情念怖いです 怪談(2007)

怪談(2007)

ずっと、ずっと、ずっと、あなただけ。

制作年 2007年
制作国 日本
監督 中田秀夫
脚本 奥寺佐渡子
原作 三遊亭円朝
上映時間 119分
出演
尾上菊之助
黒木瞳
井上真央

だいたいのあらすじ

高利貸しを営んでいた皆川宗悦(六平直政)は年末に深見新左エ門(榎木孝明)の家に取り立てに行き、借金を踏み倒れされた挙句に手討ちにされてしまいました。
新左エ門は宗悦の遺体を彼が振り上げた鎌と共に累が淵に沈め、宗悦の娘・志賀と園は孤児になってしまいます。
それ以来深見家では不幸が続き、とうとう新左エ門も発狂した末に妻を殺害して自害し、家は取り潰しとなりました。

その25年後の江戸
新左エ門の息子・新吉(尾上菊之助)は使用人の勘蔵(光石研)に引き取られてタバコの行商をしていました。
ある日、宗悦の娘で浄瑠璃の師匠をしている豊志賀(黒木瞳)は新吉と出会い、贔屓にするようになりました。
豊志賀は美人だったので男の弟子も沢山集まって来ていたのですが、やはり因縁なのか新吉に心惹かれるようになります。
実は新吉も豊志賀に惹かれており、その心を断ち切ろうと暫く豊志賀の所には顔を出しませんでした。

心配した豊志賀は新吉を迎えに行って家に招き入れ、新吉はとうとう思いのたけを打ち明け、その晩、二人は関係を持ってしまいました。
翌日、豊志賀の妹・園(木村多江)が訪ねて来て二人の関係を知るのですが、彼女は宗悦の位牌が仏壇から落ちるのを目撃しました。
確か原作だと園は深見新五郎に殺害されてましたが、今作だと生きてるようです。
園は凄く薄幸そうです。

その後、新吉はヒモのようになり、豊志賀の家に囲われるようになりました。
彼は豊志賀の弟子であるお久(井上真央)と出会い、庭にあったアジサイをプレゼントしたのですが、そこを豊志賀に見られて嫉妬されるようになります。
豊志賀の浄瑠璃教室は新吉を引っ張りこんだ事で男性の弟子が来なくなり、評判も下がってしまい良家のお嬢さん等も来なくなってしまい、経営に行き詰るようになります。
久は家で母親に虐待を受けており、豊志賀の稽古だけを楽しみにしていたのですが、そういう事情で機嫌が悪かった豊志賀に追い帰されてしまいました。

園は豊志賀と新吉の関係を猛反対する宗悦の夢を見たのと、自分も新吉を快く思っていなかったので、豊志賀に「新吉の事は忘れて故郷に帰ろう」と進言しました。
豊志賀は猛反発したのですが、その時に三味線の弦が切れるという不吉な事が起きたのでカリカリしていた彼女は園を叩き出し、絶縁を言い渡しました。
新吉も豊志賀の所に居るとマズいと感じており、出て行くと言い出したのですが、この頃になると新吉に依存しまくりだった豊志賀は必死で彼を引き留めます。
揉み合いになった拍子に新吉は豊志賀が持っていた三味線の撥で彼女の瞼の上を切ってしまいました。

新吉は大慌てで豊志賀を介抱し、そのままずるずると家に居続けることになってしまいます。
豊志賀は瞼の上が腫れ上がってしまい、新吉が花火の夜に町に薬を買いに行くと久と出くわしました。
実は久は以前から新吉に想いを寄せており、寿司屋の二階の座敷へ誘い、新吉に自分は羽生の叔父の下に身を寄せると話し、それとなく新吉への想いを打ち明けました。
新吉の心は揺れ、久と羽生に発つことになりました。
その頃、豊志賀は鏡で醜く腫れ上がった瞼の上を見て悶絶して倒れていました。

その後、新吉は勘蔵の家に戻り、深見家に伝わる刀を売って駆け落ちのお金を作ろうとしていました。
勘蔵はそれを聞いて新吉を咎めたのですが、隣の部屋には豊志賀が来ていました。
豊志賀は新吉の話を聞いており、「どこへ行ってもいいけど、死に水だけは取ってくれ」と呟きました。
新吉達が駕籠を呼んで豊志賀を乗せ、家に送ろうとしていた所に「豊志賀が亡くなった」という知らせが届きました。
不思議な事に駕籠の中の豊志賀は消えており、新吉は白い手に手を握られた気がしました。

新吉は急いで豊志賀の家に戻ったのですが、布団に寝かされている死亡した豊志賀の瞼は不思議な事に腫れが引いて綺麗な顔に戻っていました。
豊志賀は遺書を遺していたのですが、そこには「新吉が妻を持てば必ず憑り殺す」旨が書いてありました。

その後、豊志賀の墓参りをしていた新吉は久と再会し、一緒に羽生へ行こうと持ち掛けました。
久は「連れて行って」とウェルカムで、二人は駆け落ち同然に羽生へと発つことになりました。
二人は鬼怒川を渡り、因縁の累が淵の付近を通り過ぎようとしますが、折からの雨に打たれてしまい、橋の下で雨宿りをしました。
新吉は宿場まで引き返そうと言うのですが、実は道中で豊志賀の陰に悩まされていたらしい久は先を急ごうと言います。
その時、橋の隙間から豊志賀の顔が覗き、取り乱した久は悲鳴を上げて淵の方へと走ります。
淵の付近はなかなか雰囲気があっていい感じです。

久は草叢を走った際にまたまた因縁の品である鎌で足を傷つけてしまいました。
新吉はそれを見て鎌を遠くへ投げ捨てるのですが、久は自分も死んで新吉に見捨てられると嘆きます。
そして彼に取りすがったのですが、新吉には久の顔が瞼が腫れあがった豊志賀に見えてしまい、振り解こうと後ずさりします。
とうとう新吉は後ずさった拍子に手に触れた鎌を豊志賀に見える久の首にグッサリ刺し、久は死亡しました。
甚蔵のエピソードがありませんが、ここまでがお久の話だったと思います。

その後、新吉は這う這うの体で村外れまで走り、そこで行き倒れとなりました。
新吉は豪商下総屋の三蔵(津川雅彦)の娘のお累(麻生久美子)に助けられて家に運ばれます。
癒し系来ました。新吉美形なのでモテモテです。原作だと三蔵は質屋で累の兄です。
実は久が身を寄せようとしていた叔父は三蔵であり、久の遺体が累が淵から発見された件が下総屋に知らされました。
罪悪感に悩まされた新吉は回復したのでそっと下総屋を出て行きました。

新吉は羽生の渡しに乗ろうとしていた所、渡しの茶屋で働いていた園と再会します。
豊志賀の死を知らなかった園は新吉からそれを聞いて悲嘆しますが、ずっと姉の面倒を見てくれた新吉に感謝します。
園は新吉に渡しの人足の仕事を世話し、新吉は羽生に留まることになりました。
女性に優しい新吉は園に鈴をプレゼントしたりして、うっかり彼女のハートも掴んでしまいそうになるのですが、ある日の事、下総屋の使用人(柳ユーレイ)が現れて店に呼び出されます。

実は累は既に新吉にハートを鷲掴みにされており、新吉は三蔵から娘を貰ってくれんかと懇願されるのですが、「こればかりは」と辞退しました。
シクシクと泣いて部屋を出た累を慰める新吉でしたが、累に突如として現れ蛇が絡みつき、彼女は悲鳴を上げて囲炉裏に倒れ込み、瞼の上に火傷を負ってしまいました。
憐れな累を見て新吉は累と結婚することになりました。

その後、新吉と累は尽くし尽くされで仲良く暮らし、累は目の上に痣のある娘を産みました。
新吉は累の産んだ子に豊志賀の姿を重ねてしまい、泣きも笑いもしないこの赤子に薄気味の悪さを感じていました。
浮かない顔で表を歩いていた新吉に渡しの人足仲間の甚蔵(村上ショージ)が近づき、芸者遊びを持ち掛けます。
お父ちゃんやめてあげて!
座敷は「ハッピーニューイヤーン、バカンス娘たちよ!」とドンチャン騒ぎになるのですが、新吉は隣のお座敷に呼ばれていた三蔵の情人でもあるお賤(瀬戸朝香)を目撃しました。
悪女来ました。

ある日、累は寝ている我が子の顔を覗き込む豊志賀の姿を目撃します。
彼女は新吉から深川に内縁の妻を亡くした事を聞いていたので、これが件の婦人に違いないと判断し、気丈にも「お引き取りくださいませ」と追い帰そうとします。
豊志賀は累に視線を向けて消えたのですが、その時一迅の風が鎌鼬のように吹き、累の目の下を斬りつけ、軽い切り傷を負わせました。
その頃、表を歩いていた新吉は甚蔵にチャーシュー、長州、皆の衆と声を掛けられていました。

新吉は甚蔵に累が淵へと連れ出されたのですが、そこには賤が待って居ました。

感想

これは普通です。
原作はお馴染みの真景累ヶ淵で、色々とアレンジした内容になっています。
元のお話が良く出来ていて面白いので、内容は面白いです。
原作は一族の因縁の恐ろしさを描いたものなのですが、今作では豊志賀の情念がメインになっています。
そういう訳なので、宗悦から代々続く深見家の呪いの件はあまり意味が無くなっています。
その反面で三蔵と名主をまとめたのは分かり易く感じましたが、新吉は単なる優柔不断キャラになってます。

イマイチお園を生かした理由も分からず、絶縁と最後のシーンに必要だと考えただけのような気がします。
その割には後半と結末部分の展開は雑に感じられ、大立ち回りとか既に無理あり過ぎて園は要らなく感じます。
お賤の扱いも雑だと思われ、わざわざ後から甚蔵と組ませた理由が分かりませんでした。
そもそも豊志賀のゴールがぼかされてるので、何をしたかったのか良く分からなくなってます。

この映画は怪談ということなのですが、全然怖くないです。
一枚絵としては良いシーンが合ったりするのですが、怖いシーンは皆無でした。
音楽がイマイチマッチしてなくてこけ脅し系の演出が多いのが残念です。
セットとかロケーションは凄い感じがしたので、お金はかかってそうです。

出演者が超豪華なので、かなりそれに助けられてる気がします。
豊志賀は勿論ですが、不要な筈の園も薄幸そうで良かったです。
個人的には累の人好きなので、累が絵面にいると嬉しかったです。
男性陣は新吉を前面に押し出した所為は影が薄く、全員モブみたいに感じられたのが残念です。

ラストまでのあらすじ

賤は甚蔵と共謀し、久殺害の凶器である鎌を百両で新吉に売りつけようとしますが、新吉は「聞いちゃいられねえ」と立ち去りました。

新吉が帰宅すると累は豊志賀が化けて出たので、「前の奥さんにひどいことをしたでしょ」と問い詰めます。
とち狂った新吉は我が子に手を掛けるのですが、三蔵がそれを見咎めて殴り倒し、勘当を言い渡し、累はそれを必死に庇いました。
そして賤はちょいちょいと店の前を通って新吉にプレッシャーをかけて来るようになりました。

ある夜、新吉はとうとう蔵のお金に手を出し、累が淵で賤に渡して鎌を回収しようとしていました。
その現場に三蔵が現れて状況を把握し、「この盗人が!」と新吉に掴みかかります。
三蔵は鎌を手に逃げる新吉を追い、逆に肩口を刺されてしまいますが、新吉に勘当を言い渡して引き揚げようとします。
しかし賤が去り際三蔵の背中に鎌を突き刺して殺害し、新吉に向かって「今日からお前の世話になるから」と宣言しました。
三蔵の死体は甚蔵が累が淵に沈めたのですが、甚蔵はその際に淵の中から伸びる白い手に掴まれ、ドゥーンと沈められて溺死しました。

累の娘はずっと目を開けたままで眠らなかったのですが、実はとうの昔に死んでいました。
その事に気付いて愕然とした新吉でしたが、突如天井に現れた淵から逆さまに現れた久の亡霊に襲われ、淵の底に沈められたので無我夢中に久の首を絞めて逃れようとします。
夢中で首を絞めたのですが、久の亡霊は新吉の幻覚で、我に返ると累の首を絞め上げて殺害していました。
使用人が騒ぎ出したので、新吉は裸足でその場を逃げ出し、累が淵の廃屋に隠れました。

新吉は累殺しの下手人となり、付近の大捜索が行われます。
賤もそれに協力して累が淵に人足や番頭を誘導し、間もなく新吉は取り押さえられます。
半狂乱になった新吉は鎌を手に大暴れし、追手をバッタバッタと斬り殺します
賤はどさくさに顔を斬られて倒れ、新吉は追手を全員倒し、満身創痍で橋の下にフラフラと這い出します。
追手が弱すぎで萎えます。無理あり過ぎ。
新吉は心配して出て来た園に助けられて小舟へと誘導されました。

園は小舟を漕ぎ出すのですが、新吉は虫の息で、間もなく小舟のヘリから伸びた何本もの白い手に新吉は淵へと連れ去られました。
やがて園は新吉の生首を持つ豊志賀の亡霊が生首に口づけをするのを目撃しました。

エンドロールで終了です。

ちょっと最後のはやり過ぎな気がしました。

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