしますが、小田は洞窟は死者が肉体を持ったまま存在している黄泉の国の入り口の象徴であることが多いと言います。
また洞窟の奥には鳥居と何かの儀式を行った形跡があり、杖が15本ありました。
文也がその後調べた所、康鷹はお遍路に関する本を書いており、それによるとお遍路は四国を死者が溢れる死国にしないための結界を張る儀式だったのだそうです。
どう見てもひどい駄洒落だと思いますが、あくまでも個人の意見です。
私が言ってる訳じゃないので、四国の人は私に怒らないでください。
勝手に日浦家の裏口から不法侵入した比奈子と文也は照子が15回お遍路をしたこと、周る順が逆であることを知りました。
文也は莎代里に強烈に愛されたことからずっと彼女に縛られた気になるそうで、どんな相手と付き合っても莎代里と比べてしまい、上手く行かないそうです。
彼は莎代里のことを忘れさせてほしいとか比奈子に言い出し、比奈子はそれにホイホイ乗って、早速二人はHしました。
これはひどいと思いました。
莎代里はジェラシーだったのか、亡霊化して文也の肩に手を置いたり、比奈子に抱きついたりして嫌がらせをします。
比奈子は子供の時に川で溺れ、莎代里に助けられたことがあるのですが、実は莎代里が比奈子を殺そうとしていたという記憶が甦るりました。
この村は結界の中心にいちしており、日浦の人間は谷の池の石碑を四回回って黄泉の国を制御するのだそうで、右回りだと封印、左回りだと解放だそうです。
小田はその説をイマイチ信じていないそうですが、結界を張る作業をしているという修験者を二人に紹介してくれました。
尚、文也はもう莎代里のことを何とも思っていないそうで、突然彼女の写真を握りつぶすというヤバい行動を取っていました。
感想
これは普通です。
地獄の門だとかそっち系の話なのですが、ちょっとガッカリです。
というのも「死者の国!死国!」とか大風呂敷を広げておいて、単なる三角関係話だからです。
確かに生まれて来るのはターミネーター張りにヤバいのですが、動機が恋愛なのであまり危機感が無いです。
前半は面白そうなのですが、段々と残念なことになります。
雰囲気はいいのですが、あまり怖さは無いです。
強いて言えば村社会怖いとかそんなことしか感じませんでした。
照子の儀式も何だか重みが無い感じで、「儀式演じてます」的で面白くないです。
仙頭が現れる展開もちょっとなあという印象でした。
ロマンスにするのはいいとは思いますが、もう少し主役の三人に感情移入できる感じだと良かったかもしれません。
比奈子は冒頭に彼氏と喧嘩中みたいな感じだったし、文也はイマイチ何したいか分かりませんでした。
目的が明確なのは莎代里なのですが、二回鯖折りする意味がわかりませんでした。
後、ゆかりは嫌なキャラだなあと思いました。
比奈子以外の人は地元の方言で喋っているようでした。
比奈子の人はあんまりこの役に合って無いような気がしてボンヤリした印象で、莎代里の方が強烈でしたね。
文也も抑えた感じで淡々としており、もしかすると「大人対子供」と言うのを強調したかったのかもしれません。
それにしても個人的には比奈子と文也が並んでいると不倫カップルにしか見えませんでした。
ラストまでのあらすじ
照子は康鷹の病室を訪ね、「もう直あの子が甦るから邪魔しても無駄!私の勝ち!」と「ウヒヒヒ」と笑いながら勝利宣言しており、なぜか天井の16の文字がカビのようなもので消えていました。
比奈子達は修験者・仙頭直朗(佐藤允)に会い、照子がやっているのは「逆打ち」という黄泉の国の死者をこの世に甦らせる術だと言います。
遍路の関所を逆向きに巡ることを死亡した人の歳の数分繰り返すと、この世に未練のある死者が肉体を持って甦るのだそうです。
仙頭は何としても照子を止めないと大変なことになると二人に言いました。
康鷹は妻に意地悪されたショックで死亡したようで、照子は池の石碑の周りを左回りに回り、仙頭はお湯を浴びて対抗していました。
しかし仙頭のお湯浴びは無意味だったようで、照子は16本目の杖を洞窟に立てて、一心に呪文を唱え、洞窟の奥のタールの池からは莎代里が這い出して来ました。
この池で照子が莎代里を洗っているシーンはなかなか良いです。
照子の狙いは日浦の血を絶やさないことで、康鷹も彼女が崖から突き落としたのだそうです。
あのー、死者の大群はまだでしょうか?
ということで照子は莎代里を家に連れ帰り、太鼓を叩いて何かしていると莎代里は喋れるようになりました。
文也に会いたいと訴える莎代里に照子は「会おう、会おう、二人で女の子を産んで、この家を継ぎなさい」と言うのですが、「文也Yes、日浦家No」である莎代里は怪力で照子に鯖折りを仕掛けて背骨を折って殺害しました。
やがて比奈子達が村に戻って来て、三人は谷の池で対峙しました。
莎代里は比奈子に「お前みたいなノロマには文也は渡さん」的なことを言い、比奈子は「お前死んでるだろ」と言い返すのですが、莎代里は「死んだら気持も死ぬのか」と詩的なことを言って切り返しました。
口喧嘩バトルに勝った莎代里は「私と一緒に村を出よう」と文也を誘い、彼は比奈子の手を振りほどいて莎代里に近付きます。
絵的には不倫同士カップルの彼氏がJKに盗られちゃった><という感じです。
そして二人は熱いキスを交わして抱擁し合うのですが、うっかり莎代里が鯖折りを出してしまい、文也は死亡しました。
取り乱して絶叫する莎代里でしたが、そこに仙頭があらわれ「怪力女死者はあの世に帰れ」と呪文を唱え始め、ずっと空気の比奈子がそれを見守っています。
プライドの塊だった莎代里は比奈子に「大人になって文也と愛し合いたかった。比奈子が羨ましい」と言いますが、仙頭の杖の一撃で倒されて洞窟の奥に運ばれます。
仙頭は莎代里を洞窟の沼に投げ込んで杖を崩そうとするのですが、莎代里も這い上がろうと頑張り、様子を見に来た比奈子は彼女に手を差し伸べて助けようとしてしまいます。
しかし文也が超高速で現れ、沼に飛び込むと莎代里を抱いてボコボコと沈み、仙頭が急いで杖を倒します。
ということで平和が戻り、そこそこ活躍した仙頭は空気だった比奈子に「あんたは生きなさい」的なことを言いました。
比奈子は二人の魂が登ったという山に手を合わせて去りました。
エンドロールで終了です。