与茂七さん好感度高いです 新釈四谷怪談(前編)

新釈四谷怪談(前編)

脱獄者にそそのかされてひどい目に遭う話

制作年 1949年
制作国 日本
監督 木下惠介
脚本 久板栄二郎/新藤兼人
原作 鶴屋南北
上映時間 85分
出演
上原謙
田中絹代
滝沢修

だいたいのあらすじ

土砂降りの雨の中を何処かの牢獄から囚人達が大脱走しており、逃げおおせた者の中には直助権兵衛(滝沢修)と小仏小平(佐田啓二)が居りました。
脱獄した小平は早速、想いを寄せていた茶屋の娘に会いに行ったのですが、その娘は茶屋を辞めていました。
がっくりした小平に同郷の与茂七(宇野重吉)が声を掛けて家へと招き入れました。
家に来て与茂七の妻お袖(田中絹代)に会った小平は彼女が茶屋の娘・岩と瓜二つだったので仰天してしまいます。
小平が言う事には岩に想いを寄せる余りに店のお金を使いこみ、その咎で投獄されたそうです。

実は袖の姉のお岩(田中絹代)こそが小平の恋い焦がれていた相手だったのですが、岩は既に四谷に嫁いでいました。
岩の夫である民谷伊右衛門(上原謙)は神社で暴漢を撃退し、暴漢に絡まれていた一文字屋の娘・お梅(山根寿子)を救いました。
その現場を見ていた直助は「いやー大したもんだ」と伊右衛門に近付いて一緒に一杯やります。
そこに按摩の宅悦(玉島愛造)が飛び込んで来て「岩様が流産された」と知らせに来ました。
踏み台から落ちたということで、岩ラブな伊右衛門は大慌てで帰宅します。

岩はその後寝込んでしまうようになり、伊右衛門は段々と外で呑んだくれる事が多くなりました。
袖は落ち込む姉を元気づけようとちょいちょい民谷家に顔を出すようにしていました。
彼女は岩に小平の話をしたのですが、彼は単なるストーカー男で岩に片思いしていただけのようでした。
一方で伊右衛門はお城に勤めている侍を見るたびに「仕事が欲しいなあ」と思いを馳せていたのでした。
その頃、直助は一文字屋の梅の乳母であるお槇(杉村春子)に接触して伊右衛門の事を伝えていました。

直助は梅と伊右衛門の密会の場を提供し、自分は槇と肉体関係を結んで懇意の仲となりました。
梅は一目見た時から伊右衛門にのぼせており、「このままでは私は婿を取る」と伊右衛門に泣きつきました。
一方、岩は小平にストーカーされて必死に追い払っていました。
こういう時は旦那が居ないと辛いですね。
茶屋での密会の帰り道、直助は伊右衛門に岩と別れて梅と結婚すればいいと勧めました。
しかし貧しさでイライラしている感のある伊右衛門はなんだかんだで岩ラブなので、はいそうですかとは転びませんでした。

伊右衛門は帰宅したのですが、小平が落として行った煙草入れを発見し、「お前浮気しただろ!」と責めるのですが、岩は潔白だったので「私に妬いてくれて嬉しい」と返してしまいました。
嬉しくなった岩はうっかり伊右衛門に抱き着いてしまったのですが、「武士の妻がはしたない」と窘められてしまいました。
その後、槇の入れ知恵で梅は「縁談は嫌だ」と自殺騒ぎを起こし、梅の父である喜兵衛(三津田健)は頭を抱えてしまいます。
植木職人として一文字屋に潜り込んでいた直助は喜兵衛に伊右衛門の件を打ち明けました。

直助は早速、飯屋でお酒を呑んでいる伊右衛門に梅の件を知らせるのですが、そこに居合わせた小平が「お前が民谷か!」と怒鳴りつけ、自分の岩への想いをブチまけます。
先日の煙草入れの件で小平の名を聞いていた伊右衛門は顔を曇らせ、直助が「まあまあ」と小平を外に連れ出します。
直助は小平に「俺が力になってやる」と伊右衛門を引っ張り回すからその隙に手籠めにしろ!と焚きつけました。

その後、喜兵衛は伊右衛門を呼び出して浪人になった理由を訪ねたのですが、伊右衛門は蔵破りに遭って責任を負わされたのだと返答しました。
喜兵衛は「面倒を見てくれる女中とはキッパリ分かれて梅と結婚してくれれば仕事の世話もします。」と約束しました。
帰り道に直助は「小平が岩を何としても手に入れる」と息巻いてたと伊右衛門に吹き込み、「岩が浮気してたら追い出せばいいじゃん」と唆しました。
その頃、果たして岩は小平に襲われていたのですが、宅悦が来たので追い払ってもらっていました。
宅悦ガチで小平を殴りに行ってて凄いです。

宅悦がガチで追い払ってくれた際に足首をひねってしまったので、岩は彼を家に上げ、足首を冷やしてあげました。
岩はきっちりと戸締りしたので、帰宅した伊右衛門は宅悦の草鞋を見て誤解してしまいました。
隙間から様子を窺っていた伊右衛門は堪らず家に怒鳴り込むのですが、宅悦に説明を受けて誤解を解きました。
小平はその後、行方をくらまし、小平の母は与茂七と袖の家に謝罪に来ました。

伊右衛門は小平事件があったので、たまには嫁孝行でもしようと思ったのか岩を釣りに連れ出しました。
岩は嬉しくて「早く元気になって赤ちゃんが欲しい」的な事を話していたのですが、伊右衛門が持ち出したのはまさかの別れ話でした。
伊右衛門は「お前も俺と別れた方が幸せになれる」と言い出し、岩は「伊右衛門無しでは生きられない」的な返答をしたので伊右衛門は「わかったわかった」と彼女を宥め、岩は帰り道にワンワン泣いていました。

伊右衛門は直助に「岩が不憫で捨てられない」と話し、梅との件はノーカウントで!と取り消しを申し出たのですが、直助は毒薬を伊右衛門に渡そうとします。
嫌だ嫌だと断ってメソメソしていた伊右衛門でしたが、とうとう毒薬を受け取ってしまいました。

感想

これは普通です。モノクロ映画です。
ちょっと普通の四谷怪談とは違っていて伊右衛門が優柔不断な人物として描かれています。
出世もしたいけど、妻の事は捨てられないような感じで、直助という男が絶対的な悪役を担当しています。
悪いのは伊右衛門なので肩を持つつもりは毛頭ないのですが、ちょっと岩も重いです。
普段観ている映画とは違う意味で観ていて辛いです。
うーん、何というか他人の貧乏生活を観ているようなそんな辛い気持ちになります。
カラッとした感じならいいのですが、ドンヨリとしていて、それでいて夫婦仲良しシーン等もあるので辛いのです。
(健全映画なので夜の仲良しシーンは無いです。念のため。)

岩と袖は同じ女優さんが演じてるのですが、明るい袖と暗い岩は別人のようです。
彼女が伊右衛門を喜ばせようと頑張れば頑張る程、伊右衛門が苦悩して行くというパターンです。
この夫婦は落としどころが無いような気がします。
岩はかなり芯がしっかりしているので、何だかんだで自分のポリシーと譲れないポイントが明確なのですが、伊右衛門にはそれが無いのです。

人間関係って異性でなくても長く付き合うためにはお互いに妥協点が多少は必要な気がするのですが、伊右衛門はその辺りが分かりにくい人物だと思います。
今回は梅の件があるので言い辛い点があると思いますが、この人は前からこうだと思いました。
こういう人は自分の意見をハッキリ言わないので、「何が嫌なのか」をその場で聞かないと分からないので面倒です。
岩はその辺が上手くできてないようにも感じます。
岩が元気になっても伊右衛門はヘンな壺買わされたり、マルチに目覚めたりしそうで先が思いやられます。

そしてホラーじゃないのかー、ソッカーと観ていたらまさかのホラー展開もあるので油断も隙も無いです。
ホラー展開の中にもドロドロ混ぜて来るという。
その反面で一枚絵のような綺麗なシーンが意外と多くて、高尚な感じがする不思議映画です。

登場人物では私は与茂七さんが好きです。
この映画ではザ・普通でちょっと呑気という感じの人でオアシスのような存在であり、袖も幸せそうです。
ちなみに宅悦さんもいい人で按摩さんですが、今回は目が見える設定みたいです。
宅悦さんが小平を杖でボコボコにしていた時には思わずガッツポーズをしてしまいました。

直助の共謀者としてお槇という女性が出てくるのですが、これがまた悪い人です。
立場が変わればこの人でも引っ張っていけそうな悪ツートップです。
サッカー詳しくないですが、超攻撃的フォーメーションとかそういう感じでしょうか?(違うと思います。)

岩の人は美人じゃないと思いますが、ちょっと色気があって不思議な人ですね。
岩は重いけど、袖が可愛く見えてくる不思議感があるので明るい役がいいのかと思いますが、演技的には岩のが凄いと思います。

ラストまでのあらすじ

帰宅した伊右衛門は甲斐甲斐しく身の回りの世話をしてくれる岩を見て心が痛み、「さっきはワンワン泣いてすみません」と謝る岩を「気にするな」と慰めます。
その後、伊右衛門は岩を不憫に思いつつも、とうとうあの毒薬を飲ませてしまいました。
そしてやらかしてしまった後も伊右衛門はメソメソと自戒し、苦しくなったのでまたまた「別れてくれ」と岩に告げます。
しかし岩は上方で仕官の口を捜すという伊右衛門に「どこまでも着いていく」と言い張るのでした。
とうとう「私を捨てるなら殺してくれ」と言い放つので伊右衛門は土下座して「苦しいから別れてくれ」と懇願します。

そんな別れ話の最中に岩は揉み合いになった拍子に行水用に用意していた熱湯に顔を突っ込んでしまいました。
伊右衛門が岩を介抱していると直助が現れ、「火傷に効く妙薬がある」と言って薬を持ってきました。
翌日、直助と飯屋で呑んでいた伊右衛門は「岩とは別れられない」と告げたのですが、直助が持ってきた妙薬とは毒薬だったのです!
その晩、岩は顔の痛みを訴え、彼女の顔を見た宅悦は息を呑みました。
鏡を要求する岩を宅悦が止めるのですが、鏡を見た岩は自分の顔が醜く変形しているのを知ってショックを受けます。

伊右衛門が帰宅したので宅悦は逃げ帰り、伊右衛門も岩の顔を見てショックを受けました。
しかし「こんな顔になった私を見捨てないでください」と泣き縋る岩を抱きしめつつも伊右衛門はとうとう再び自分の意志で毒を岩に呑ませました。
岩は「苦しい」と絶叫し、伊右衛門の名を呼びながら倒れました。
そこに小平が現れたので直助が匕首を手に斬り掛かり、伊右衛門に直助を斬るよう指示しました。

伊右衛門は直助を斬り捨て、亡霊となった小平は岩の亡霊を抱いて消え、火の玉が二つ民谷家を出て行きました。
また、直助は薬を持って来た宅悦に斬り掛かっていました。
時を同じくして袖の家では誰かが玄関を叩き、開けてみると誰もいないという怪異が起こっていました。

「後編にご期待ください」的なテロップが出て終了です。

この映画なかなか良作だと思いますが、観ていて辛いです。
後半はこの辛さが報われる事を心から願います。
脚本が独自路線なので、もしかしてスカッとする展開もありかもと期待してます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする