エロかったりグロかったり 嗤う伊右衛門

嗤う伊右衛門

恨めしいほどに、愛しい―。

制作年 2004年
制作国 日本
監督 蜷川幸雄
脚本 筒井ともみ
原作 京極夏彦
上映時間 127分
出演
唐沢寿明
小雪
井川比佐志

だいたいのあらすじ

決して笑顔を見せない浪人伊右衛門(唐沢寿明)の下に直助(池内博之)が現れて「人の斬り方を教えろ」と訪ねて来たのですが、伊右衛門は「俺はもう人は斬らん」と断っていました。
直助は精神を病んでいる妹・袖(清水沙映)の面倒を見るのがツラくなったようで、そんなことを言い出したようでした。
どうやら伊右衛門には切腹した父を介錯したという辛い過去があるようで、現在は貧乏で食い詰めているので所持している刀は竹光でした。
伊右衛門は士官する気はなく、大工をして日々の生活ができればそれで善しと考えているそうですが、かなり神経質なようで、蚊帳の中に蚊が入ると全力で払っていました。

同心の民谷又左衛門(井川比佐志)の娘・岩(小雪)は大層美しい娘だったのですが、疱瘡を患った所為で顔の右半分が引き攣れたようになっていました。
しかし気丈な岩はそんなことは気にせず、凛として生きていました。

偽行者の又市(香川照之)と按摩の宅悦(六平直政)は槙(藤村志保)という女性の首吊り死体を運んでいました。
二人は過去に直助と共に悪徳与力の伊東喜兵衛(椎名桔平)の下に怒鳴り込んだことがあり、伊東は薬種問屋の娘・梅(松尾玲央)を手籠めにしてそのまま愛人にするという悪事を働いていました。
又市は梅が可哀想だから正妻にしてやれと喜兵衛に掛け合ったのですが、手下達に斬られそうになってしまい、その際に騒ぎを収め、又市たちを見逃してくれたのは民谷又左衛門でした。

又左衛門は先日、鉄砲の手入れをしている際に暴発により怪我をしてお役御免にされており、何とか岩に婿を貰って家名を存続させたいと願っており、宅悦も婿探しを依頼されていました。
宅悦は又市にも協力を依頼し、二人は岩の婿探しをすることになりました。
岩は又左衛門から婿を取ってくれと頼まれ「同心株など売ればよい。私に同情しているのか」と猛烈に反発していました。
そこに又市が現れ「あなたは清廉で強い人だから、人の気持ちがわからない。父上の気持ちも汲んでやっては」的に説得し、岩の心は揺れるのでした。

ある日のこと、袖は男に暴行されたのを苦に長屋で首吊り自殺をしてしまい、直助の悲しみは尋常ではありませんでした。
直助は葬儀のために現れた雇い主の口から、袖の死の裏側に喜兵衛がいることを知りました。
又市が岩の婿として推薦したのは伊右衛門であり、そんな騒ぎで出発が遅れたのですが、伊右衛門はその日の内に宅悦に連れられて又左衛門と面会し、岩とは会わなかったもののその場で婿入りが決まりました。
その後、ささやかながら祝言の席が設けられ、岩と伊右衛門は晴れて夫婦となりました。

ある日、又左衛門は倒れてしまい伊右衛門に「伊東喜兵衛には用心されよ」と言い残して帰らぬ人になってしまいました。
喜兵衛はずっと岩に執着しており、又左衛門に娘を差し出せと要求していたのですが、又左衛門はそれをひたすら拒み続けていたそうです。

岩は畑仕事をして家計を補っていたのですが、いつも家の普請ばかりして彼女に何かを言われれば「すまん」と謝る伊右衛門を不甲斐なく感じていました。
伊右衛門は伊右衛門でいつも笑うでもなく凛とした態度の岩に不満を感じており、とうとう二人は口論になり、思わず伊右衛門は岩に手を上げてしまいました。
しかしお互いの感情をぶつけ合ったことで二人の愛はますます深まりました。

ある日、伊右衛門は喜兵衛に呼び出され、「お前の家は夫婦の諍いが絶えないそうだけど、岩が悪妻だからだろ」的に突っ込まれたのですが、伊右衛門は自分の不徳の所為だと岩を庇うのでした。
喜兵衛は伊右衛門に梅を紹介し、実は梅は又左衛門の幼女であると告げました。
梅は伊右衛門に一目惚れしたのですが、彼女のお腹には喜兵衛の子供がいました。

実は又市は夜鷹である槙を買った後に罵られてかっとなり、殺害していました。
また、喜兵衛は元は蔵前の札差の子だったそうですが、父を殺害し、母と妹を犯して家のお金を持って放蕩三昧をし、その後に与力席を買ったそうです。
尚、喜兵衛は未だに札差の弟からお金をせびっており、そのお金で放蕩三昧だということです。
それはそうと直助は袖の葬儀以来姿を消しており、もう四月も姿を見た者はいないそうです。

最初の頃こそ岩は伊右衛門の正体が分らずにおり、声を上げればただ謝る伊右衛門にもどかしさを感じていましたが、段々と心根の優しい男だと感じるようになります。
また、伊右衛門も清廉な岩の心根を好み、正しき者と称して愛情を注ぐようになりました。。
ある日のこと、伊右衛門は八王子に出向くことになり、しばらく家を空けることになりました。
喜兵衛は早速岩を呼び出し、伊右衛門が赤坂に女を囲って遊び惚けており、このままではお役御免になると嘘を吐きました。
岩は伊右衛門が外で遊ぶのであれば自分の責任だと言い、伊右衛門がお役御免にならないのであれば、自分は離縁すると申し出ました。

半年後
赤子を抱いて深夜に釣りをしていた伊右衛門に直助が声を掛け、船に乗り込んで来ました。
直助は奉公していた薬屋の主人を殺めたそうで、袖を暴行した一味に主人が含まれており、今後も復讐を続けると告白しました。
伊右衛門はそのまま去ろうとした直助に「自分が匿ってやる」と声を掛けました。

伊右衛門は今では梅と暮らしており、赤子は梅が産んだ子でした。
家に招かれた直助は喜兵衛達が袖を拉致し、散々暴行を加えたこと、翌日に廃人のようになった袖のたもとには「武家に逆らったものはこうなる」的な手紙が入っていたことを話しました。
直助の狙いが喜兵衛であると知り、伊右衛門は「顔を知られていては匿っても意味がないではないか」と告げると直助はその場で自分の顔を斬って顔の皮を半分ほど剥がして雇ってくれと懇願しました。
伊右衛門は直助の並々ならぬ決意を知り、「相分かった」と了承しました。

その半年後
岩は長屋で一人で暮らしており、時折伊右衛門に離縁を言い渡したことを思い出していました。
そこに又市と宅悦が現れて岩に離縁のお悔やみとお詫びをしたのですが、岩は「気にすることはない。・お礼を言うのはこちら。」と気丈に返答しました。
又市は伊右衛門が再婚したことを知らせたのですが、岩は「伊右衛門殿が幸せなら何よりです」と流していました。
そうは言っても気になったのか岩は伊右衛門の屋敷を覗き、梅と目が合ってしまいました。
梅は「岩様が覗いていた」と半狂乱になり、突然周囲には激しい雨が降り出します。

直助は岩を追いかけて声を掛け、薬種問屋と伊東喜兵衛の関係について聞き出します。

その夜、梅は乱心し我が子を殺害しようとして直助と伊右衛門に止められました。
実は梅は伊右衛門と正式に婚姻した訳ではなく、喜兵衛に梅を押し付けられた恰好で内縁の妻として梅と同居していました。
梅は自分は正妻になりたい、伊東の子ではなく伊右衛門の子を産みたいと思いの丈を打ち明け、「なぜそのような子を可愛がるのか?」と尋ね、伊右衛門は「子に罪はない」と正論を吐きました。
伊右衛門は直助に赤子を預け、喜兵衛の囲碁の相手に出かけて行きました。

その後、直助と宅悦は喜兵衛が邪魔な梅を自分の子とセットで伊右衛門に押し付け、岩には昔振られたことを根に持っていたのだと明かしました。
また、又左衛門の事故も喜兵衛の差し金であり、伊右衛門も岩も喜兵衛に騙されているのだと告げました。
岩は昔のことだし今が幸せならいいではないかと返答したのですが、伊右衛門が幸せではないと聞き、更に喜兵衛が未だに梅を週一で抱きに来ていると知ってショックを受けます。
これは酷過ぎますね。伊右衛門が深夜に釣りをしているのはこのような理由からのようです。
伊右衛門は岩に去られたことで自暴自棄になっており、せめて民谷の家を守って岩の戻る所を確保しようと考えているようでした。
流石の岩も自分がしたことが裏目に出たので取り乱し、「なぜそのようなことを知らせた!」と宅悦と直助をめちゃくちゃに殴りつけ、そのまま表に飛び出しました。

その夜、赤子を抱いて釣りをしていた伊右衛門は女の手首を釣り上げたような幻覚を見た後に背後に立つ岩を目撃したのですが、岩は直ぐに消えました。
思わず伊右衛門が川に入ると川の中から岩が現れ「うらめしや伊右衛門殿」と言って抱き着いてきました。
考えようによってはあほな展開なのですが、すごく悲しいです。
伊右衛門は「恋しいも恨めしいも思われていることには変わりない。存分に俺を恨め」と岩を抱きしめて激しくキスをします。

感想

これは普通です。
四谷怪談をロマンスにしてみました的な内容です。
お話はなかなかの面白さで岩の心境は少しわかるような気がしましたが、二人とも意地張りすぎな気が…。
なのですが全体的にドロドロしていて、それでいて映像が美しいという謎の作品です。
これドロドロし過ぎで成人映画に近い気がします。

映像は美しくて登場人物も皆美しくてよいのですが、なんか中途半端な印象です。
やけにスプラッター描写とか入れてきてるんですが、それなら怪談よりにすればいいのになあと感じました。
ドロドロの割には画面が明るくて登場人物のドロドロ度合いに対して浮いてる感じが…
岩のブチ切れぶりはなかなか良かったですが。

なんだか喜兵衛がすげー悪いやつ!っていう印象しか残りませんでした。
とは言ってもこの映画は登場人物が全員悪いことしてるという。
伊右衛門と岩も相手に良かれと思ってやってることが悪いことになってる気がします。
見ていてやりきれなくなったりもするのですが、よく考えてみると民谷夫妻の純愛に感動したというより、どうしてこうなった的な悲しみだった気がしました。
そしてそうなるとやっぱり喜兵衛悪いやつ!で終わる気がします。

やっぱり恋愛は少し利己的な面がないと成り立たないということでしょうか。

ラストまでのあらすじ

やがて伊右衛門は「そなたを一人にはせん」と言い、刀を抜きました。

その後、伊右衛門は蚊帳の中の大きな木箱の上に正座し、又市が買ってきてくれた高価な櫛を受け取りました。
その夜も梅は「岩様が覗いている」と取り乱していたのですが、不思議なことに赤子も消えており、梅曰く岩が攫ったということでした。
また、岩の長屋に居た宅悦と直助は何者かに斬られたそうで、喜兵衛は伊右衛門に岩を斬るように命じていました。
伊右衛門は直助に梅を任せ、家の外に飛び出し、翌朝、赤子の遺体の周りに人々が集まっているのを発見しました。

赤子を抱いて泣く伊右衛門の前に喜兵衛が現れ「岩の始末をつけない限りお前に安泰はない」と告げました。
伊右衛門は赤子の弔いを済ませた後に決着を着けると喜兵衛に返答しました。
そして又市は梅の父である薬種問屋に聞き込みを行い、民谷家に出入りする薬売りに毒薬が盗み出されていたと聞きました。

その夜、又市と伊右衛門は蚊帳越しに話し合い、伊右衛門は全てが因縁であると語りました。
また、又市は槙を殺害した理由について、自分を捨てて消えた母だと気づいたからだと告白していました。
その夜は喜兵衛が来る日だったので、梅は「自分を連れて逃げてくれ」と伊右衛門に懇願したのですが、伊右衛門は「喜兵衛の所に戻るか、実家に帰るかしかお前の道はない」と静かに告げました。
やがて喜兵衛が現れて梅を犯そうとしたのですが、伊右衛門が蚊帳から退かなかったので、「興が乗らぬ」と引き揚げようとしました。

そこに直助が飛び込んできて喜兵衛を刺したのですが、喜兵衛は「お前ら下郎の苦しみと怒りこそわが喜び」的な凄い発言をして笑いながら刺されていました。
やがて喜兵衛は反撃に出て一刀の元に直助を切り捨てたのですが、直助は袖が死んだのはお前らの所為じゃない!いい気になるな!と衝撃の事実を明かしました。
実は直助は袖に兄妹の情を超えた感情を抱いており、ボロボロになった袖を見て清めてやろうと抱いたそうで、袖はそのショックで自殺したということでした。
なんちゅうドロドロした話でしょうか。これPG-12だった気がしますが、R-18でいいのでは。

喜兵衛は癪に障るとばかりに直助に切りつけ、直助は匕首で切腹して果てました。
ずっと黙っていた伊右衛門は梅に手を差し伸べ、「そなた子を殺めたな」と言うなり、居合切りで梅を切り捨て、腹に刀を出して止めを刺しました。
梅母乳出てます。この描写は酷いと思います。
そして伊右衛門は蚊帳を斬り、喜兵衛に対峙すると「お前なんぞに岩は渡さん。梅と逝け」と告げて喜兵衛を切り捨てました。
喜兵衛は自信のはみ出た内臓をいじって「泥が出てる」と呟いていたのですが、伊右衛門が介錯してやりました。
伊右衛門は又市に「去れ」と指示し、又市は「岩様のすべての始まりは…」と口を開くのですが、伊右衛門は言うなと止めました。
又左衛門は喜兵衛に岩を取られるのを恐れて毒を盛り、岩を観にくくしたのだと解釈しました。

1年のち
すっかり荒れ果ててあばら家となった民谷家に遠縁だという余茂七(越中睦士)が訪ねて来ました。
するとどこからともなく又市が現れ、「伊右衛門様と岩様のお弔いに参りました」と挨拶します。
又市はあの伊右衛門が座っていた大きな木箱を開けました。
すると中から蛇や鼠が大量に這い出して来たのですが、奥には伊右衛門と岩の白骨化した遺体が入っており、周囲には二人の笑い声が響き渡りました。
ここだけこんなにリアルにしなくても…と思いました。

やがて岩の顔は引き攣れが引いて美しい顔になり、伊右衛門も元に戻って二人は微笑を浮かべています。
二人の笑い声をバックにカメラはずっと上空まで下がっていくのですが、周囲にあったのは現代の東京でした。

エンドロールで終了です。

なんで最後に東京が映るのかイマイチよくわかりませんでしたが、もしかすると「江戸じゃなければよかったんや」的なことでしょうか?
確かに現代は家柄とか関係ないし、上司がいやなら辞めちまえ的な部分がありますが。
最後に伊右衛門が笑っていたのも単純に考えると岩とずっと一緒に居られるからのような気がしますが、そう単純ではないような…。
よくわかりませんでした。
冒頭のシーンは袖が拉致された晩かその翌日だと思われます。
又左衛門は岩を渡さないために毒を盛った。(もしかすると近親相姦的なものだったのかも)
喜兵衛は未だに岩をゲットできなかった恨みを持っている。
又市は自分の親である槙を殺害し、伊右衛門を民谷家に推薦することにする。
袖レイプされて兄にもレイプされて自殺。
岩は伊右衛門と結婚するも離縁。
梅は自分の子を殺害(恐らく伊右衛門と逃げたかったからだと解釈しました。)
伊右衛門岩を殺害。
直助は喜兵衛に斬られ、伊右衛門は梅と喜兵衛を殺害
という流れのような。
特典はメイキングやインタビューなどが入ってました。

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